評価 (3点/5点満点)
本書は、サイエンス作家の竹内薫さんが、現代日本人が抱えるストレスとどう付き合えばいいのか、以下の4人の方にインタビューをしたものです。
村上和雄氏(分子生物学者・筑波大学名誉教授)
自然な笑いが病を跳ね返す-健康の遺伝子をONにする
堀江重郎氏(帝京大学医学部付属病院 泌尿器科主任教授)
男性ホルモンが老化を防ぐ-35歳からの更年期に備える
生田哲氏(薬学博士)
慢性ストレスを運動で分断する-脳とエクササイズの関係
名越康文氏(精神科医)
怒りとの上手な付き合い方-負の感情を連鎖させない
ストレス解消法のいろいろな切り口が理解できます。怒りをコントロールし、笑って、ホルモンを増やして、脳科学的な見地からストレスを解消すれば、人生は大きく変わります。ストレスを解消するには、行動すること。人生が変わるとは、自然とチャンスがめぐってくるという意味です。
まずは、自分が抱えているストレスの原因に気づきましょう。そのためには、本書のようにさまざまな原因を学び、「これって自分にもあてはまるのでは・・・?」と思うところからです。
【my pick-up】
◎〝縄張り〟や〝やりがい〟を失うと男性ホルモンが減る
今、増えているのがフリーアドレスの犠牲者だという。フリーアドレスとは、社員が個々のデスクを持たず、おのおの図書館の閲覧室のように空いている席に座って仕事をするオフィス形態である。昨今、フリーアドレスを採用する企業が増えている。
自分のデスクが定められていない職場は、男性にとって〝自分のテリトリーを主張しづらい場所〟です。特に40~50代の男性管理職は、席の位置やデスクのグレードによって、自らの地位や権威を主張することができません。そこへ加齢とともにテストステロンが減少したり、体調不良が重なると最悪です。一気にバランスを崩して、病気になってしまうケースが増えています。男性は汚くてもゴミだらけでも、自分の居場所がないとダメなんです。極端な言い方をすれば、フリーアドレスは男性を殺す職場かもしれません。
しかし、フリーアドレスでも自分の定位置(縄張り)を確保することは可能だ。いつも同じデスクを占有して仕事をすればいいのである。もちろんそのためには、誰よりも早く出社してデスクを確保する必要があるだろう。
◎仕事あるいはプライベートで縄張りを確保しよう
1日のサイクルのなかでは、朝のうちは男性ホルモンが多く、夕方から夜にかけて男性ホルモンは減少するという。朝だったら会社で叱られても、気を取り直してがんばることが可能だが、夕方や夜に叱られると、気力が萎えてしまう。
したがって、会社のストレスは朝のうちに済ませるに越したことはない。当然、部下を叱るのも朝にすべきだ。ちなみに、男性ホルモンは〝褒められる〟と増えることも分かっているというから、叱られる(叱る)のは朝のうち、退社前には褒められる(褒める)ように努力することも一つの手である。
◎エクササイズがストレスを分断する
ストレスを分断する方法はいろいろ考えられるが、オススメは「運動」である。エクササイズの良いところは、運動している最中にイヤなことを忘れさせてくれることです。エクササイズに没頭すればするほど、ネガティブなことを考えなくなります。それはストレスから一時的に引き離されることを意味しますから、ストレスを分断するのに極めて効果的ですね。
ひとくちにエクササイズと言っても、方法は無数にある。大きな筋肉を動かすエクササイズがベストだ。大きい筋肉とは、胸やお腹、背中、ふとももといった部位である。たとえば、ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などです。どれも大きな筋肉を使う運動ですから、このなかから自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。
◎日本人がキレやすくなっている理由
日本中に〝不機嫌な人〟が増えているように思う。今の社会には怒りっぽくなったりキレやすくなったりする要素が、十分すぎるほど存在するという。
経済原理を追求してきた弊害として、日本人のなかに〝他人より少しでも得をしたい〟と考える人が増えていると思います。言い換えれば、昨今の日本人は日常のささいな出来事にさえ、〝損得勘定〟を働かせるようになっている。現代の日本では、いわゆる〝お互い様〟という感覚が少なくなった。
今は、人と社会との関わりがごく短期的になっている。そんな状態では、自分が得する番を待っている時間なんてないんです。