日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「アルバイト捜し」。「『日本語力』いろいろ」。「日本語学校で『勉強する意味』」。

2009-07-24 07:45:12 | 日本語の授業
 今朝の空も、時折、陽が差すものの、曇りがちです。天気予報図には、「雨マーク」が昼過ぎまで続いていましたし、出がけに見たお天気お姉さんは、「ここ(渋谷)では、雨がぱらついてきている」などと言っていました。けれども、ここ、行徳は海の近くだということもあるでしょう、東京の直ぐそばでありながら、(「ヒートアイランドの中心地」東京より)かなり穏やかなお天気なのです。

 さて、「世界金融恐慌」は、日本にも様々な影響を及ぼしています。だんだん広がりを見せ始めていると言った方がいいのかもしれません。このごろは、日本語が自由に話せない「就学生」をも直撃し始めています。

 「初級Ⅰ」か、「初級Ⅱ」を終了した程度では、なかなか仕事が見つけられないのです。少し前までは、その程度の日本語力でも、近くの工場で雇ってもらえました。短時間で、低賃金でも、それは「日本語が出来ないのだから、しょうがない。上手になったら、コンビニかレストランで働けるから」で、頑張らせることもできたのですが、その工場でも、あっという間に人で埋まってしまうのです。「日本語力のない」人たちが、入り込む隙などありません。

 昨日も、この四月に入学した中国人学生に「(日本へ行こうと考えていたなら)大学在学中に、どうして日本語の勉強を始めていなかったのか」と聞いてみました。彼らは言葉を濁していましたが、日本へ行けばどうにかなると思っていたのでしょう。

 日本は「独立国」で、独自の文化を保有する国ですから、英語が話せればどうにかなると思っていた「アフリカやインド圏」から来た学生が、にっちもさっちもいかなくなるように、「漢字も使うことではあるし、日本語は簡単だ」と思い込んできた中国人学生も、どうにもなりません。

 「日本で普通に暮らせる」のは、よほどのお金を持っていない限り、すべては日本語が、ある程度出来るようになってからのことなのです。

 ただ、そう言いましても、中国人の学生の場合は、「一括り」で話を終えるわけには参りません。

 たとえば、中国で「一級(日本語能力試験)」や「二級(日本語能力試験)」に合格していても、来日後、どうにもならない部分というのがあるのです。これは「いわく言い難し」という奴で、なかなか口で言って、理解してもらうのは難しいのですが…。

 この学校では、普通、来日後、「初級レベル(つまり、三級までです)」を終えるまでに、授業の合間や、授業中の例文などで話したり、或いは、学生達の行動から注意を促したりしていくという部分なのです。あまりふさわしいとは言えないのですが、強いて言えば、「日本で生きていくためのノウハウ」とでも申しましょうか。

 これも、一つ一つの積み重ねなのですが、この学校で「初級」を経験していない学生には、なかなか身につけることが出来ないというものなのです。授業の時の言葉遣いなどもその一部なのですが、私たちが「中国暮らし」が長かったこともあり、他の日本人に比べれば、寛大であるにせよ、そこは譲られない一線があります。また、寮費を払う時の約束が守れるか、或いは、水道料や電気代などを決まった時に払えるか。また、学校に時間通りに来られるか、本当に些細なことなのですが、こういう日常生活を通して、少しずつ浸透させていくものなのです。

 なんでも、急には変われませんし、また理解できないものなのです。それを「初級」の時には、その頃にふさわしい「知恵」を、また「中級」の時にはそれにふさわしい「ノウハウ」を、具体的な例から、自然に身につけていく。その「過程」を経ていなければ、「いざ、大学受験」、「大学院の申し込み」といった時に、私たちが要求することの意味がわからないのです。まあ、説明はしますが、それでもわからないのです。こういうことは、一つ一つ身体で覚えていくしかないことですから。

 結局、「初級」から、この学校で勉強した中国人学生が、彼らに説明してくれるのですが、その人は「どうしてだ!」「どうしてそうなのだ!」と戸惑うやら、煩わしいと感じるやらで、こちらが言った通りに出来ず、時間ばかりが過ぎていく…と、そうなってしまいがちなのです。

 特に、中国人で、「名門大学を出ていない」大卒者に見られることですが、中国では、(これまで)教師を頼らずに、自分一人でやって来た。つまり、「英語」専攻であれば、自分の英語力は、自分を教えた大学の教師以上であるという、いわば「うぬぼれ」です。でも、多分、それは本当なのでしょう。多くの英語の先生には、「専攻」がないのです。英語を「話し、聞き」が出来るだけなのです。日本人から見ると、摩訶不思議としかいいようのない可笑しな話なのですが、大学の教師なのに、よくて話せるだけなのです。

