蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

古道具中野商店

2007年09月11日 | 本の感想
古道具中野商店(川上弘美 新潮社)

小学校四年生の私の息子は、小二くらいまでは学校に行くのが楽しかったみたいですが、小三の後半くらいから、土日が来るのを楽しみにするようになり、日曜日のサザエさんが終わるころになると「はあ~」なんてタメイキをつくようになりました。
その息子がよく言うのは「毎日土曜日ならいいのに」。それに対して私は「毎日休みじゃ、休みは楽しくなくなるよ。イヤーな月曜日~金曜日があるからこそ、土日が楽しく感じられるんだよ」。息子は納得できないようで「夏休みはずーっと楽しいけど」なんて言う。

本書は、古物商でバイトする古物商でバイトする主人公(女)ともう一人のバイト(男)の恋愛を描いた小説。
中野商店はまさに個人商店で、勤務時間がきっちり決まっているわけではなく、給与計算もいい加減で、商店主とバイトの関係は「上下」ではなくて、友だちみたいな感じ。

物語の終盤で「中野商店」はいったん閉店し、主人公達も定職を持つことになります。フリーターというモラトリアムから実社会という現実世界へ押し出されたようなもので、主人公もその恋人も「昔は良かった」と思いつつも、今さら定職を捨てて元に戻ろうとは思いません。

長年サラリーマンをやっている私がこの本を読むと「いいよね~中野商店。オレも古物商やってみたい」と思ったりします。もちろん決して実行しないのですが・・・

会社には上下関係もあれば、いろいろ厳密なルールも存在して、イヤなことが多くて、そんな毎日をすごしていると中野商店はユートピアみたいに思えてきます。
通勤電車で本を読みながら、しばしユートピアにいる錯覚をさせてくれるのが読書の楽しみ、なのでしょう。

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