羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

割れ窓理論

2012年04月23日 14時32分32秒 | Weblog
 先週末、環状七号線の高円寺陸橋・中央分離帯に位置する橋脚の落書きを消すボランティアを行った。
 仕事の都合で休みがちだが、時々参加している「防犯パトロール」の一環の活動だった。
 午後2時過ぎの時間帯、環七の交通量は、途切れなく自動車が走っていたなかでの作業だ。
 
 集合場所の駅前広場で、警察所長の挨拶やら、防犯課長のお話やら、街の防犯係の挨拶やら、災害時「解けないヒモの結び方講習」等、一連の出発式の内容が終わってから、それそれ班に分かれて活動する。
 私はといえば、いつの間にか「落書き消し隊」の仲間に加えられてお供した。
 現地に到着すると、警察の防犯係の男女が「警視庁」と書かれた赤いジャンパーを身につけて、しっかり用意してあった道具を次々に手渡してくれた。
 使い捨て手袋、マスク、ぼろ切れ、無害と称するシンナー入り液体噴霧ボトル、持ち手のついた金属ヘラである。
 鉄製の橋脚の数本全ての四面に、大きく落書きがされている。
 消し方の手順はこうだ。
 まず液体をかけ、ラップで覆い、しばらく待ってから金属ヘラで擦り取る。
 相当な力を入れてそぎ落とすので、塗料までも剥がすことになった。かなり厚塗り塗料なので、地肌がでるほどではないとしても、消すほどに、絶対に落書きは許さない、という気分になってくる。
 
 さて、そばでは制服を着た防犯課長さんが、笛をふいて交通整理を行いながら私たちの安全を確保してくれている。ひっきりなしの車の騒音のなかでも聞こえる笛だから、その音の鋭さといったらない。音量よりも音の高さが、騒音にかき消されない高いピッチだ。
 そこには横断歩道と信号機もある。場所は狭く、消し隊の人数が多いので、自転車や歩行者の通行の邪魔になる。当然、自動車以外の交通整理もなくてはならない、ということが次第に理解できた。

 民間人の集まりである「防犯パトロール隊」のメンバーが10名ほど。警察関係者も10名ほど。私たちの行動を見ていた若者が、いつの間にか仲間に加わっていた。
 それぞれが持ち場を決めて、30分~40分ほどの時間をかけて、排気ガスと騒音のなかで「落書き消し」を行ったわけだ。
 帰りの道々、その気になって街の中を見回せば、あちこちに落書きが残されている。つまり、消しきれないのが実情だ。

 こうした活動は、ジュリアーニ元ニューヨーク市長が始めて有名になった「割れ窓理論」の実践。
 NY市内で多発していた凶悪犯罪を撲滅するために、小さな問題から率先して解決することで犯罪を抑止するというもの。落書き、未成年者の喫煙、万引き、無賃飲食等々を減らしていく。とりわけ街が綺麗になると落書きが減ることがよく知られていることだ。

 因みに、ジュリアーニ市長は次のような仕事で成果を上げた。ウィキペディアから一部を引用してみよう。
《1993年、再び市長選に立候補し、前回敗れた現職のディンキンズを破り当選。治安の回復を目標に掲げ、ニューヨーク市警のトップにウィリアム・ブラットンを据え、割れ窓理論を用いて犯罪率の減少に取り組んだ。RICO法に基づき、マフィアのトップを重点的に取り締まった。検事の時代から、まずイタリアン・マフィアをターゲットにしてトップ達を逮捕、そのあと、その代わりに台頭してきた中国、ベトナム、カンボジア、イラン等のマフィアを各国別に対策を練り、頂上作戦を展開して大きな成果を上げた。警官を大幅に増やし、マフィアの温床となるSEXビジネスの撲滅作戦に乗り出すなど様々な手を打ち、ニューヨークの安全化に務めた。汚職警官を次々と告発、追放するなど、一時はマフィアより汚いと言われていた警官の規律を正した。そのうえで、各辻には警官が立つようになり、さらにハーレムの名物、出店も一掃。風紀を正すため、ところどころで火を噴いていたタクシーは新型車両に交換。実際に犯罪率を半減させ、全国水準より低く抑えることに成功したことから、その目標は一般には達成されたと評価されている。これにより、ニューヨーク市は全米でも最も安全な大都市となったといわれ、ニューヨーク市を浄化した市長として名声を博した。なおギネスブックにおいても「最も多く犯罪率を削減させた市長」としてノミネートされている。》
 読んでみると凄い人だ、ということがわかる。賛否があるらしいが。

 そのような大それた問題解決の一翼を担うわけでは全くない。
 気がついたら「街を綺麗にする!」、短い時間の活動に参加していただけだ。が、しかし、そこから得たことは、犯罪抑止でもなく、内容の質も桁違いの東北被災地でのボランティア活動がいかに大変なことであったのか、頭が下がる思いが沸き上ったことだった。
コメント
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