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蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

英雄の書

2012年07月23日 | 本の感想
英雄の書(宮部みゆき カッパノベルズ)

主人公(小学5年生)の兄は、学校で同級生をナイフで刺し殺してしまう。兄の非行の動機を探るうち、遠縁のおじの家で兄が「英雄の書」という書物に憑依されていたことが判明する。本作では創作されたすべての物語がパラレルワールドのように存在しつづけており、兄もその世界の一つにいるものと思われたが・・・という話。

ブレイブストーリーやドリームバスターズなど、宮部さんのファンタジーものはいくつか読みましたが、どうも他のジャンルに比べると今一つかなあ、と感じています。私の中では、SF風ミステリ>社会派ミステリ>時代もの>ファンタジーというところ。

本作でも他のファンタジー系作品の中でも、現実世界に戻った場面はイキイキとしておもしろのに、ファンタジー世界でのストーリー展開がイマイチと感じてしまうのですよね。
これは、宮部さんがRPGゲームの大ファンであることが影響しているのかも。ストーリー展開やファンタジー界での登場人物、舞台設定、小道具にどこか既視感(典型的なビデオゲームの設定)があるのが(私にとっては)つまらないと感じる原因のようです。


短編ベストコレクション 現代の小説2012

2012年07月23日 | 本の感想
短編ベストコレクション 現代の小説2012(徳間文庫)

2011年に発表された短編のアンソロジー。

「ベストコレクション」と銘打っているものの、やや著者のネームバリュー優先の選択という感じ。
特にシリーズものの一部のような作品もあって、正直言って「これが年間ベスト?」といいたくなるものもあった。

その中で、大西科学さんの作品が選ばれているのが目をひく。たぶん、普通?の人にはほとんど知られていないと思うが、私は大西さんの雑文サイトのかなり昔からの読者(例に漏れず出版デビューしたら、あまり更新されなくなったのが残念だが・・・やっぱり原稿に値段が付くとタダで書くのはアホらしくなってくるのだろうか?)だった。実は小説を読むは初めてだったが。
大西さんの作品は時間もののSFで、相当力がはいっている感じのアイディアストーリーで面白かった。

その他に良かったのは、角田光代さん「わたしとわたしではない女」、窪美澄さん「星影さやかな」、そして一番よかったのは、佐藤愛子さんの「雨気のお月さん」。遠縁の未亡人のおばさんの話で、著者一流のストーリテリングで、ぼんやりした性格のおばさんが時折見せる恐ろしさが上手に描かれていた。