蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

新任巡査

2018年01月27日 | 本の感想
新任巡査(古野まほろ 新潮社)

愛予県の警察学校を出て新任巡査として交番に研修に来た主人公(上原頼音)の研修一日目と、愛予署の長年の秘密を同僚の女性警官(内田希)とともに暴いていく姿を描く。

著者は、略歴によると、東大出のキャリア警察官で、警察大学校教授を勤めて退職したとのこと。そのせいか、前半の主人公の勤務第一日目として描かれる交番の業務やそこに勤務する警察官の様子は過剰なまでに詳細で、(ミステリ小説としての主要部分である)後半部分よりもむしろ興味深く読めた。

キャリアとして無事勤め上げた著者は、当然「警察愛」「警官愛」に満ち溢れているようで、前半部分は理想の警察官像、理想の交番像を具現化したもので、やや現実離れしているように思えた。
私の通勤経路に比較的大人数を抱える交番が2つあるが、立番している巡査が職務質問している姿は見たことないし、巡査の家庭訪問(巡回連絡というらしい)を受けたこともない。

しかし、優秀な巡査が長年勤務する交番周辺の地域の犯罪発生率が有意に低い、という話は(別のところで)聞いたことがあるし、日本発祥の「交番」というシステムを真似ている国もあるらしい。何より24時間稼働している警察組織が自宅や勤務先近くにあるというのは確かに心強いものがある。
それに、真冬のクソ寒い中でもドアを開け放し(規則で閉めてはいけないらしい)、重そうな拳銃などをぶら下げてで立番している(多分警察官としてはあまり恵まれた立場でないはずの)ベテランらしい巡査を見ると、「ご苦労様」という思いしか出てこない。

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