シゴトの渋滞、解消します! 結果がついてくる絶対法則 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2010-02-19 |
評価 (3点/5点満点)
著者は東京大学先端科学技術研究センター教授の西成活裕さんで、「渋滞学」という新しい研究領域を開拓された方です。
渋滞学とは、数学や物理の理論を活かしながら、道路交通の渋滞をはじめ社会に無数に生まれている様々な「流れの詰まり(渋滞)」を解決するというもので、本書では会社の仕事における流れの詰まりを解消するためのコツをまとめています。
個人・部内・社内の渋滞を解消する方法だけでなく、これまでの経済成長幻想から抜け出し、右肩あがりではない社会を構築していかなければならないこと、またそのためには従来の枠に囚われない分野横断的な知識による課題解決が必要であることも提唱されています。
【my pick-up】
◎「前日の準備(外ダンドリ)」を丁寧にやりましょう
5分もあれば仕上げができてしまうという状態で今日の仕事をやめておいたら、明日には、仕事の始めになかなか能率があがらないなんてこともないまま、スッと仕事を進められて「慣性の効果」を期待できる。要するに「流れ」がよくなるわけです。
私は、風邪を引いてしまっていても、雑務に忙殺されていても、かならずどこかで「些細な一歩」でいいから仕事を進めておくことにしています。この「毎日、何はともあれ進んでいるという感覚」が私にとっては精神的な「慣性の効果」をもたらしてくれているというわけなのです。
◎スタッフのそれぞれの「流れ」を大切にしてあげてください
個人のワクを超えて、部内や課内における集団作業の仕事の渋滞を解消するためには、管理する人間は何を意識したらいいのか、それは、「部内や課内のスタッフがどこまで自分でモチベーションをあげて仕事に向かえるのか」に尽きるのではないでしょうか。
つまり、研究にイヤイヤ向かっている人がいるのなら、本人だけではなく周囲も含めた「流れ」が悪くなるのです。
◎最高の渋滞解消法は、「会話をすること」「命令しないこと」
ものごとの「流れ」の最も注目する「渋滞学」の視点から捉えるのであれば、「命令は絶対に他人の背中を押すことにはならない」と強く感じています。
◎交代で利益を得ることが集団全体の利益を最大にしてくれます
「うれしい結果が出たときと同じ行動を次回は取らないようにする」という戦略をたくさんの人が実践する、つまり「譲りあう社会」こそが集団全体の利益を最大にしてくれます。
これは、説教や道徳ではありません。数学的に証明されていることなのです。
◎組織の理想は「0.9+0.9+0.9=5」なのです
私としてはそもそも個人の能力を「1」と最大限出さないほうがいいのではないだろうかと考えています。組織全体において、個人の発揮する能力の最大限度は、せいぜい「0.9」ぐらいでいいのです。
個人の全力は「組織全体にとっては迷惑」とさえ言えるのかもしれません。自分の全力というのは、「個人のパフォーマンスを最大にすると同時に、自分のエゴも最大限に発露させてしまう」というところもあると想像できるのです。
社会に参加するためのコストは、「0.1」でいいのです。あなたが会社の社員なのだとしたら、所属している会社に対しては「会社に参加するためのコスト」を支払って、会社のなかの他の人たち協力していかなければならない。個人は、「所属している社会、会社、集団」に対して、自己主張をおさえて、他人のことも考えて譲り合わなければならないのではないでしょうか?
会社の全員にとってプラスになるような、その「0.1だけ譲ること」は、なかなか、「能力を自覚している個人」ほど、できないものなのです。