電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

平岩弓枝『御宿かわせみ31・江戸の精霊流し』を読む

2012年10月23日 06時03分31秒 | -平岩弓技
二年ぶりの平岩弓枝、しかも、六年ぶりの『御宿かわせみ』シリーズです。文春文庫で、第31巻『江戸の精霊流し』を読みました。例によって、あまり真面目でない感想です(^o^;)>poripori

第1話:「夜鷹そばや五郎八」。夜鷹の元締と公儀直参の武士との接点に、東吾は頭を悩ませますが、兄・通之進はさすがです。「東吾は夜鷹の元締が内々で金貸業をしているのを知らないのか」。なるほど、そこに接点があったわけですか。
第2話:「野老沢の肝っ玉おっ母あ」。さすがにお石の母親というところですが、異母姉おてるとお石とをここまで対照的に描く作者の感覚は、素質というか「生まれ決定論」で、ずいぶんな決め付けを感じてしまいます。このあたりが、当方が作者への違和感を感じてしまうところです。
第3話:「昼顔の咲く家」。「唐なすび」あるいは「赤茄子」というのは、もしかしたらトマトのことでしょうか。高山仙蔵氏は、小説の上ではヘボン夫人よりも前に(*1)トマトも栽培していたわけで、疑われないで良かった良かった(^o^)/
第4話:表題作「江戸の精霊流し」。大水で、親も家も、墓まで流された娘は、よく働き「かわせみ」の人々にも気に入られますが、情夫との腐れ縁を切ることができません。印象的な佳編です。
第5話:「亥の子まつり」。「狐の手ぶくろ」という植物は、もしかしたらジギタリス(*2)のことでしょうか。先妻の子と自分の息子と、兄弟の不仲の話でなくて幸いでした。
第6話:「北前船から来た男」。摩利支天だの恵比須講だの、著者はこういう信心事にやけに詳しいようで、当方はチンプンカンプンです。麻太郎、源太郎、花世の三人が探索をする姿は、なかなか絵になるのかも。
第7話:「猫絵師勝太郎」。長寿庵の長助の家猫が六匹の仔猫を産んで、あっちこっちにもらわれていきます。お江戸では、猫の七福神の浮世絵が流行っていました。そんなところへ、るいにつきまとうストーカー事件が発生、猫を写生する絵師も登場します。狩野派の枠に収まりきれず、猫の絵で自分らしさを出そうとします。うーむ、できることなら、我が家のアホ猫も浮世絵に描いてほしいものです(^o^)/

第8話:「梨の花の咲く頃」。なるほど、梨の花の咲く頃とはそういう象徴だったのですか。それにしても、本書一冊でいったい何人死んだのだろうと、いささか不穏当な感想を持ちました。

(*1):橘みのり『トマトが野菜になった日』を読む~「電網郊外散歩道」2012年5月
(*2):ジギタリス~Wikipediaによる説明

コメント