電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形弦楽四重奏団第45回定期演奏会でハイドン、幸松肇、モーツァルトを聴く

2012年10月14日 11時16分44秒 | -室内楽
週末の土曜日、朝から某行事に参加し、なんとか午後には終わったので、夕方から山形弦楽四重奏団第45回定期演奏会に出かけました。会場の文翔館議場ホールに少し早めに到着し、18時15分からのプレコンサートを聴くことができました。

プレコンサートの演奏は、山形交響楽団に所属するお二人、斎藤真美さんのオーボエと田中知子さんのヴィオラの二重奏です。オーボエとヴィオラの音が、こんなに似合うものだとは、初めて知りました。曲はピアラ?の二重奏曲だそうですが、作曲家の名前も初めて耳にするものでした。なかなかすてきな音楽でした。

プレコンサートトークは、中島光之さんです。今回のプログラムでは、ハイドンとモーツァルトが貴族の使用人の身分を脱し、自由な音楽家として書いた作品であるという点で共通点があり、モーツァルトが先輩ハイドンに献呈した六曲の「ハイドン・セット」から第15番のニ短調の曲と、後輩モーツァルトよりも長生きしたハイドンが後年に書いたOp.71-1 を取り上げています。貴族の束縛下から自由になってと言いますが、貴族が悪いわけではなくて、モーツァルトの最初の大旅行の際には前任のザルツブルグ大司教の絶大な援助により実現したそうですし、ハイドンの音楽活動はエステルハージ侯爵なしには考えられませんけれど、と注釈を加えます。このあたりは、学習塾講師の経験もある中島さんらしい、さすがの「講義」ですね(^o^)/
ところで、当日は、幸松肇さんご自身が来形されており、直接お話をお聞きすることができました。「最上川舟唄」では、三つの民謡が合わさって成立したという経緯を踏まえ、実際に舟下りを体験して作曲したこと、「箱根八里」では雲助も登場するなど、楽しんで書かれたようです。前二作とはいささか違って、原曲を解体し、自由なイメージで作られたとのことでした。

さて、演奏が始まります。最初に白状してしまいますが、今回の定期演奏会は、素人音楽愛好家のささやかなライブラリの盲点をついた、「LPやCDを持っていない曲ばかりを集めた」プログラムになっています(^o^;)>poripori
そんなわけで、レポートとしてはいささか内容の薄いものになりますが、これは当方の個人的事情であり、演奏の内容をいささかも軽んじるものではありませんm(_'_)m

1曲めはハイドンの弦楽四重奏曲変ロ長調、Op.71-1 です。
第1楽章:アレグロ、第2楽章:アダージョ、第3楽章:メヌエット~アレグレット、第4楽章:フィナーレ~ヴィヴァーチェ、演奏時間は約28分。作品番号の若い曲の場合、風通しの良いシンプルな良さの半面、とくにチェロの活躍の場面などでいささか「歯ごたえ」に不満を感じることもあるハイドンの弦楽四重奏曲も、このあたりになるとぐっと音楽の充実を実感します。

続いて2曲めは、幸松肇「弦楽四重奏のための日本民謡第3番」です。
(1)「箱根八里」。チェロが歌うとき、気宇の大きさを感じます。途中に、リズミカルな部分が出てきますが、雲助というのはこのあたりかな?
(2)「佐渡おけさ」。ああ、おけさ節だとすぐわかる始まりです。どちらかというと哀調の音楽である原曲のイメージを受け継いでいるようです。チェロが旋律を歌うときや、ピツィカートでお琴や鼓のような効果を聞かせるところも。
(3)「最上川舟唄」。チェロと二丁のヴァイオリンが指でリズムを刻む中で、ヴィオラが歌い出す、あそこはほんとに見せ場で、堂々としていてかっこいいです。それを演奏するのが、「最上川舟唄発祥の地」大江町在住の倉田譲さんというところが、実によくできています(^o^)/
それを受ける第2ヴァイオリンも、いいですね~。「酒田~サァ行ぐ~サゲェ~」を1st-Vnが。ここも実にいいですね~。そして「ヨ~イサノマガセ~」等が四人のアンサンブル。急流も乗り切って、いいですね~!
(4)「鹿児島おはら節」。「花は霧島、タバコは国分~、燃えて上がるは~オハラハァ桜島~」ですね。「ヨイヨイヨイヤサ!」まで、東北の地ではあまり馴染みは深くないけれど、フィナーレにふさわしい曲となりました。

ここで15分の休憩です。うにさん(*)がおられたのは気づきましたが、芸術の秋とはいえ、聴衆は決して多いとは言えません。当方も、前売券を入手する機会もなく、妻を誘ってもいろいろあるようで、単身ばたばたと当日券を目当てにやってきた状態でした。チケットの入手先も、富岡楽器店と辻楽器店に限られますので、多忙な時期には「ほぼ無理」。ドタキャンがありうる不安定なスケジュールでは、メンバーの方々に直接依頼するというのも心苦しく、このあたりはなかなか難しいところです。



それでも、文翔館の無料駐車場(*2)には「仙台」ナンバーの車も見られ、けっこう遠方からのお客様もおられるようです。本当に貴重な演奏会ですので、大切にしたいものです。

後半は、3曲めのモーツァルトです。弦楽四重奏曲第15番、ニ短調K.421です。
第1楽章:アレグロ・モデラート。同じ古典派とはいえ、ハイドンとは異なる個性です。きめこまかな、充実した音楽。第2楽章:アンダンテ。緊張、集中、没入、といった語彙がふさわしいかも。第3楽章:メヌエット、アレグレット。2nd-Vn と Vla,Vc のピツィカートをバックに、1st-Vnがリズミカルに奏するあたりがやけに印象的。第4楽章:アレグレット・マ・ノン・トロッポ。あらためて言うのもなんですが、いい曲ですね~。

アンコールは、生誕150年を記念して、ドビュッシーの弦楽四重奏曲から第2楽章を。近代の精華とも言うべき曲の、活気ある音楽、気合の入った演奏でした。あらためて、いい曲だな~と感じました。うん、家に帰ったらドビュッシーを聴こう、と思いました。

だって、ハイドンのOp.71-1もモーツァルトの第15番も、CDもLPも持っていないんだもの(^o^)/

(*):うにの五線ノートから~山形在住の作曲家・木島由美子さんのブログ
(*2):文翔館の無料駐車場~ふだんは17時までですが、議場ホールで演奏会のある日は21時過ぎまで利用できるようです。

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