羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

日経新聞「路上から」

2012年04月18日 09時28分24秒 | Weblog
 日経新聞朝刊(文化)、4月17日から始まった「路上から 日本の近現代写真 十選 作家 大竹昭子」の第一回目は永井荷風 私家版「おもかげ」(昭和13年刊行)からの一枚だった。
 浅草山谷堀で撮られたらしい。写真手前に電柱があり、そこには「地方橋診療所」と書かれた文字がすぐにも目に入った。文章を読んでみると、選者の方も同様だったことが読み取れた。
 看板の文字は、手書きで、硬くもなく柔らかくもなく、のびのびした迫力ある書体。
 地方橋とは「じかたばし」と読む、とある。踊りの地方さんが多く住んでいたのだろう、と想像しておられる。
 
 夜景のなかに屋台らしきものと男性が一人シルエットとして浮かんでいる。
 荷風らしいなぁ~、と思わせる一枚である。
 戦争で焼け落ちた麻布・偏奇館には、暗室が設けられていた、というからスケッチだけでなく、写真にも相当なセンスと力量の持ち主だったことがわかる。
 日和下駄の音が聞こえ、気ままに散歩する荷風の後ろ姿が写真のこちら側に見え隠れする。

 一時期だが荷風の妻だった藤蔭静枝に日本舞踊を習った私は、そうした興味から全集を読んだことがある。
 はじめて見たこの写真に、荷風のもう一つの技を思い知った感慨がある。

《路上には貧富の差も職業も関係なく、さまざまな人間が行き交う。……カメラを手にすれば路上に出たくなり、街歩きをすればその手にカメラを握りたくなる。まことに路上と写真は相性がよい》
 そうだろうな。
 あいにくカメラの趣味のない私だが、せめてウォーキング・シューズを履いて東京の街歩きを楽しんでみたい。
 ちょうど良い季節となりました。
 
 
コメント
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