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35歳クライシス―なんとなく「うつっぽい?」心がラクになるストレスコントロール 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2012-02-23 |
評価
(3点/5点満点)
著者は陸上自衛隊のストレスコントロール教官ですが、30代40代を中心に最近、「新型うつ」と診断される相談者が増えているそうです。
彼らの悩みから見えてくることは、苦しみが必ずしも個人の弱さだけに起因するものではないということと、その苦しみの深さ。
「35歳クライシスは、従来の青年期クライシスをベースに中年期と老年期のクライシスがかさなりあった複合クライシスだといえる。そのために、35歳クライシスは、苦しみが深く、治りにくいのではないだろうか。」
まだ若く柔軟性があり、しかも学んだことを長くいかせる35歳前後には、どうしても大きな期待と負担がかかってくるのです。
特に、第5章で紹介されている『自分でできる「ストレスコントロール」』は、著者が隊員に指導している内容を、民間の人にも使えるようにアレンジしたものです。とにかく実践的な内容です。
35歳クライシスをぜひ、子供の心から大人の心へ脱皮するチャンスと捉えましょう。自分と他人、理想と現実、私的生活と仕事、それらのバランスを上手にとることで、余裕のある生活・人生を送りましょう。
【my pick-up】
◎体を動かす
私は自衛官だが、入隊したとき、風邪気味だとか悩みがあるなどというと、「走って来い、スッキリするから」と指導されたものだ。正直、私は長距離走が苦手だったので、そう指導されると困ったことを覚えている。
ところが、最近の研究では、ランニングをすると気分がよくなることが証明された。
運動すると、オルニチンという神経伝達物質が活性化され、もの事を明るく受け止められるようになるという。ランナーズハイという現象があるが、これもオルニチンがかかわっているらしい。
自衛隊は、科学的な研究ではなく、体験として「運動すること」が気分をよくする、つまりストレスを解消することを知っていたのだ。
少々乱暴で、やりすぎたらマイナスだが、うまくやれば「忘れる」効果も得られる。
実際、災害派遣やPKOなどのストレスフルな環境のなかで、「駆け足ができないことが、一番のストレスです」と答える自衛隊員は多い。
隊員が走ったり、スポーツをしたがるのは、体を動かして身体のバランスが整うからだけではない。その間、いやなことを忘れて、頭のなかを空にできるからだ。つまり「忘れる」ことができる時間になっているのだ。
◎体の声を聞く
35歳になる、若くなくなるということは、実はストレスコントロールの視点で見ると、いい面もあるのだ。
35歳になると、もう万能ではなくなる。気圧だけではなく、他人の言動や今日とった水分量などでも、疲れや気分に影響が出てくる。
これは、見方によっては、チャンスなのだ。疲労はなかなか意識できない。しかし35歳をすぎて、少し弱ってきたせいで、体の様々な所に異変が生じてくる。気をつけていれば、蓄積疲労に気がつける要素が増えるということだ。
◎正しい自己評価のコツは「7:3」
「ぜんぜん駄目だった」と思っていても、悪いところ「7」に対し「3」ぐらいはそれでもましなところ、よい点があるはず。それをあえて見つけて評価しておく。
「うまくいった!」と思っても、少なくとも3ぐらいは、反省すべきところを見つけておく。
このバランス内だと、様々な経験が自信に結びつきやすい。
もし、悪いところが8以上なら、どうしても自信を失うだけの経験になりがちだ。
一方、よいところが8以上なら、学習効果があがらない。現状で満足してしまうという一種の不安感をもってしまう。その場はOKでも、将来の漠然とした不安を残してしまう。
一番、自信を感じられるのは、「自分はまあまあうまく対処している。次はここを改善すれば、もっとよくなる」という環境なのだ。
だから、すべての経験について、「7:3」を意識して評価をしてみよう。
これは、自信と不安のバランスと言い換えてもいい。ある出来事に対し、自信をもてる部分は、最大7までにしておかなければならない。自身過剰だと、結局足をすくわれる。
逆に、不安が8以上だと、行動自体が抑制される。少なくとも3の自信は、育てておきたいものだ。
◎弱音を吐く・人を頼る
自分の「自力を伸ばす」時期ではなく、「いまの能力でいかに戦うか」という「運用」を伸ばしていかなければならない時期。35歳が自分の運用で最初に覚えなければならないのは、自分ひとりで仕事をするのは、非効率であり、限界があることを知ること。
どうしても、これまで鍛えてきた「ひとりで最後までやりたい」にしがみついてしまう癖がある。すると、エネルギートラブルにも見舞われ、偏った情報によって、主観的危機感がどんどん拡大し、孤立し、自分は弱いと思いこむ。そういう35歳は、弱音を吐く、人を頼るという訓練をしなければならない。
自然には、それができないのが35歳。だから、意識して、弱音を吐いてみよう。助けを求めてみよう。弱音を吐くと、多くの場合周囲の人は助けてくれる。