蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

女のいない男たち

2015年05月31日 | 本の感想
女のいない男たち(村上春樹 文芸春秋)

私は、著者の長編にはついていけない感じがしてしまうのだが、短編については好きなものが多い。本書は「東京奇譚集」以来9年ぶりの短編集だそうなので、そういえば新作は随分読んでなかったなあ、と(言われて)気づいた。

本書は題名通り、相手の女性に振られたり、浮気されたりする男の話。

「イエスタデイ」→東京生まれなのに阪神ファンで流暢な?関西弁を話す男の話。そういう設定自体が秀逸だし、そういう男だから(イマイチな境遇の自分ではつりあわないと思って)恋人を友達に譲ってしまうという変な行動も理解できてしまいそうな気がした。

「木野」→奥さんに浮気されて世捨て人になってバーを経営することにした男の話。浮世離れしたバーの雰囲気、地霊のような男の雰囲気がとてもいい。

「シェエラザード」→これが一番よかった。セーフハウス?に潜伏する男のところに日常必要なものを運んでくる女:シェエラザード。彼女は男の性欲の始末までしてくれるのだが、その彼女の思い出話がいい。学校で好きになった男の子の留守宅に侵入してはその男の子の部屋から何かを盗んでいた・・・と書くと変態的なのだが、読んでいるとシェエラザードの強い思いが伝わってきてあまり違和感がわかなった。
コメント
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