電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第226回定期演奏会でシューマン、ブルックナーを聴く

2013年01月21日 06時54分02秒 | -オーケストラ
日曜の夕方、山形テルサホールへ、山形交響楽団第226回定期演奏会に出かけました。
本日のプログラムは、

R.シューマン ピアノ協奏曲イ短調 萩原麻未(Pf)
ブルックナー 交響曲第7番ホ短調
 飯森範親指揮、山形交響楽団

というものです。

会場に到着したらホールの駐車場が満車だとのことで、急いで別の駐車場を探したために、飯森さんのプレトークが終わるころになっていました。間もなく団員が登場、ステージ正面にピアノ、左側前方から第1ヴァイオリン(10)、チェロ(6)、その後方にコントラバス(5)、チェロの右にはヴィオラ(7)、右端に第2ヴァイオリン(8)、正面奥にはフルート(2)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)、さらにその奥にはティンパニとホルン(2)、という配置になっています。コンサートマスター席には高木和宏さんが座り、その隣が犬伏亜里さんです。いつもの顔ぶれではありますが、プログラムにはフルートの新入団員が紹介されていました。小松崎恭子さんです。

さて、本日のソリスト、萩原麻未(まみ)さんが登場します。深い青色のロングドレスを着た、たいへん若いチャーミングなお嬢さんです。萩原さんは、2010年のジュネーヴ国際コンクールで、日本人として初めて優勝したとのことで、その力は折り紙付きです。実は、優勝後の初めての演奏会が広島交響楽団とのラヴェルの協奏曲で、指揮をしたのが飯森さんだったというご縁で、今回の演奏会が実現したのだそうです。
曲目は、私の大好きなR.シューマンのピアノ協奏曲イ短調、作品54。もちろん、クララ・シューマンのために書かれた曲です。
第1楽章:アレグロ・アフェットゥオーソ。始まりのオーケストラとピアノの出だしが決然としていて、堂々たる演奏が始まります。でも、本領は力強さだけではありません。クラリネットとピアノが音楽を交歓し合うところなど、本当に優しく繊細で、しかもホールのすみずみに届く演奏になっています。ここのクラリネットは、本当にいいなぁ!後半のカデンツァも、お見事。オーケストラの響きもまた、増強されたコントラバスの力もあり、たいへん充実したものです。
第2楽章:間奏曲、アンダンテ・グラツィオーソ。憧れに満ちた大好きな音楽の、ピアノの響きの繊細なコントロールが見事な演奏です。全部で800席程度という山形テルサホールのキャパシティの小ささを生かした、萩原さんの美しい弱音の魅力を堪能しました。
そして第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ。シューマンの情熱が溢れるように歌い出して、文字通りオーケストラとの華麗で躍動感に溢れた協奏です。特徴的なシンコペーションも、若々しくリズミカルに飛び跳ねます。フレッシュなシューマンです。

聴衆の拍手に応えて、アンコールにシューマンの「子供の情景」から「トロイメライ」を弾いてくれましたが、これがまた、実に繊細に響きをコントロールした、素晴らしい演奏でした。

ここで、15分の休憩となります。その間にステージ上ではピアノが片付けられ、ブルックナー用に金管部隊が大幅に増強されます。ホルン(4)にトランペット(3)、トロンボーン(3:バストロンボーン1を含む)、チューバ(1)、ワーグナーチューバ(4)という具合です。

ブルックナーの交響曲は、廉価盤LPが中心だった若いころにはあまり聴く機会がなく、30代でようやく親しむようになったものです。その直接のきっかけが、ブロムシュテットによるこの第7番の録音(*)でした。もちろん、実演では初めてです。

第1楽章:アレグロ・モデラート、ホ長調、2分の2拍子。ヴァイオリンのトレモロに続き、ホルンとチェロにより、あの独特の荘厳な雰囲気で開始されることを、あらためて知るとともに、ああ、山響でこの音楽を聴くことができるようになったんだなあと、しみじみと聴き惚れてしまいました。部分的な印象ですが、木管楽器、とくにフルートとクラリネットの組み合わせがうまいなあと感じます。
第2楽章:アダージョ、非常に荘厳に、そして非常にゆるやかに。嬰ハ短調、4分の4拍子。尊敬し傾倒したワーグナーの死を予感し、悼んで書かれた音楽です。低音の金管とヴィオラ、チェロで始まり、弦の、とくにコントラバスがその迫力を示します。低音金管群のアンサンブルの後に弦が入ってきたときの、その流麗さに、あらためて山響の弦の素晴らしさを感じます。じゅうぶんにゆったりとしたテンポで奏される中で、フルートがさりげなく聴かせるフレーズにも、思わず引き込まれてしまいます。
第3楽章:スケルツォ、非常に速く。イ短調、4分の3拍子。弦楽器のオスティナートが基調となる、力感あるスケルツォです。全休止の後の弦の響きに、なんともいえない魅力を感じます。トリオの後に再びはじめに戻り、反復されて曲を閉じますが、このあたりの弦と管のかけあいも、たいへん魅力的なものです。
第4楽章:フィナーレ、快速に、しかしあまり速くなく。ホ長調、2分の2拍子。第2ヴァイオリンとヴィオラのトレモロに、第1ヴァイオリンが入ってきます。さらにチェロとコントラバスが加わりますが、チェロの後方にコントラバスが配置されるのは、どうも音の面で大きな意味がありそうです。チューバの低音の迫力がすごいし、バス・トロンボーンも迫ってきます。四本のワーグナー・チューバの生の音を聴いて、あらためてこの音楽の魅力を感じました。それと、この曲では、チェロが重要な役割を果たしていることを、あらためて感じました。皆様、お疲れさまでした!!

ブルックナーの音楽の本質は、どうもフォルテからピアノまで自由に変化させられるオーケストラで、オルガンの響きを再現することにあったのではないかという気がします。ピアニシモが出せるパイプオルガン。でも、不謹慎な言い方ですが、ブルックナーのオルガンには、金管楽器の音色のストップがたくさん付いていたけれど、ファゴットの音の出るストップは付いていなかったんじゃなかろうか。そのあたりが、生真面目でユーモアのセンスは欠けていた節があるブルックナーらしさであり、モーツァルトなどとはだいぶ違うところなのでしょう。

不謹慎ついでにさらに一言付け加えれば、弦楽器のトレモロで縄文時代の火キリを回したとすると、今回のブルックナー1曲の摩擦熱で、間違いなく発火させられるはずです(^o^)/

今回も、素晴らしい演奏会でした。次回は二月のモーツァルト定期です。除雪機が修理できましたので、吹雪も豪雪もなんのその、今度は妻と二人で出かける予定です。楽しみです。

(*):ブルックナー「交響曲第7番」を聴く~「電網郊外散歩道」2006年6月

【追記】

ファン交流会での写真を追加します。肖像権の問題がありますので、ごく小さく(^o^;)>
山形は、ごらんのとおり演奏者とファンの距離がごく近いのが特徴です。本日のソリストの萩原麻未さんは、聴衆がとてもあったかく感じる、とのことでした。





なお、飯森さんがごくラフな格好をしているのは、このあとモンテディオ山形のキックオフに参加するのだそうです。相変わらずエネルギッシュな行動力です。すごいです(^o^)/
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