
屋久島に行ったのは十数年前になろうか。
鹿児島の南方、60㌔の海上に位置する島である。
淡路島より小さいながら
島のほとんどが山地であり、
1000㍍から1900㍍級の山々がつらなる。
つまり気候は熱帯の島ながら、
日本列島をタテにしたほどの変動があるということ
である。
雨は、
屋久島では一ヶ月に35日降るといわれるほど。
その熱帯の気温と多量の雨が数々の大杉を育てた。
ちょうど私が訪れたときは台風による悪天候で、
遭難者が出た後だった。
だから真っ先に、
安易な登山はしないこと、
単独行動もしない、
登山の技術のない人は高い山は目指さない、
などのレクチャーを受けた。
弥生杉や夫婦杉、ウィルソン株周辺は素人でも行けるが、
縄文杉はテントをもっての山停泊、
高度な登山技術と知識、経験がなければ無理なのである。
それゆえに屋久島への思いはつよく、
折あるごとに雑誌や報道番組などをみていたのだ。
折りも折り、先日、NHKで「屋久島 ”伝説の超巨大杉”」
が放映され、食い入るようにみつめた。
あるプロジェクトチームが
最新の航空調査をして、上空から屋久島をスキャンし、
縄文杉を超える巨大杉の操作をしたのである。
これまでに人が入ったことのない山に登り、谷を下り、
滝をロープを使って渡り、はだかる岩や大石をものともせず、
けもの道を分け入る。
谷は地図には載っていないので「天空谷」と名づけた。
いくつかの大杉を経た後、
とうとう、夢にまでみた巨大杉が見つかった。
幹回り 12、13㍍ (縄文杉は16㍍)
樹高 45㍍ (これは屋久島でいちばん高い)
(樹の高さはドローンで測定)
「天空谷」にちなんで「天空杉」と命名した。
それは前人未到の地に、
人を寄せつけない、気高さと、
風や雨や雪をすべて受け入れてきた、強さをもち、
誇りたかく立っていた。
これこそ、
縄文杉とならぶ、否、超える巨大杉であった。
だが、しかし、
私は最後のことばがつよく印象に残った。
「私たちは、その位置を明らかにしないことにした。
なぜなら、登山道から外れてけわしい道なき道を
行けば、遭難や事故につながるから」
※ 屋久島の山中をおおう深いコケ
巨大杉は見れなくても、このコケを見るだけで
感動する。
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