 日本でしたら、「英文学」であったり、「米文学」であったりしますから、そこは、そんじょそこらの「大学生」や、「大学院生」などが、太刀打ちできるような「知識の蓄積量」ではありません。普通の人が「太刀打ちできない」から、大学の教師なのです。専門家と言われるのです。

 「英語」や「諸外国語」を学んだだけの「大卒者」が、そんな途方もない「天狗」になれるはずがないのです。「話す力」だけでしたら、英語圏の人を捜して、どんどん話し、聞きさえすれば、適当な会話力は高めていけますから、もし、そういう土俵で戦うだけでしたら、行動力のある「若い人」の方に、だれもがきっと軍配を上げてしまうでしょう。

 そうなると、何のために「年をとっているんだ」と言いたくなりもするのですが、中国では、「机の上に何も置かない、調べなければならないものなんて何もない」というふりをすることが、虚仮威しになるようですから、それはそれで、しようがないことなのでしょう。

 ただ、「日本もそうだ」と思ってもらっては困るのです。(日本では、もし)そういうレベルの人だったら、まず、「大学の助手」の地位にも潜り込むことさえ出来ないでしょうし、(日本人だったら)大学院だって、(入れるかどうか)怪しいものです。私立大学でも、「あれは実力がない」という評判が立ってしまいますから(これは、即、入学希望者数に響きます。つまり、収入に関係してしまうのです)、次の更新手続きの時に、切られてしまうでしょう。

 勿論、テレビなどによく出演したり、親や先祖の関係で、ネームバリューがあると認められたら、「広告塔」の役割をするために、「飼っておかれる」という地位にはつけますが、それだけのことです。偉そうなふりはできません。言葉は汚いのですが、「ケツは割れて」いますもの。

 この学校では、こういうことを「初級」段階から、一歩一歩「知らしめて」いくのです。そして、「初級」から始めている学生には、「大学」に行けば、もっといろいろなことが吸収できる、もっとすばらしい知識を獲得できるという夢を持ってもらうために…。

 ただ、何でもそうですが、「学ぶため」には、お金がかかります。来日後、日本語が「四級」レベルにも達していない学生は、アルバイトを捜すことすら「苦」でしょう。断られるというのが関の山でしょうから。そのためにも、三ヶ月から半年は、日本での生活ができるように、「お金」を持たせておいて欲しいのです。アルバイト探しでウロウロしていれば、当然のことながら、勉強に集中出来ません。どんどん「悪循環」は続いていきます。悪い「連鎖」が続くのです。

 それに、レベルが上がれば、上がるほど「教材費」もかかります。「初級Ⅰ」「初級Ⅱ」で終わりだったら、それでもいいのですが、「それでもいい」と言う人は、できれば「他の日本語学校」を捜してもらいたい。ここは「上級」以上、つまり、「一級合格」後、半年から、一年程度は余裕のある人に、来てもらいたいのです。

 「日本語学校」の見分け方は、「二年間で一級」が、限度です。下手をすれば、一年間で「初級」終了かもしれません。もし、レベルの高い学生がそんな日本語学校に行ったら、向こう(日本語学校)でも困ります。「一級」までは教えられるという「日本語教師」が、せいぜい「最高レベル」ですから。教材も何を選んだらいいか判らないでしょうし、下手をすると、一年で「一級」レベルに達した学生は、お荷物になってしまうかもしれません。「一級」後の、次の段階を準備するのは大変な作業なのですから、私たちにとっても。

 この日本語学校なら、例えば、私もそうですが、「初級」の「イロハ」から、「一級後」一年程度は、どうにか教えられるほどの「ストック」はあります。教え方は、クラスを見てから決めますが、内容は、すでに準備できています。

 また、国立大学を目指せる程度の(母国においても、レベルの高い)学生なら、土日を利用して、日本の予備校に「物理」や「化学」などを勉強しに行くという手もあるでしょう(お金は余計にかかりますが)。

 どんな学生が来るか、それで、その人に対する「私たちのカリキュラム」も変わるのです。この学校には、それくらいの柔軟性はあります。そうではない学校では、あまりレベルの高い学生に来られても困るのです。せいぜい、「『一級』に合格できた。よかった。よかった。それに、(どこかの)大学にも合格できたし…」が、一番幸せなのです。

 「日本(異国)での勉強が、『自己形成』だけでなく、『充実』にも繋がる」などということが、求められていないのが実情なのです。

日々是好日
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「『東京経営短期大学』の先... | トップ | 「日本列島『運命共同体』」... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

日本語の授業」カテゴリの最新記事