蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ボナンザVS勝負脳

2007年09月12日 | 本の感想
ボナンザVS勝負脳(保木邦仁 渡辺明 角川one テーマ21)

ボナンザというのは将棋の対戦ソフトのことで、今年の春先、プロ最強の棋士の一人渡辺明竜王と対局し敗れたがあわやという場面も作った。保木さんはそのボナンザの製作者。

渡辺竜王はgooの公式ブログを持っていて、私もよく読むので、ボナンザとの対戦の経緯はそれなりに知っていた。しかし保木さんのプロフィールは全く知らなかったので、勝手に将棋の強いコンピュータマニアだと想像していた。が、保木さん自らこの本で語っている通り、将棋はほぼ素人、ボナンザは本業(分子化学の研究)の傍らで数年で一から作りあげたということだ。

チェスの世界名人カスパロフを破ったことでIBMのスーパーコンピューター「ディープブルー」は有名になった。しかし、「ディープブルー」はIBMの全面的スポンサードによる豊富な資金と最新鋭の機器、そして優秀な技術者が束になって作り上げたもの。
取った駒の打ち込みができる将棋は、チェスより対戦ソフト作成が遥かに難しいといわれているのに、最強者の一人と互角に近い勝負ができるソフトをたった一人で片手間につくりあげたことには素直に驚いた。
ということは、どこかの酔狂な金持ちか会社がカネに糸目をつけずに「最強将棋ソフト」開発を始めたら、もしかしたら、名人を7番勝負で打ち破るソフトを近いうちに作り上げることも可能なのかもしれない。渡辺竜王はこの本の中で、人間がコンピュータに負け越すことはまだ相当な期間起きそうもない、という感想を述べてはいるが。

チェスや将棋に比べると遥かに単純そうな株価の動きを予想できるソフトは今のところない。この世界は、注ぎ込めるカネには限度がない(必勝のソフトができれば青天井でもうけられるから)のにもかかわらずそういうソフトが現れないのは、株価が本当にランダムウォークしていることの証明なのかもしれない。

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