蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

それまでの明日

2018年04月01日 | 本の感想
それまでの明日(原尞 早川書房)

私立探偵:沢崎は、金融会社の支社長から老舗の料亭の女将の身辺調査を依頼される。その依頼人が勤務する支社に行くと、強盗に出くわし、たまたまそこにいた求人会社のオーナー(大学時代に起業したのでまだ若い)海津と協力して犯人を撃退するが、支店長は行方知れずになり、支社の立派すぎる金庫には多額の現金が保管されていた。海津が気に入った沢崎は彼とともに支社長をさがすが・・・という話。

14年ぶり沢崎シリーズの新作ということで、(私としては)珍しく刊行直後に買ってすぐに読んでみた。このシリーズは沢崎の(リアリティは強く感じられるものの、実際にはいそうもない)“探偵ぶり”を楽しむもので、ミステリ的な要素は、ちょっとした味付け程度のもののように思われる(「私が殺した少女」の結末には驚かされたが)。
本書でも驚くようなトリックやどんでん返し的なストーリー展開はあまりない。

沢崎のハードボイルドぶりは相変わらずカッコいいし、セリフや比喩もしゃれている。ただ、沢崎が訪れる場所ごとに「ここは喫煙可か?」的なことを必ず尋ねるのが(彼らしくなさそうな、またハードボイルド的でなさそうな気がするものの)ご時勢を反映しているようでおかしかった。

話の筋立ては重要ではないというものの、本書のラストは、かなり尻切れトンボ気味(依頼人の正体は明かされず(明かされてないよね?)、海津の消息も不明)なので、近々(原さんの「近々」は5年くらい要しそうだが)続きがでるのだろうか。

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