評価
(4点/5点満点)
上司が自分自身の心身を健やかに保ちつつ、部下の心身も守っていくためには、メンタルヘルスに関する知識が不可欠です。
本書では、上司が身につけておかなければならないビジネススキルとしての、メンタルヘルスの知識とテクニックを紹介しています。
最近の管理者(特に課長)はプレイングマネージャーとしてやるべきことが多くなった結果、部下も上司に気軽に相談できないし、上司も部下の心身の不調に気づかないという傾向が強いように思います。
しかし部下が本当に病気なってからでは時すでに遅しです。チーム全体での効率の最大化を図り、上司は部下の日ごろの様子・言動を注意深く見守る余裕が必要です。
【my pick-up】
◎共感や労いのある言葉が部下をやる気にさせる
「あの仕事はどうなっているんだ?」「得意先のほうには連絡したのか?」といった進捗確認や、仕事の指示・命令に終始してしまっていないでしょうか?
日ごろから人間味のある会話が上司との間で交わされている部下は、困っていることや不安に感じていること、仕事での悩みなどを上司に相談しやすくなります。
◎休み明けすぐは「会議」「商談」を入れない
月曜日も工夫があるとよいと思います。月曜の朝一番から会議や商談があると思うと、日曜日にゆっくり休めなくなります。
休み明けの午前中は、メールチェックをして過ごすぐらいが適当です。
◎管理職こそ「ワークライフバランス」を大事に
部下のメンタルヘルスを守るためには、上司も「ワークライフバランス」の重要性に目を向け、オンとオフの切り替えがきちんとできるように図っていくことが大切です。
それには何よりも上司自身が「ワークライフバランス」のとれた生活の実践者であることも重要です。部下には「プライベートも大切にしろ」と言いながら、自分は相変わらず仕事一辺倒の仕事人間であっては、言葉に説得力がなく、部下たちも実践しにくいでしょう。
ワークライフバランスのとれた生活を実践するには、何と言っても「プライベートのための時間を確保する」ことが先決です。休む技術をどのように身につけるかも、上司自身が自分の心身を守るうえで、さらには部下を病気から守るうえでも重要になってくるといえます。
要は「休めるときに休む」ということです。繁忙期などの超多忙な時期は無理でも、忙しくないときにはどんどん帰るようにして、とにかくメリハリをつけていく。これだけでいいのです。
「早く帰るのが特別」ではなく、「残業するのが特別」というように意識を変えていくのが大切なのです。
◎心の病気は早期発見・早期介入が大事
現在、メンタルヘルスに関して安全配慮義務というものが重視され、少しでも具合が悪い社員に気づいた場合は、仕事の負荷を減らし、治療につなげることが企業の義務とされています。
心の調子が悪いことがわかっているのに、そのままの状態で働かせて症状を悪化させれば労災や安全配慮義務違反を問われることにもなりかねません。
◎「眠り」の知識は絶対必要
欠員が一人出ることのしわ寄せは、残されたメンバー、そして上司である自分自身に跳ね返ってくることになります。そのような事態を避けるためにも、基本的なメンタルヘルスの知識と理解はもっておくようにしましょう。
睡眠障害はとくに上司として知っておいてほしい最低限の知識です。「不眠」には、大きく4つの種類に分かれます。
①入眠困難・・・寝つきが悪く眠るまでに1時間以上かかってしまう
②中途覚醒・・・眠っていても途中で何度も目が覚めてしまう
③早朝覚醒・・・朝早くに目が覚めてしまう
④熟睡困難・・・ぐっすり眠れず朝スッキリと起きられない
これらの症状が週2回以上、1か月以上続いた場合は、ストレスが過多になっているか、メンタルの調子を崩し始めているか、いずれにしても要注意といえます。
◎心の病気の基本は「休ませる」こと
心の病気の多くは休養して仕事から離れ、治療に専念したほうが回復にもいい影響を与える場合が少なくありません。
とくに休職に入ったばかりの部下に対しては、頻繁に連絡を入れたりせず、休養させることを一番に考えていただきたいと思います。
仕事から離れるために休職をしたのに、仕事のことが頭から離れない状態ですから、休職初期の段階で職場の同僚や管理職から頻繁に連絡が来るのはNGです。
上司としてできることは、休養と治療に専念できるように、仕事に関する連絡は必要最低限に留め、仕事を思い出させないようにすることです。