日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「皇居見学」。「スリランカ人学生と銀行へ行く」。

2013-04-26 08:17:52 | 日本語の授業
 曇り、時々晴れ。そして予報では突風が吹くこともあるとか。

 もう、こうなれば「何でも来い」に、なってしまいます。

 実は、昨日は「皇居見学」の日でした。学校では、晴れるか雨になるかで皆やきもきしていたのですが、蓋を開けてみると「晴れ」、見学日和で、楽しめたことと思います。


 そして、戻ってきてから、スリランカの新しい学生達を連れて、銀行へ行ってきました。最初は無愛想だった警備のおじさんも、三時間くらい経った後には、愛想良く小さな出口から出してくれましたから、好意を持ってくれたのでしょう。

 スリランカの男子学生達は、身体が大きいのです。しかも髭を生やしているので、二十歳くらいの学生でも、ちょっと年上の、そして強面に見えてしまいます。それが四人も一緒にいるのですから、警戒するのもわかるような気がします。ちょっと見かけは怖いのです。

 ところがこの学生達、何を言っても、「はい、先生」。そして「いけません」と言うと、「はい、ごめんなさい」と礼儀正しいのです。それは私とのやり取りでわかったはずです。このおじさん、だんだん親切になってくれましたから、いい子達だということを感じ取ってくれたのでしょう。

 ただ、彼らは「ひらがな」は終えたものの、「カタカナ」は最後まで習っていなかったのです(今日終わる予定です)。それなのに、銀行では、名前をカタカナで書かなければならない…。しかもその長さたるや、楽にカタカナで20文字は超えています(「濁点」は数えません)、中には30文字以上をカタカナで書かなければならない学生もいて、「これは『ブ』で、『ガ』じゃありませ」と、私がカタカナで書いて示していたにもかかわらず、写し間違えて、銀行の人に注意されてしまうのですから。

 その度に、「あ~あ、○○○○」とため息です。

 銀行の人も困ったことでしょう。最初の学生が「平成」のところに「印」をつけたので、皆がそれを見て同じようにしたところ、一人が「昭和」に引っかかっていたのです。これでまた書き直しかと思いきや、さすがに銀行の人も疲れたと見えて、「印鑑を貸してください」で終わってしまいました。

 学生達の中に一人、他の日本語学校から移ってきた学生がいたので、彼が何かと世話を焼いてくれました。実は、去年の7月にも同じように一人のスリランカ学生を連れて銀行へ行った時、頼んでもいないのに、半年ほど前に来ていた学生と、三ヶ月ほど前に来ていた学生が、ついてきてくれたことがありました。

 「どうして来たの」と聞くと、「一人では、○○○○さんが寂しいから」などと、わけのわからないことを言っていたのですが、実は手伝いに来てくれたのでしょう。日本語があまり通じない新入生に、私が言ったことや銀行の人が言ったことを直ぐにシンハラ語に訳して言ってくれていましたから。

 その三人が来ていなかったので、内心ではちょっと不審に思っていたのですが、この学生がいるから自分たちは行かなくても大丈夫と思ったのでしょう。

 一応あれやこれやの騒ぎが終わり、「待っていてください」と言われ、椅子に掛けて待っていますと、中の二人がスマートフォンでなにやらやっているのに気がつきました。フェイスブックに写真を載せているのだと言います。そして、私に、こんな写真も撮ったといろいろ見せてくれました。

 一人が腕に何かを巻いているのが見えました。どうも犬の保護運動のものらしく、「犬が大好き」と言って、今度は彼らの家で飼っている犬たちの写真を見せてくれます。すると、もう一人も「私の犬」と言って見せてくれました。皆、大型犬です。

 そのうちに、スリランカの学生が一人やって来ました。様子を見に来たらしく、向こうから覗き込んでいます。こちらに来るように言いますと、直ぐに皆の中に入って座り込んでしまいました。銀行の人が単発的に、呼びかけますので、ちょっと油断はできません。チェックに時間がかかると見えます。なにせ、「名前の文字は英語」と彼らは言うのですが、読み方が多少英語的ではない部分もあるらしく、彼ら自身からしてスペルを間違えて書くことだってあるくらいなのですから。

 彼らの名前で、まず五つくらいしか持っていなかったら、私は安心します。「どうにかなる」と考えるのです。このどうにかなるというのは、名前を全部読み上げなければならない時にという意味です。ところが、七つも八つもあると、どこまで読んでいたのか指で押さえないとわからなくなってしまいます。私たちが呼び慣れている名前が、だいたい真ん中へんにあるのですが、聞き慣れた名前がいくつも繋がっているので、誰の名前を呼んでいたのかわからなくなってしまうのです。

 名前を全部書けない時(長すぎて)も、前の二つを書くとか、真ん中辺りから切って後ろにするとか、あるいは後ろだけにするとかしています。どうも、融通無碍らしいとも見えるのですが、そこは、やはり、彼らなりの法則はある…ような、でも、ないような。

 そのうちに、銀行に入ってきた一人の日本人男性が「先生、お久しぶり」と私に声を掛けてくれました。この学校によく来てくれている人で、私も見知っている人です。すると、学生達が、彼を見て、「日本人?」と聞きます。「はい」と答えますと、「日本人と結婚したから?」。「違います。本当の日本人」。「お父さんか、お母さんが外国人?」と、どうも私の言っていることが信じられないらしく、どこかに異国の血を入れたがっているように見えましたので、「どうして?」と聞きますと、「ネパール人です」と言うのです。

 そんなふうに見たことがありませんでしたので、私の方が驚いて、「ええっ。日本人ですよ」。五人が頭を寄せて、ごちゃごちゃ言い合っています。そして、私の顔を見て「違います」。「違いますじゃありません。日本人です」。

 一度外に出たその人がまた入ってきますと、五人が首を引きのばすようにして彼を見つづけています、ちょっと失礼かなと思われるくらいに。その上、その人が動く度に、その後を眼で追っているのです、伸び上がるようにして。最後に私を見て「ネパール人です」。「……(でも日本人ですけれどもね)」。けれども、彼らがそう断定しているうちに、だんだん私の方でも、ネパール人のように思えてきたから不思議です(ごめんなさい)。

 そのうちに、シンハラ語で雑談ばかりしている彼らに、銀行にある「絵本」を取って、渡しますと、嫌がらずに見始めました。もう一冊、捜しているうちに、「アンパンマン」の絵本がありましたので、それを渡しますと(以前のスリランカ人学生が『アンパンマン』を知っていましたので)、ニコニコしながら「知っている」と言って、一人が読み始めました。皆が覗き込んで、読みが一つでも間違っていますと、途端に「『パ』じゃない、『バ』だ」と、突っ込みが入ります。

 そして四時近くなってから、「来てください」と呼ばれて皆が行き、そして終了です。帰りは警備のおじさんのニコニコに送られて、きっと学生達もホッとしたことでしょう。どうしてもその国の言葉ができないと、嫌な目に遭う確率が高くなってしまいます。

この学校では、何かあった時、そしてそれが教師が付いて行った方がいいと学校で判断できた時には、最初の頃は、必ずだれかがついて行っています。そのうちに、頑張って日本語ができるようになれば、その時は、もう私たちの付き添いは不要になります。彼らとも、「早く日本語が上手になってくださいね」と言って別れたのですが。

日々是好日
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