蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

私は、ダニエル・ブレイク

2018年01月24日 | 映画の感想
私は、ダニエル・ブレイク

主人公のダニエルは、長年大工として生計を立てていたが、心臓病のため医者から従業を禁じられる。すでに妻とは死別し、子供もいない。
求職者手当(失業保険みたいなものか?)の申請をするが、そもそも病気で働けないのに、求職活動をしなければならないと言われ戸惑う。
ダニエルは、二人の子供を抱えたシングルマザー(ケイティ)と知り合うが...という話

公的な手当や援助については、どこの国でも不正に取得しようとする人や援助を頼りにして自助努力を止めてしまう人がいるために(というか、そういう人がいることに対する社会的批判に備えて)資格審査や受給後の監察を厳しくしようという傾向があるようだ。そういう傾向を批判することが本作のテーマで、その点では強い訴求力があったと思う。

求職者に対して履歴書の書き方を指南する講座を受講することが受給の条件になっていて、イマイチ冴えない感じの口座が得々と(当たり前のことを)語るシーンが典型的なのだが、受給手続きに関する融通の利かなさが戯画的に描かれているあたりはコメディタッチで推移するものの、
ケイティが空腹に耐えられずフードバンクでもらった缶詰をその場であけて食べるシーンや、
子供が破れた靴を履いているというので学校でいじめられ、「新しいのを買おうね」というものの、子供すらそのおカネがないことを知っているシーン、
ダニエルがいよいよおカネに困って、家具をわずかな対価で売るシーン
などが続く終盤になるとシリアスなムードが漂ってきて、最後にケイティがダニエルが書いた手紙を読むシーンはグッとくるものがあった。

(蛇足)
この映画を見ている人のほとんどは、ある程度生活に余裕がある人のはず(ダニエルやケイティのような家計状況では難しそう)で、「一歩間違えば、オレもああなっちゃうかも。でも少なくとも当面は大丈夫だよな」と思いつつ鑑賞して、「他人の不幸は蜜の味」的な幸福感が味わえるのが、本作の評価が高いことの原因なのだろうか?などと考えるのは不謹慎なのだろうなあ。

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