蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

どうして僕はこんなところに

2015年05月01日 | 本の感想
どうして僕はこんなところに(ブルース・チャトウィン 角川書店)

亡くなってから随分経つが、著者には熱心なファンが多いらしく、本書は文庫化もされているし、(だいぶ前だけど)書評誌で激賞されていたので、読んでみた。
「パタゴニア」や「コーラスライン」は有名なので、何となく売れっ子の紀行作家というイメージを持ってはいたが、作品を読むのは初めて。(売れっ子らしく)さっぱりとわかりやすい内容だと思っていたが、衒学的といっては失礼かもしれないが、わざと難しい言い回しをしているように感じられる部分も多かった。

評伝や紀行、書評、ルポなどが雑多に詰め込まれた自選集。
作品の背景や舞台、登場人物の紹介がなくて、いきなり本題、みたいなものが多くて、題名通り「ここはどこ?誰の話なの?」と、冒頭部分では戸惑ってしまうことがよくあった。
各編の冒頭に(訳者によるものでもいいので)短い作品紹介などがあるとよかったと思う。

非常に細かいところまで描写されているのに、全体としてみるとどこか幻想的で事実に基づくものとは思えないような内容のものもあって、いっそフィクションであるほうがかえって味わいがあるのでは?なんて倒錯した感想を持った作品が多かった。

印象に残ったのは、イギリスの名家出身の画家:ハワード・ホジキンと切手風の作品ばかりを描いた画家(ドナルド・エヴァンズ)の話。
コメント
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