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(3点/5点満点)
日本が貧しくなった原因は様々ですが、もっとも大きいのは、日本の労働生産性が相対的に低い水準のまま伸び悩んでいることです。
この本は、日本の豊かさのカギを握っている「生産性」という概念について、可能な限り簡単に解説することを目的に執筆されています。
生産性を示す計算式など教科書的な解説だけでなく、「ご挨拶テロ」や「働かないオジサン」など、具体的な事例をもとに、生産性とは何か、どうすれば生産性は向上するのかについて、分かりやすく説明します。
本書にもあるとおり、生産性という指標は「儲け」「労働時間」「社員数」という3つの項目に分解できます。
簡単に言ってしまうと、より儲かる仕事を、短時間で、そして少人数でこなすことができれば、企業の生産性は向上するということです。
日本の生産性は、過去50年間、先進国では最下位という状況が続いています。1980年代には生産性の伸びが高まり、欧米各国に近づくかに見えましたが、その後は再び鈍化しています。
ただし日本は幸いにして、豊富な資本蓄積と同一の文化圏に属する1億人の消費市場があります。これをフル活用しつつ、私たちの意識や行動を変えることで、生産性を上げることは可能でしょう。
【my pick-up】
◎日本には働かないオジサンが400万人もいる
もっとも人手不足が深刻なのは、小売店や外食チェーン、運輸、介護など、若い世代の労働者を大量に必要とする業界です。一方で、事務職を中心に、企業内には大量の中高年ホワイトカラーが余っています。人事異動を行うにしても、新業務に必要とされるスキルと本人が持つスキルが一致しないため、社内の異動には限界があります。結果として、事実上、仕事がない状態で社内の各部署に人材が埋もれてしまうことになります。これを揶揄した言葉が、いわゆる「働かないオジサン」です。数字上は、社内失業者が労働市場に出てくれば、人手不足などすぐに解消するレベルの話というのが偽わざる現実です。何十年も同じメンバーで同じような仕事を続けている組織において、イノベーティブな発想が生まれてくる可能性は限りなく低いでしょう。ところが日本企業は、同じ人材だけで変化の激しいこの時代に対応しようとしており、常識的に考えてこの仕組みがうまく機能するとは思えません。
◎電話オジサンの末路
日本では基本的に電話でのやり取りしかしないというビジネスパーソンも多く、FAXはいまだに健在です。電話に強く依存したビジネスパーソンが多いことも、日本の生産性が低い要因のひとつと考えられます。若年層の多くは、電話について一種の迷惑ツールだと考えています。電話は同期通信を相手に「強要」するものであり、電話をかける人は、電話を受ける人の状況などお構いなしに一方的に割り込んでくるというのがその理由です。電子メールやメッセージングなど、異なる特徴を持った複数のツールが併存している現状を考えると、絶対に電話を使わなければならない場面というのはどれほど多くないことが分かります。これに加えて電話は記録が残りませんから、大事な要件の場合、電話の最中もしくは切った後にメモを取るという追加作業が必要となる場合があります。電話に強く依存した人がいると、すべての要件を電話で済まそうとしますから、お互いの時間が同時に開くまで、何度もやり取りが続くことになります。同じような状況は、実は電子メールの世界でも進行しています。近年、先進的な企業では、社内の連絡手段を電子メールからビジネスチャットに移行するところが増えており、対外的なコミュニケーションを除くと、電子メールが電話と同様、絶滅危惧種になる可能性が出てきているのです。電子メールは紙のメモの延長線上として出来上がったツールであり、基本的にライン上の指示・命令や一斉同報といった用途に向いています。多くの人と情報を共有する目的には、実はあまり合致していないのです。こうしたコミュニケーションが前提になると、リーダーシップの概念も変わってきます。命令口調で周囲を従わせる人がリーダーではなく、多くの知見を集めて、それをうまくまとめられる人が真のリーダーとみなされるようになるでしょう。
◎あまりにも学ばない日本人
もちろん諸外国でも学習しない人はそれなりにいますが、日本の場合、いわゆる高偏差値の大学を卒業したエリートと呼ばれる人材でも、日常的な読書習慣がなくほとんど学習をしていない人が多いという特徴が顕著です。多くの国際比較調査において、人材に対する投資が活発であるほど生産性の伸びが高いという結果が得られています。その理由は、教育投資を継続的に行うことで、マネジメント層の知見が増え、ビジネスモデルのシフトが容易になり、結果的に付加価値が増えるというメカニズムと考えられます。ITが高度に普及した現代社会では、社員のスキルアップとITの活用はほぼセットになっています。社員のスキルアップが行われず、その結果としてビジネスへのIT活用が進まないという状況が総合的に作用することで、生産性が伸び悩んでいる様子がうかがえます。IT活用に加え、学習に対する消極性と密接に関係していると思われるもうひとつの要素が転職です。転職経験が多いほど、新しい環境に適用するため、学びを継続する確率が高い。同じメンバーが顔を突き合わせて、何十年も同じ仕事をしていれば、どれだけ優秀な人材でも確実にマンネリ化してきます。