羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

野口体操を育てた東京芸術大学での集中講義を終えて

2012年09月08日 07時04分47秒 | Weblog
今日は9月8日の土曜日!
 朝日カルチャー「野口体操講座」のレジュメを書こうとカレンダーを確かめて、一瞬、息をのんだ。
 ほぼ二週間ほどブログを書かなかったことになる。
 この編集画面にこれほどのご無沙汰したのは、2005年8月にはじめて以来、はじめてのことかも知れない。
 この間、何をしていたのだろう、と思わず黒革まがいの手帳を繰った。
 明大のシェークスピアプロジェクトの稽古で野口体操を指導したり、打ち合わせで芸大をたずねたり、集中講義の内容を詰めたりしたのが、前半の一週間だった。
 そして9月4日と6日は、東京芸術大学の集中講義で、朝から夕方まで上野で過ごしていた。
 美術学部が一日。音楽学部が一日。
 若き芸術家との触れ合いは、とても気持ちのよいことだった。

 上野の山は樹木も大きく育ち、ビル街や東京の一般的な町の気温に比べたら、2度は涼しいのではないかと感じられる。
 この地に残された自然の中に、寛永寺に代表される江戸の文化と、欧化政策のうち芸術文化を担う近代日本とが共存している場だ。もっと正確に言えば、古今東西の文化財の集積場であり、さまざまな伝統の中で、現代日本の芸術や新しい時代の世界へ羽ばたく芸術が生み出される場でもある。
 その教育の中心が東京芸大であることを実感させてもらった二日間は、野口三千三先生から贈られた貴重な空間であり時間であり、なにより人との出会いであった。

 午前は座学で、「感覚をひらく」をテーマに、野口体操のガイダンスを行った。
 午後からは体育館に移って、動きの説明と僅かな実体験授業を行った。
 冷房のない空間、蚊取り線香を炊いて、という条件で、「上体のぶらさげ」と「腕立てバウンド」、そして「マッサージ」を中心に時間を過ごした。
 上手く伝えられたこと、伝えられなかったこと、その他、思うこと多々ありで、後から反省しきりだが、野口体操の行く末を考える上で、覚悟を決めるターニングポイントとなったと思っている。
 先生方やとりわけきめ細かく面倒をみてくれた助手の女性には、感謝の一言である。

 なにより野口先生が「寛永寺に眠りたい」と思われた大本の心情が理屈をこえて、一言では言い表せないが、解することができたことはなによりの収穫であった。

 時は流れ、時代は移り、記憶から失われる多くのものやことがある。
 私のなかでも忘れかけていた様々な思いが、一気に吹き出た二日間とそれまでの準備に費やした時間をもらえたことに、今朝は祈りを捧げている。

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