電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

映画「レ・ミゼラブル」を観る

2013年01月26日 06時03分22秒 | 映画TVドラマ
新年初の映画は、昨年の暮れに見逃していた「レ・ミゼラブル」です。出がけに除雪を始めたもので時間ギリギリになってしまいましたが、なんとかすべりこんでセーフでした。実は、別行動で一緒に出かけた子どもは「007」で、私と妻が「レ・ミゼラブル」だそうで、互いに中高年どうしの文芸&ミュージカル志向が一致して、喜ばしい限りです(^o^)/

映画は、冒頭から嵐の中で囚人の合唱です。座礁した帆船を、多くの囚人がロープで引き、ドックに入れようとする場面。ここですでに監督官ジャベールと、底知れない怪力の持ち主である囚人ジャン・バルジャンとの緊張した関係が描かれます。この映画の想定では、ジャンは妹の子どものために一個のパンを盗み、投獄されても逃亡したために、19年間を徒刑囚として過ごしていました。仮釈放されても、身分証明書には危険人物という終身のレッテルがつきまとい、世間の風は冷たく、温かさはどこにも見当たりません。
しかし、山上の教会で、行き倒れ同然で凍えていたところを、ミリエル司教に救われます。浮浪者姿のジャンを来客として迎え入れ、暖炉と食事とベッドを提供します。人を信じられないジャンは、祈りと祝福を受け入れず、銀の食器を盗み出しますが、すぐに捕らえられてしまいます。司祭にもらったものだというジャンに、ミリエル司教は警官の前で、これもあげたのに持っていかなかったと、銀の燭台をも与えてしまいます。この時の司祭は、優しいが厳しい。愛という名の真剣を突きつける厳しさ、罪人を否応なく神の前に立たせてしまう厳しさを感じてしまいます。

映画は、一気にマドレーヌ市長の時代に飛びます。工場の婦人労働者の中のトラブルを、好色な工場長に解決をまかせたために、ファンティーヌは解雇されてしまいます。彼女は、娘コゼットへの仕送りのために娼婦に身を落とし、病に倒れます。ファンティーヌの「夢やぶれて」は絶唱。このあたりの生々しさは、小説ではなかなか感じ取ることはできませんが、間違いなく映像の力でしょう。一方、マドレーヌ市長は、新たに赴任したジャベール警部の前で、馬車の下敷きになったフォーシュルバン老人を助けたために、警部の疑惑を招きます。しかし、問い合わせに対して、該当の逃亡囚人はすでに告発されているとの回答が返って来ました。誤って告発された無実の男を救うために、自分こそがジャン・バルジャンだと名乗り出ますが、亡くなったファンティーヌの娘コゼットを救い出すために、悪党テナルディエ夫婦が経営する宿屋に急ぎます。森の中で一人水汲みをさせられていたコゼットを救いだし、馬車でパリに向かいますが、ジャベールの検問に遭遇してしまいます。からくも脱出できたのは、マドレーヌ市長に命を救われたフォーシュルバン老人が、尼僧たちの修道院で庭男をしていた偶然からでした。

ここで、再び時代は移り、コゼットは美しい女性に成長しています。革命を目指す学生たちの中で、貴族の孫でありながら革命の理想に共鳴するマリウス・ポンメルシーは、偶然にコゼットを見初め、二人は恋に落ちます。ここでは、テナルディエ夫婦の娘エポニーヌがマリウスに恋い焦がれており、実らぬ恋の歌唱が胸を打ちます。ラマルク将軍の死去を契機に蜂起した学生達に民衆は続かず、学生たちのバリケードをめぐる戦闘シーンは悲劇的です。結局、革命は失敗に終わりますが、銃弾で負傷したマリウスを、ジャンはコゼットのために、地下の下水道の中を通って救い出します。仲間がみな殺され、自分だけが生き残ったと嘆くマリウスも、コゼットの愛に生きる力を取り戻します。しかしジャンは、自分の過去がコゼットの汚点になることを恐れ、一人姿を消します。最後の場面、ジャンの昇天にファンティーヌが現れ、パリの革命のバリケードも民衆とともに築かれる幻も再現されて、映画は終わります。

うーむ、なかなか感動的なミュージカル映画になっていました。原作の重要な部分をそうとう端折っていますが、この上映時間に収めるにはいたしかたないところでしょう。愛し合う二人にジャンとエポニーヌが加わる四重唱は、音楽の持つ力を如実に示していますし、娼婦の運命の過酷さは、文章だけでは想像できないリアルさで映像化され、観る者に迫ります。良い映画でした。



と同時に、あらためて原作を、とくにこの映画ではカットせざるをえなかった、フォーシュルバン老人と再会した後、修道院で静かな生活を送るところなど、映画ではカットされているところを、原作で再読してみたいものです。原作を入手(*1)はしたものの、多忙に紛れて中断(*2)しておりますが、今年の目標の一つです。

(*1):古書店でユーゴー『レ・ミゼラブル』を探す~「電網郊外散歩道」2011年1月
(*2):はじめての本を開くとき~「電網郊外散歩道」2011年1月
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