蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

詩歌の待ち伏せ(上)

2008年05月10日 | 本の感想
詩歌の待ち伏せ(上)(北村薫 文藝春秋)

詩歌に限らず、小説でも映画でも、十人並みの鑑賞力しかもっていない者にとっては、すぐれた解説を読んでから、再読、再見するといちだんと味わいが増すことが多い。

北村さんは、詩歌や小説のすぐれた解説をわかりやすくやってくれる第一人者だと思う。国語の先生をされていたせいか、北村さんの解説を読む前には「面白くもない作品だなあ」と思っていたものも、いきなり鮮明な色合いを持ち始めることが多い。
本書の冒頭にとりあげられた「集団」という詩がそうだった。「集団」という詩を読んだ時はなんとも思えなかったのに、解説をよんだとたん、濃厚な味わい深い詩に思えてきた。(私が単純なだけでしょうが)

本書は、俳句、短歌、自由詩、歌謡までふくめた広い意味での詩歌をとりあげている。その中で印象に残ったのは、「集団」を除くと次の三つだった。

①ほしがれひをやくにほひがする ふるさとさびしいひるめし時だ(田中冬ニ)

②不運つづく隣家がこよひ窓あけて真緋なまなまと輝る雛の段(塚本邦雄)

③おうた子に髪なぶらるる暑さ哉(園女)
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