蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ロードス島攻防記

2008年05月03日 | 本の感想
ロードス島攻防記(塩野七生 新潮社)

奥付を見ると発行年は1985年。20年以上本棚に眠っていた本。さすがに活字のインクがところどころはがれていた。

著者は当時すでに人気作家だったが、巨匠というほどではなかった。この本でも、BLっぽい味付けがあって、読者サービスにも気配り(?)がみえる。

小アジアの小島ロードス島はコンスタンティノプール陥落後、キリスト教国の最前線としてヨハネ騎士団が領有していた。
騎士団の収入源は寄進とトルコ相手の海賊で、トルコにとっては主要海路上に播居する許しがたい存在だった。
スレイマン大帝は大戦力を結集してわずか数千人が守る島へ侵攻する。騎士団が圧倒的な力の差を埋めて何ヶ月もがんばれたのは、ヴェネツイァ出身の建築家が築いた近代的な城壁のおかげだった。

結局騎士団は降伏するが、数万人にもおよぶ損害を受けたスレイマンは降伏条件を遵守し、騎士たちは盛装をもって堂々と開城し、丁重なもてなしをうける。

いつもそうだったとは思わないが、現代の宗教がらみの紛争に比べるとずいぶん紳士的ですがすがしい。人類は様々な面で当時より進歩しているが、寛容さという面ではむしろ後退しているのかもしれない。
コメント
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