羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

十三夜

2007年10月23日 18時55分31秒 | Weblog
 今、月を見てきた。
 今夜は十三夜である。
 少し欠けた月。あたたかみのある色は、秋の色である。蒼く透き通る冬の色とは違って、親しみがわくのは黄色味がかっているせいだろうか。

「十三夜」といえば、樋口一葉の作品である。
 初めて幸田弘子さんの朗読会で聴いたのが、かれこれ三十一年前のこと。。
 聴き終わって、上野の本牧亭を後にし町を歩きながら、幸田さんの語りを反芻していた。あの夜ももしかすると十三夜だったかも知れない。
 町を抜ける夜風が寒かったのを思い出す。

 実は、母方の実家は日清日露の時代に、荷車と人力車をつくって軍に納めていたと聞いている。若い職人を抱えて、米櫃は神社のお賽銭箱くらいあったとか。話半分に聞いても、昔の若者は米をたくさん食べたということだ。米以外の副食はほとんどないのかも。

 さて、物語だが、幼馴染の男が車引きに身をやつし、その車に偶然に乗った御新造は実家の親に諭されていやいやながらも婚家に戻る道すがら。二人を照らす月が十三夜だった。この物語に、まん丸の十五夜ではそぐわない。

 なにとなく明治の時代に懐かしさを感じるのは、母の昔語りを聞いてきたからかもしれない。それに重なる一葉の時空間に親近感を覚える。
 
 秋の夜は、月影に昔の恋人をふと思い出したりして……情緒ありやなしや。
コメント (2)
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