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祖父母と同居する子供について

2023年09月11日 14時33分27秒 | みりこん流
前回の記事『あの世の扉』のコメント欄で

さらさんから興味深いコメントをいただいた

彼女も子供の頃、父方の祖父母と完全同居だったそうで

お母様のご苦労をしのばれている。


「父方の親戚達 おじやおばが

とにかく祖母と一緒に母の悪口ばかり言っていたので

子供である私は本当にそれが嫌で悲しく

人間の裏の部分を幼い時から見せつけてられて

人を心から信用できない捻くれた人間になってしまいました笑

子供も傷つくんです。

自分の大好きな母が、有る事無い事、同居もしてない外野から言われて。

同居って子供にも、何かしら影響があると思うのは我が家だけでしょうか?笑

だから私はあまり老人が好きではありません」

という内容。


親との同居に関しては経験上、一家言あるつもりだったが

子供の心理に関しては盲点だった。

特に、“人間の裏の部分を幼い時から見せつけてられて

人を心から信用できない捻くれた人間になってしまいました”の部分。

さらさんだけでなく、そのまんま私のことじゃないか。


老人を語らせたら長いと定評?のある私。

老人と暮らす悲喜こもごもに興味の無い人には苦痛でしかなかろうが

祖父母と同居する子供の心理についてお話しさせていただきたいと思う。

そしてついでに申し上げれば、この手の話題に興味の無い方々は

ご自身の幸運に気づいていただけるとありがたい。



さて祖父母と同居する子供って、今どきは滅多にいない。

我々、そして我々の子世代あたりが最後ではないかと思う。

代わりに親世代の敷地に子世代家族が家を建てるという

敷地の広い田舎ならではのケースは現在も見受けられる。


いずれにしろ私の世代までは、以下のようなことが

まことしやかに言われていた。

「祖父母と同居する子供は、優しい子に育つ」


どこがじゃ!

祖父母と同居して育った私はどうだ。

優しくないことにかけては自信がある。

そのような家庭環境の子供が皆、優しくなるわけではないぞ。


ともあれ祖父母と同居して育った子供と、核家族の子供…

この二者の違いは、ひとえに情報量だと思う。

家族の人数が多い分、情報量も多いということだ。

家族の人数が多ければ、各自の親戚や友人知人の出入りも多くなり

家庭内を飛び交う情報量は

核家族の何倍、何十倍になるというわけである。


しかし、もたらされる情報は玉石混淆。

躾けや礼儀作法から愚痴や悪口まで、さまざまだ。

子供は望むと望まないに関わらず、それらの情報をキャッチする。

そしてキャッチした情報について、色々なことを考える。

祖父母と同居する子供は考える機会が豊富な分だけ

核家族の子供より大人びているかもしれない。


これら豊富な情報が良い結果を生むケースはもちろんあって

私の周辺にも実例は存在する。

美容師を何人も抱える美容院を経営していたお母さんに代わり

母方のお祖母ちゃんの細やかな薫陶を受けて育った同級生のみーちゃんは

その成功例の際たるものだ。

美しいのは心だけでなく、子供の時分から礼儀、所作、話し方も美しく

成績まで良かった。

女の子ならこうありたいという見本のような人物だ。


しかし、ここでも話したが数年前、59才の時に病気で亡くなってしまった。

あんまり完璧だと早く召されるのかも…

私はそう思い、自分の性悪に安堵したのはさておき

他にも祖父母、あるいはどちらか一方と同居していた友だちはたくさんいる。

5人会の仲間で旅館の娘モンちゃん、肉屋の涼子ちゃん

両親が共働きで歌の上手いサヨちゃんなどなど…

我々が子供の頃は、そういう家が多かったのだ。

そして素直で優しい、安心感の持てる子が多かった。


が、私はそうはならなかった。

持って生まれた資質かもしれない。

しかし、それに加えてさらさんがおっしゃるように

人間の裏の部分を幼い時から見せつけてられて

人を心から信用できない捻くれた人間になってしまったのだ。


その裏の部分とは、祖父の壮絶な婿いびりである。

婿養子だった父に対する祖父の態度は最悪。

物心がついて以降、祖父から父の悪口を聞かされるのが私と妹の日課で

その内容は仕事の仕方や言動だけでなく、顔立ちや婿入り道具にまで及んだ。


大好きなお祖父ちゃんから

もっと大好きなお父ちゃんの悪口を延々と聞かされる日常は

私の心を二つに分割した。

黙って祖父の話を聞き続ける自分と

「もうやめてくれ!」と叫んで暴れたい自分だ。


やめてくれ!と言いたかったよ、そりゃあ。

が、誰よりも大好きな母は、祖父の一人娘。

母と祖父は仲の良い父娘ではなかったが、父に関しては同じ意見だった。

それは両親の夫婦仲が冷え切っていたからだ。

早い話が、離婚寸前よ。

もちろんその原因は性格の不一致もあるが

父に対する祖父の態度も大きかったと確信している。

父にすれば、自分を目の敵にしていじめる男の娘を誰が愛せるというのだ。


両親が表立って喧嘩をすることはなかった。

生真面目な母が不満を訴え、父が取り合わないという形の冷戦だ。

それが目立つようになったのは、私が小2の頃からである。

祖父が父の実家から長兄夫婦を呼び

本格的な話し合いが行われたことも複数回あった。

父の長兄は座持ちの良い人で、祖父をうまく取りなしてくれたが

大好きな父と離れ離れになるのではないか…

そう思うと8才の私の心は震えた。


そのような関係性の中で、私が父の味方をすれば

祖父と母は嘆き、父はますます辛い目に遭うのではないか。

私の抗議行動が、父と母を完全に決別させてしまうのではないか。

幼い私はそう思い、身を切られるような思いで祖父の話に耐え続けた。


私が小3になると、祖父と母VS父の関係はさらにヒートアップした。

一方的な母の訴えを聞いた祖父が、声を荒げて父を叱ることが日常。

しかし父は、やはり取り合わない。

祖父と母は反省どころか無反応を貫く父にいきり立ち

悪口に拍車がかかる一方だった。


父の何がいけないのやら、私には皆目わからなかった。

いつも一生懸命、働いている父

出張に行けば素敵なお土産を買って来てくれる父

目が合うとニッコリ笑ってくれる父

抱き上げて「高い高い」をしてくれる父

背が高くてカッコいい父

町の人たちに好かれている父

やっぱり大好きだ。


「それなのに、お祖父ちゃんとお母ちゃんはどうして?」

私の軽い頭の中は、ずっとその疑問でいっぱいだった。

この状況を何とかしたかったが、考えたって名案が浮かぶわけもなく

結局は現状維持。

これまで通り、祖父の聞き苦しい悪口に耐えるのさ。

今で言う、ガス抜きの役割をしようと考えたのである。

《続く》
コメント (4)
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