羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

「たばこと塩の博物館」「塩袋と伝統のギャッベ展」解説

2022年04月22日 13時22分26秒 | Weblog
この博物館での「塩袋」の展示は、今回で三回目だそうだ。
まずは解説書から紹介しよう。

「塩袋からギャッベに至る道」〜担当学芸員からみた開催の意義〜
「たばこと塩の博物館」 主任学芸員 高梨浩樹

実は、明日の朝日カルチャー野口体操講座・土曜日クラスのレジュメをつくるために、高梨さんの解説を丁寧に読み込んだ。
家畜のための「塩袋」や絨毯の原型tなる「ギャッぺ」の力づよく大らかで自由奔放な紋様と色彩の世界に心ときめいたが、それと変わりなく解説にもワクワクした。
この展示のものたちから高梨さんが考察した内容は、野口体操の価値観をそのままなのだから。

そもそも「塩袋」は、山羊や羊たちを「塩」の匂い引かれて人間の後からついてこさせるためのもの。これは草食獣を“物理的なヒモ”ではなく“生理的なヒモ”でつなぎとめる必需品であるという。

そうした遊牧民の暮らしの価値観について高梨さんはこう指摘する。
遊牧にとって大切な技術は道具(モノ)にあるのではなく、刻々と変わる家畜の様子を漏らさず観察し、いま何をなすべきか判断して実行できる能力であって、心や身体に「身についた」智慧や技法(コト)のほうにあると考える、と。
自分の「外」にある技術や道具に頼る文化ではなく、自分の「内」に身についた智慧や技法を重視する文化なのではないだろうか、と指摘する。

いやいや、まさに野口三千三の発想に通じる解釈である、と思いませんか?
自身がものから直接に感じとったコトを、客観よりの主観を大切にして言葉にして解説書に書き込む姿勢こそ「野口体操」そのものなのだ、と申し上げたい!

・・・・野口のテーマでもある「モノ」と「コト」の本質を言い当てている!・・・・と。

そういう観想を引き出すのが、塩袋やギャッベの紋様と色彩の世界なのだ。
遊牧民の女性たちは10代のころから自由な発想を織物に込めていく技を身につけるそうだ。実際に子供が練習に織ったギャッぺも見ることができる。稚拙は残るがそれがなんとも愛らしい。

この絨毯の原型となるギャッベには、花々、薔薇、生命の木、ライオン、人、お守の象徴、サソリ、男の力(富)、鳥、孔雀、吉祥紋・・・・・、あげたらキリがない。身近にあるものから想像の世界まで、大胆にまた細やかに織りあげている。
小さなものから長さが2メートルを超える大きなものまで、大きさも様々。
作られた年代も1880年、1900年から1980年およそ100年前のものも見られる。
色褪せぬ植物染色、中には鉱物もあるけれど、赤・橙・青・黄・黒、生成りが描く紋様は夢があって楽しい!

それらは見せるためではなく日常使いの必需品だ。
こうした素朴であたたかみがあふれる品々に囲まれていると、幸せな情感に浸ることができる。
国境も超え民族も文化も超えてしまう大らかさこそ民具なのだと思う。

5月15日まで、「たばこと塩の博物館」で開催されています。
足を運ばれてはいかがだろう!
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