評価 (3点/5点満点)
この本の目的は、変化の時代における「会社役員の役割」を再確認し、経営者としての「考え方の軸」を整理してもらうことです。
具体的な内容としては、ドラッカー経営学をベースにした「経営の本質」「会社役員の役割」「未来創造の方法論」「会社役員が成果をあげるための考え方」です。
さらに本書では、そもそも「企業とは何か」「意志決定とは何か」といった企業経営に関する本質的な問いを投げかけます。
著者はベストセラー『財務3表一体理解法』の國貞克則さんで、日経ビジネススクールで行っている「経営の本質と会社役員の役割」という講座に、一部加筆して書式化したものです。
時代が変わっても変わらない物事の本質とは、新しい事業を生み出す「変化を機会として利用する」「アイデアを事業として実現する」という2つの方法論です。
変化の時代だからこそ、ドラッカーの大局観と本質論が必要になってきていると言います。
本書を参考に、会社役員の皆さんが次の世代のために価値ある何かを残せればいいですね。
【my pick-up】
◎既存の企業が新規事業を生み出すために必要なこと
大企業の役員会で、新しい事業への取り組み案を議論していてよく見かけるのは、役員が起案者に対して、その案がうまくいくことを論理的に説明させようとすることです。そして、それができなければことごとく新しい事業案をつぶしていきます。これは、既存のビジネスにおいて論理的思考で成果をあげてきた頭脳明晰な役員にありがちな傾向です。既存のビジネスにおいては論理的思考が機能します。それは、既存のビジネスにおいてはほとんどのことが経験済みのことだからです。しかし、新しい事業は論理的思考だけではうまくいきません。既存の事業と新しい事業とでは、考え方や取り組み姿勢を変えなければなりません。
また、ドラッカーは次のように言います。「新事業は、既存の事業から分離して組織しなければならない。既存の事業は、それに責任を持つ人たちから膨大な時間とエネルギーを奪うからである。われわれはすでに3、40年も前から、既存の事業を担当する人たちは、それらの事業の拡大、修正、調整しかできないことを知っている。新事業は別の人たちに担当させなければならない。新事業の核となる人はかなり高い地位にあることが必要である。トップマネジメントの一人が、明日のためにその特別の仕事に責任を負わなければならない」
◎必ず身につけていなければならない資質「真摯さ」
特に会社役員は、自分が最後まで責任をとれないことについて意思決定することになります。会社役員が行う今日の重要な意思決定の結果がでるのは、多くの場合その意思決定をした会社役員がその組織にいなくなってからです。そんな意識決定をする人が、自分のことしか考えていないような人では困るのです。従業員や顧客や社会の未来のことを心から心配し、多くの人から信頼されている真摯な人でなくてはならないのです。
未来創造において極めて大切なのは、自分が言ったことを必ず実現させようとする態度です。すなわち、真摯な人間が未来創造に携わっているかどうかが未来創造の肝なのです。