羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

江戸 東京 花の都

2017年03月02日 05時28分21秒 | Weblog
 昨日のこと、4月1日に予定しているお集りの為に、二回目の事前の下見を行った。
 予想を超えた人数の参加者を、どのように安全にご案内したらよいのかを思案するためであった。
 同行してくれたのはAさん。
 二人で鴬谷駅から寛永寺、上野公園から変更になった食事処へと向かった。

 上野には学生時代から、何度も通っている。 
 だが、今回に限って、はじめて、お山を見る!という体験をした。
 一言で言えば、徳川家菩提寺の東叡山の視点から、上野のお山を巡ったのである。
 
 そんな気持ちに誘われたわけは、寛永寺の根本中堂でお参りをしたことが影響していた。
 堂内で『東叡山 山内図』を手に入れ、冊子の裏表紙に描かれていた地図をたよりに、目的地まで歩くことにしたからだ。

 はやい話が、昨日私が見たお山の風景は、明治以降・近代日本がつくりあげた上野公園を中心としたものではなかった。
 むしろ徳川の御代に賑わった、花の里の幻影をおいながらたずねた時間の旅であったと言いたい。
 永井荷風の文明批評、谷崎潤一郎の関西移住といった、文学者の真意にごくごく少しだけ、触れることができたような気がしている。
 先日訪ねた千駄木・森鴎外記念館は、この不忍池つづきの場所であったことも影響しているのだと思うのだが。

 さて、寛永寺を出て、動物園のなかにある五重の塔を横目に東照宮の御門前で参拝。ここは神道形式である。
 いや、このお山自体が、神仏混合なのである。
 そこから韻松亭を確かめて、梅川亭と精養軒の間を抜け、池の畔りの自動車道路に出た。
 Aさんは水上動物園へ、同じ道路を戻って向かった。

 道路上で、しばらく帰りをまった。
 再び二人で山に登って五條天神社から大仏山(パゴダあり)と時鐘堂を見て、公園内の花トンネルがあるメイン道路を歩く。
 時間がなかったので、左手の清水観音堂は見上げるだけですませた。
 そして京成上野駅に向かった。
 
 その間、Aさんに伝えることはしなかったが、……歩きながら ……道すがら……なんともいえない寂とした気分に襲われていく私であった。
「御維新とは何だったのか」

 ずたずたに切り裂かれる前の東叡山を憶っている私がいた。
 ずたずたに切り裂かれた今の東叡山の残滓を辿っている私がいた。

 信長の焼き討ちにあった比叡山に対して、時代は下って薩長閥による東の叡山の破壊の姿が浮かび上がって来た。
 善い、悪いの問題ではない。文明開花があってこそ、国をあげての欧化政策があってこその現代日本であることは間違いない。

 しかし、視点を変えて、一つの信仰の山が、新しい文明の衣を纏わされて生まれ変わった、として見ている私がいた。
 その影に潰されていった人々や文化を憶ってみる。
 これまでの上野は、公園口改札口を出て、文化会館、西洋美術館、科学博物館、東京国立博物館、都美術館、こども図書館、もちろん東京藝術大学。
 近代化を文化面で中心となって背負った建物群に出入りすることがすべてだった。
 そのことに一切の疑問を持たなかった。
 野口先生が亡くなった後、しばらくの期間、巡礼のように寛永寺、谷中の墓地を巡ったことがあったのに。
 実に、迂闊であった。

 枝を落とした冬枯れの木々は、見通しがよい。普段気づかずにいたお山の風景をはっきりと見せてくれる。
 枝を落とした冬枯れの木々は、見通しがよい。普段置き忘れていた歴史の時間をはっきりと見せてくれた。

 顔には出さなかった。
 でも内心は穏やかではなかった。
 
 そして今、東京の街はいたるところで工事中なのである。
 地面の上も、地面の下も、2020年に向かって、大改造がされている。

 明治で変わり、太平洋戦争の敗戦で変わり、東京オリンピックで変わり、そして再びの東京オリンピックで変貌を遂げようとしている。
 どこへいくのだろう。
 どんな日本を子どもたちに残すのだろう。

 そんなことを考えながら、帰宅途中にAmazonからの宅配便を駅前のローソンで受け取って自宅へと急いだ。

 さて、一晩あけて、今朝の気象情報では、東京の桜の開花を伝えてくれた。
 3月22日開花予定。満開は3月31日。お花見は4月1日(土)と2日(日)と言う。

 花の色は変わらない。
 花を愛でる人々の喜びはかわらないのだろうか。
 でも、いつの時代にも、散る花に見送られる悲しき人々がいる。
 忘れないでおこう。
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