評価
(3点/5点満点)
テーマは「人称」によるものごとのとらえ方と思考法を理解するということです。つまり、ここで言う「人称」は思考の尺度を表しています。
本書の序章でそのポイントがまとめられていますので、ざっと紹介しましょう。
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私から見るとビジネスで成功する人には、共通した特徴があります。それは、客観的に自分を見つめる「もう一人の自分」を持っている、ということです。よく、がむしゃらに頑張っているわけではないのに、するすると昇進していく人がいますが、そういう人はたいていバランス感覚に優れているものです。そして、彼らのバランスのよさは、「客観的に自分を見る目」にあると私は考えています。
1人称(視点・思考)とは、自分中心の考え方で物事を判断している思考状態で、結果として自分は満足していますが、まわりのことはまったく考えていない状態です。まさ目先のことしか考えていないので、自分の取る行動が明日以降、どんな影響を生じるか、まったく気にしていません。
2人称視点とは、自分の取る行動に対して、それは相手はどう感じるか、そして相手から自分がどう見えているかということも含めて考えて思考できる状態ということです。
3人称視点とは、自分が誰かにしていることを行動の対象者だけでなく、まわりがどう見ているかということも含めて考え、思考できる状態を言います。
つまり、人称=【視野の広さ】+【思考する時間の長さ】であり、3人称が現場とマネジメント層を分ける境界線なのです。3人称思考が身につくとは、結局のところ、マニュアルを超えた判断ができるということです。
さらに、今の判断や行動がマーケット全体からはどう見えるかというマーケット目線(=4人称視点)や、業界から見た時にどんな影響を及ぼすかという業界目線(=5人称視点)まで、判断の基準は広がっていきます。
現場に求められる視点・・・2人称視点
現場のリーダー(主任)に求められる視点・・・3人称視点
課長に求められる視点・・・4人称視点
部長職以上に求められる視点・・・5人称視点
また、たとえ高い人称を身につけたとしてもそれで油断することなく、日頃から高い人称を維持する努力を怠ってはいけません。
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「この1冊を読んでもらえば、これまで受けてきたビジネスセミナーの多くは、受けなくてもよくなってしまうでしょう」(はじめにより)は、少し大げさかもしれませんが、「人称」というキーワードを使うことで、役職等に応じて期待されるレベルを分かりやすく社員へ説明することができると感じました。
また、客観的に自分やまわりの状況が判断できることは、感情のコントロールにおいても非常に重要です。むやみに焦ったり、怒ったりすることが激減しますよ。
【my pick-up】
◎グラフや図表、集計データそして経営指標は人称を広げるためのツール
会議の内容が営業会議から経営会議へと変わると、そこで提出される資料は単なる営業データだけではなく、決算書などの経営データも並べられます。
自社の将来をどんなふうに創造していくかという目線は、それだけ高くなければ話になりません。そういった意味では、決算書などの経営資料はまさに、人称のレベルを上げていくための重要な資料です。
経営陣が自社の決算資料をしっかりと理解できていないとすれば、経営者と同じ視野や視点に立っていないということです。しかし、こういった資料を使うことによって、思考の範囲が決定されます。決算資料は「人称」という切り口でも重要な資料なのです。