amazonへのリンクはこちら
評価 (3点/5点満点)
著者が経営しているのは、鳥取にある中小の不動産会社ですが、一連の「超効率DX」の取り組みが「地方発、中小企業DXの好例」として評価され、経済誌などのメディア掲載、全国中小企業クラウド実践大賞の受賞、慶應大学ビジネススクールのケーススタディ採用などの実績があります。
「超効率DX」の取り組みは、主に2つです。
1.業務環境の整理
業務プロセスのムダを排除し、マニュアル化。
2.「クラウド型CRM」の導入
顧客情報や案件の進捗状況、業績などあらゆる社内の情報を「見える化」し、事業全体を一気通貫で効率化。
程度の差こそあれ、「当社も昔から業務のやり方が変わっていない」と感じるなら、必ず改善の余地はあります。業務プロセスのムダを省き整理して、従業員が働きやすくするだけでも大きな効果が得られると思います。
さらに、クラウド型CRMについては、数億円・数十億円の開発費がかかるようなシステムを企業が「所有」しなくても、月々数万円から「利用」することができる時代になりました。
DX全般に言えることは、トップや経営層の理解と関与が非常に大事であること。ときに社内の反発を抑え込み、強いリーダーシップで改革を推し進める必要があります。本書でも、経営層が苦労しながらも、時間をかけてDXを進めてきた様子がうかがえます。
【my pick-up】
◎「お問い合わせ」を管理し、サービスの改善に役立てる
当社が管理委託を受けている賃貸物件に住むお客様からのクレームの約25%は、「共用部の電灯切れ」です。以前は、25%という数値化もせず、漠然と「電灯切れのクレームが多いな」という印象を持っていただけでした。それらのクレームをCRMで記録するようにして、自動で集計・グラフ化するようにしたことで、「電灯切れ」が当社のクレーム頻度ナンバーワンだと判明したのです。そこでただ電灯交換の対応をするより、「電灯切れのクレームを受けないように対処する」ほうが重要と考え、管理物件のすべての電灯を一斉に交換しました。こうすることで、次の交換時期の目安がわかりますし、その時期がきたら一斉に電灯交換を行えばよくなります。データにすることで、客観的な経営判断や施策の意思決定に役立てることができます。
◎従業員の「使いこなし」を徹底的にフォローする
クラウド型CRMを導入するにあたり、従業員にシステムをいかに「使いこなしてもらうか」。とくにベテランの従業員はITリテラシーが低く、苦手意識は顕著です。ですが、やってみると年齢は関係ないと感じました。50代でもそれ以上でも、やはり「実際に使ってみる」ことがもっとも効果的な習得方法だったのです。教える側として力を注ぐべきは事前説明ではなく、アフターサポートです。
その操作をしなければならない理由や、どういう点が以前より効率的になったのかを口頭できちんと説明し、一つひとつの工程に納得感を持ってもらいながら体験してもらったのです。「なるほど。もうあの作業はやらなくていいんですね」という前向きな言葉を引き出せればもう大丈夫です。
また、元のアナログには戻れないようにしてしまいましょう。例えば、CRMにスケジュール管理の機能がついているのにホワイトボードに手書きして出かけてしまうのなら、ホワイトボードを撤去してしまうのが解決策です。物理的なツールを撤去し、「変わらざるを得ない環境」に持ち込むことが強制力にもなりますし、本気度を示すパフォーマンスにもなります。