日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「初級授業」では、学生達を休ませずに、「言って、聞いて、言って、聞いて」と活動させつづけねばなりません。体力勝負ですね。

2024-07-26 08:28:33 | 日本語学校

晴れ。

今朝も暑い。おまけに湿度がまだ80%を超えています。陽が高くなれば、だんだん落ちてくるのでしょうけれども…。相変わらず、ムワッとした空気をまとっての出勤。

さて、学校です。

前に、バングラデシュからの学生が、「N3合格」という書類が届いていたのに、来てみると「ひらがな・カタカナ」すら書けなかったということがありました。どうも、頭が良かったので、(あの国の勉強のやり方で)こういう七面倒くさいものは無視して、手っ取り早く。テスト用に特化したものだけに全力を注ぎ、「合格」していたのでしょう。来日後、困るのがはっきりしているのに、その程度の「頭の良さか」と、ガックリきていたのを思い出しました。

「漢字」どころか、「ひらがな・カタカナ」も無駄と思ってやらない人は、バングラデシュ人だけでなく、インド人にもいました。それにアラブからの人にもいましたね。いくらやれと言っても、書こうとしない。私は英語で大丈夫なんて言っている。話せればいいから…学校に通っているのに、文字が書けない?…それでいいと思えるのが、私たちから見れば不思議なのですが、そういう価値観で来ているので、日本に来たからと言って変われないのでしょう。こういう人は大卒かそれ以上でしたから、ある意味、もう柔軟性を失って、自分の国のやり方でしかやれないのでしょう。成功体験が仇を為しているパターンでしたね。

結局、来日後は、愚直さという「能力」を持っている人の方が、信用され、伸びていくものなのですが。ただ「『合格』すればいい。それも『N5』よりも、『N4』。『N4』よりも『N3』」という考え方で、中身なんて「あっち行け、ホイ」だったのでしょう。
 
もう二十年近く前のことですから、その頃は、こちらも送られてきたものをチェックするしかなく(人数が多いところは行っていましたが、少ないところは、書類だけで審査していました)、書類が正しいかどうかくらいでしたね、見ていたのは。疑うなんて考え方がまだ自分の中に育っていませんでした。

ところが、来てびっくらこいた。ええっでしたね。その合格書類は本物でしたし。後から判ったのですが、そういう問題集というか、まあそんな類いのものがあるらしく、後から来た学生が、自分もそれで「合格した」と白状したのです。

それから、バングラデシュからは、以前にここで教えたことのある人による紹介者しか入れていません。紹介と言っても、最初は相談のような形で来たのですが。「自分の身内だけれども…日本で勉強させたい」。それから知り合い(非常に近い知り合いです)と幅は拡がっていったのですが、今、いる学生三人のうち、二人が兄弟がここの卒業生です。何かあったらすぐに連絡できますし、またこちらの勉強方法や「性格」もよく伝えてくれているので、…やりやすい。すぐに怒ることも知っているし、文句ばかり言うけれども、だいたい翌日には忘れてる…ことなんかも…。

なぜ、このことを思い出したかというと、ネパールからの学生(七月生)の話を聞いたからです。やっと私の言う意味がわかって教えてくれた…のですが。
  
この一年生クラス「四月生・七月生」のうち、ネパール勢大半は、一人が言った「五課までしか勉強していない」と同じような状況なのでしょう。こちらとしては、「N5」に合格して来ているからには、『みんなの日本語(Ⅰ)』くらいは、一応やってきているはずと思っているのに、「五課」ということは、限りなく「日本語のレベルは」ゼロに等しいということ。

もちろん、学校では「いろは」からやりはしますが、こちらはザッとやるつもりでいるのに、「初めて」だったら、ザットはやれない。だいたいしつこくやる必要はないはずと思っていますから。

それが、蓋を開けてみると、「○○さんは、△△です」は、すぐに言えても、「○○さんは△△ですか。いいえ、△△ではありません」がスムーズに流れていかない…。個人の問題かな(向こうへ行って、この学校で勉強できるかどうかなどを見てはいないので、時々、おそらくは能力的に言語方面の勉強が無理という人が来ることがあるのです。毎日が休むことなく学校に来るし、人柄もいいし、それなりにアルバイトもできるので、私たちもそれなりに扱ってはいるのですが)と、最初はそう思っていたのですが、実際は、ただ国で勉強して来なかった…だけ。

なんで「N5」に合格できるのだ!!!!でも、以前のバングラデシュの学生を思えば、そういうのが、ネパールにもあり、あるだけでなく、多くがそれを利用していて、「N5」に合格した…、しさえすればいいのでしょう、「後は野となれ山となれ」精神で。

「『N5』に合格した」というのは、つまり「基礎の基礎」はやってきたということと思っていたのに、豈図らんや、トンデモハップンでした。

来年の四月生(今年は10月生も来年の一月生もいれません。この「五課しかやっていない」人達でこっちは喘いでいますから。そんな余力無しです)は、ネパール側にきっちりと、「N5合格ではなく、『みんなの日本語(Ⅰ)』をやった人だけ」こちらに紹介してくれと言わなければならないでしょう。一年ちょっとくらいで、「N3」に、「正統に」合格させねばならないのです。なにせ、スリランカ勢は『みんなの日本語(Ⅰ)』は終え、「N4」試験目指して、勉強していたという人たちが(していても、日本語がきちんとできているかどうかは別です)ほとんどなのですから、それは進め方に苦労する。

一斉授業というのは、特に「初級」においては、ある程度(レベルが)揃っていないと、難しいものです。

もちろん、「中級」でも「上級」でも、クラスの中に、それぞれ差は出ています。ただ、半年以上を同じクラスで頑張っていれば、どこかしら、補え合える雰囲気がすでにあり、それが穏やかな空気となって醸し出されている…ような面があり、誰それがレベルが低いから邪魔だなんて気持ちは皆持っていません。助け合いですね。答えを教えるのはだめですが。

ところが「初級」ではそうはいかないのです。なにせ「初級」というのは、「中級・上級」と違い、「リピート」命なのです。声が大きい初級クラスなどの授業では、90分が終わる頃には、こちらの喉もゼイゼイになっています。それくらい、言わせてやらねばならぬのです。

「初級」授業に、教師がペラペラ説明する必要ありません。「言わせ、言わせ、聞かせ、言わせ、言わせ、聞かせ、また言わせ、言わせ」ができない教師であったら、いわゆる「役立たず」というレッテルが貼られても文句は言えないでしょう。それが、母国で「(1)」はやったけれども…で止まっている学生にとっては、プラスになり(日本人の強みですね)、来日したからこそ、学力が伸びると言われるところなのです。特に、できる学生に対する「応用」が、ですね。

それが「真っ白」に近い状態だと、意味がわかっていませんから(ベトナムの学生を教えたとき、説明が母語で書かれているのに、意味がわからないという人が何人も出て、困ったことがありました。それから推して考えるに…似たものかも知れません)、リピートもできないでしょう。

ただ、上を置いておくわけにはいきません。上の人達は、上手になろうと、国でも勉強してきたわけで、下ばかりに手を焼いていると、上の学生達が、飽きてやる気を失ってしまいます。上の学生達が落ちてしまったら、ただのだらしない学校になってしまうでしょうから。

日々是好日
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