羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

じゃんけんの話

2005年11月11日 09時38分25秒 | Weblog
 かれこれ6・7年は、たつだろうか。
 演出家・鴻上尚史氏と対談した。そのとき、「じゃんけん」の話を伺った。
 
 その話を、かいつまんで再現しよう。
 鴻上さんがロンドンの演劇学校に学んでおられたとき、リーダーを決めることになった。
 なかなか決まらなかったので
「ジャンケンにしよう」と提案した。
「ジャンケン??????」
「そう、ジャンケン」
 あるイギリス人男性曰く
「そんな偶然に任せる決め方は、ナンセンスだ!」
 猛反対をした。
 そこで、鴻上さんは、日本には「じゃんけん」という素晴らしい文化があることを、拙い英語(←彼がそういうのです)で説明した。
 時間ばかり過ぎる中で、イギリス人男性もしぶしぶ合意して、その場は収まったという。
「でも、ホントにはナットクできなかったろうし、ショウフクできなかったんじゃないかな」
 鴻上さんの感想。


 1982年、『縮み志向の日本人』を書かれた、李御寧氏が、最近『ジャンケンの文明論』(新潮新書)を書かれた。
 ジャンケンを、韓国ではカウイ・バイ・ポ、中国ではツァイツァイツァイ、というらしい。
 本を読むと「ジャンケン」というパフォーマンスは、東アジア共通のボディーコミュニケーション言語なのだとわかる。

 李氏は語る。
「ジャンケンは年齢・性別・国籍・時代・貧富の差に一切とらわれない、最も普遍的で平等なコミュニケーションツールだ」と。

 日本では「虫拳」がある。何となく聞いた覚えがある方も多いと思う。
 つまり、「三すくみ」である。ヘビはナメクジにすくみ、ナメクジはカエルにすくみ、カエルはヘビにすくむ。
 この虫拳は、「拳の文化」の発想からはじまっている。
 
 李氏は、この「三すくみの発想」は、東洋に根ざす補完の関係「勝ち負けのない共存の発想」だと捉え、この発想の大切さを説いてしる。

 勝ち組・負け組みと枠付けして、二項対立の図式をつくり上げる世の風潮はいかがなものか、と思う者としては
「鴻上さんのロンドン経験における「ジャンケン」体験は貴重だったのだ」と思うわけ。

「バリバリの西洋人に、ジャンケンは、いかにも無理だわな……」

 ー誰も勝たない誰も負けないー東洋の易思想と日本基底文化の研究から、新しい日本文化論を唱えていらしたのは、民俗学の吉野裕子先生だった。お元気でお過ごしだろうか。
 野口三千三先生と東京の吉野先生のご自宅をお訪ねしたのは、さらに昔、1980年代のころだった。

 お~、感慨。……光陰矢のごとし……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする