電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

メンデルスゾーン「チェロ・ソナタ第2番」を聴く

2016年05月02日 06時04分51秒 | -室内楽
春からもうすぐ初夏に移ろうという季節には、気分的にメンデルスゾーンの音楽がしっくり来ることから、最近の通勤の音楽には、鈴木秀美さんのチェロ、平林千絵さんのフォルテピアノで、メンデルスゾーンの「チェロとピアノのための音楽全集」と銘打ったCD(独ハルモニアムンディ、BMG)を聴いております。この中から今回は、とくにお気に入りで、車中なんども繰り返し聴き、休日には自宅の簡易なPC-audioで再生して楽しんでいる「チェロ・ソナタ第2番」を取り上げます。



添付の解説リーフレットによれば、この曲は1843年秋に出版され、ロシアの外交官ウィルホルスキー伯爵に献呈されているとのことです。1843年といえば、1809年生まれの作曲者は34歳、シューマン夫妻は新婚三年目、ブラームスはまだ10歳。メンデルスゾーンは、ヨーロッパの音楽界の中でも中心的な存在の一人であり、「プロイセンの音楽総監督を兼任し、ベルリンとライプツィヒを列車で頻繁に往復する生活」に「ライプツィヒ音楽院の創設」が重なるという多忙さの中にあったようです。添付のリーフレットの解説(星野宏美さん)では、母の死もあって体力的・精神的な疲労が重なり、「公の活動を退き、ひとり作曲に没頭したい」という発言がみられることから、「音楽の純粋な喜び」を再確認するような趣き」を指摘しています。これはたいへんよくわかり、納得できます。

第1楽章:アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ、8分の6拍子、ソナタ形式。まるで声域の広いバリトン歌手が堂々と歌い始めるような印象を持つ、歌曲のような始まりです。こういう明るい響きと躍動的な音楽は、まさしくワタクシの音楽的な好みのツボにあてはまります(^o^)/
第2楽章:アレグレット・スケルツァンド、スケルツォ風の味わいを持った楽章。なるほど、こういうような音楽であれば、豊かな音量を持つ現代のグランドピアノではなく、響きの丸いフォルテピアノのほうが、チェロの音と良くバランスが取れます。1759年のグァダーニというチェロと、1844年のイルムラーというフォルテピアノを組み合わせた演奏家の意図がよくわかる気がします。
第3楽章:アダージョ。ハープのようなフォルテピアノの分散和音が印象的で、全くチェロが出てこない時間を過ごした後に、チェロが登場してきます。しかも、バッハ風の旋律で。この後の、アルペジオを奏でるピアノと思索にふけるようなチェロの対話は、急速な終楽章へと転換して行きます。
第4楽章:モルト・アレグロ・エ・ヴィヴァーチェ。つむじ風が巻き起こるような終楽章は、輝かしく華麗なロンドによりffで曲が終結し、充実した音楽を聴いたぞ~! という印象が残ります。

2015年7月19日 という日付のある、鈴木秀美さん自筆のサインの入ったCD(*1)は、BMG:BVCD-31013という型番のもので、お気に入りディスクの仲間入りをしております。

(*1):山形交響楽団第246回定期演奏会で「イタリア」「田園」交響曲を聴く~「電網郊外散歩道」2015年7月

余談を少々。
ライプツィヒのメンデルスゾーン・ハウスのサイト(*2)に、興味深い写真がありました。メンデルスゾーンの書斎というか、私室らしいです。トップページのメニューから「Felix Mendelssohn Bartholdy」を選び、次に「Bildersammlung」(図譜という意味か)を選びます。この中の「Arbeitszimmer des Komponisten Felix Mendelssohn Bartholdy」というのがそれです。本CDの解説リーフレットの中にも、同じ部屋の写真が掲載されていますが、なるほど、王侯貴族の部屋とは違い、近代の要素を感じます。こういう部屋でメンデルスゾーンは考えを巡らしていたんだなと思うと、親しみを感じます。

(*2):Felix Mendelssohn Bartholdy-Portal

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