評価 (3点/5点満点)
この本では、「体内時計」と「デフォルト・モード・ネットワーク」、「グリア」と「ジャンクDNA」に注目しつつ、ビジネスパーソンがパフォーマンスを上げるためのコツを解説します。
・知力の源は、脳の視床下部の視交叉上核にある「体内時計」と、1000億個もある脳神経細胞(ニューロン)間で機能的な連携網を作って知力を生み出し、状況に応じてコミュニケーションを組み直す「脳の機能的ネットワーク」にある。
・これまでは人の知力の源はニューロンだと考えられていたが、ニューロンは昼間だけの主役で、夜の脳の主役はグリアだった。
・ヒトゲノム解析の結果、明らかにされたのは、遺伝子はゲノムのたった1~2%にすぎない。
・ジャンクDNAは人と人とのコミュニケーションの行き違いから生じるストレスを取り去り、ウイルスや細菌の感染から身を守り、がん発症を予防し、一人ひとりの環境からもたらされる課題に遺伝子を順応させ、適応できるよう変貌させる。
また本書では、光環境の変化や、人との人とのコミュニケーションの複雑化、超高齢社会の深刻化といった「リアル・ワールド」における体内時計の活用法についても紹介します。
時間医学の最新の進歩がふんだんに盛り込まれた1冊です。
【my pick-up】
◎運動で遺伝子を変える
近年の分子生物学の進歩により健康医学が急速に進み、運動学にパラダイムシフトをもたらしました。ひとつ目は、運動による遺伝子への働きです。運動には不都合な遺伝子を、都合のいい遺伝子に変える働きがあります。歩行や軽いランニングは脳細胞の海馬、前頭葉、扁桃核などに影響を与えて、記憶力を高め、脳の老化を防ぎ、抑うつ気分を軽減して、不安症や心配性がなくなっていきます。その効果は長く維持され、子どもや孫の代にまで引き継がれると考えられています。
2つ目は、運動による体内時計への働きです。マイオカインは、筋肉にあるビーマルワンという時計遺伝子に働きかけて、乱れた生体リズムを適正な周期長(24時間±0.4時間)のメリハリのある生体リズムにリフォームします。
◎生活治療で不都合な遺伝子を変える
不都合な遺伝子で生まれてきたとしても、食事・運動・睡眠を健全にする生活治療でジャンクDNAを働かせて、好都合なタンパクに変えればよいのです。
時計遺伝子を整える基本は、運動で自律神経の働きを高めること、睡眠でホルモン力をアップすること、食事で腸の働きを整えて便通をよくし免疫力を整えることの3つです。