イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「竹島水族館ドタバタ復活記」読了

2020年10月12日 | 2020読書
小林龍二 「竹島水族館ドタバタ復活記」読了

竹島水族館というのは、領有権を争っているところにある水族館ではなくて、愛知県蒲郡市にある公営の水族館だ。建物は1962年(昭和37年)建築と古く、日本で4番目に小さな水族館ということだ。深海生物の展示が特色となっているらしい。

この本は、地方の寂れた水族館が来館者を倍増させてみごと復活するというお話だ。その中心にいたのが、現館長の著者というわけである。

著者がこの水族館に就職したとき、来館者数のピークはとうに過ぎ去り寂しい限りの状況で、廃館か指定管理業者に経営を委託するかというところまできていた。
著者は何とかしなければと思うのだけれども周りの人は半分公務員という身分のせいか現状から何の行動も起こそうとしない。
回りから浮いていた著者は後に副館長となる館員とともに行動を起こす。
指定管理業者になるために自分たちで法人を立ち上げ、最初におこなった行動はタッチングプールを作ることだった。この水族館の強みは深海生物の展示だということでそのプール(さわりんプールという)にタカアシガニを入れたことが復活の足掛かりになった。
その後も手書きの解説を水槽に貼り付けたり、カピバラを飼育して適当に曲芸をやらせたりして入場者を増やしてゆく。
その後も地元の会社と協力して奇抜な土産物を開発したり深海魚をテーマにしたイベントをおこなうなど、ついに平成30年には史上最高の47万5千人の入場者を達成した。

成功物語だ。

マーケティングの基本として、「強みを生かして弱みを補強する」という行動があるけれども、著者のとった行動はその基本に則った行動のように思う。
深海魚という強みを生かして、お金がないという弱みを逆手にとった戦略が功を奏したというところだろうか。
勝てば官軍でだれでもうまくいくと思えないが、著者はその秘訣を7つにまとめている。

1.熱意がすべてを支える
2.反骨精神が力の源
3.目標を具体的に持つ
4.創意工夫はカネより強い
5.基準はお客さんのため
6.人との出会いが武器になる
7.逃げ道を作る

熱意と反骨精神。ここが一番肝心なのだろう。会社の中で何か新しいことを始めるとなると必ず誰かが反対する。それにへこたれない反骨精神・・。これがなかなか体力がいる。そして、反対されるならまだしも、僕の会社ではそういうことをしようとすると無視をされる。これは反対されるよりも堪える。

僕も一応、斜陽産業ながらお客が入ってなんぼの世界にいたので、少しでも面白いことを考えて集客できたらといろいろなことを考えてきたきたけれども、ほぼすべて評価どころかいいとも悪いとも何も言われたことがなかった。まあ、“検証”という言葉のない会社だったから振り返るという習慣がないのでそれも仕方がないが、そんなことが続くとやりがいというものがなくなる。
そして、結局、当たり障りのないこと、取引先の言ってくることを忠実にやるというのが一番評価が高くなる。変わったことを考えると既存の取引先のテリトリーを侵すことになるから取引先からの評判が悪くなりそれが上司からの悪い評価になる。そんな流れだ。
それにもへこたれない反骨精神・・。ぼくにはそんな体力がなかったし、もともファッションビジネスなどというものに興味がなかったのかもしれない。

サラリーマン生活もほぼ終わりに近づいてきたとき、自分の強みや精神力というようなものを消去法で振り返ってみると、あれ・・、何も残らないことに気付いた。
さっきはいろいろな悪態をついたけれども結局自分にできることなどなかったのだ。悲しいけれども・・。
だから今の境遇に甘んじなければならないのかと思い立った。

著者はこんなことも書いている。『自分が人のためにやったことで自分以外の人が楽しめて幸せになり、それにより自分も幸せになれるということは最高です。』確かに、自分に野望がなくても何か人のためになることをやりたい。
第2の人生でそんなことを見つけることができるだろうか・・。それとも僕みたいな性格の人間には“やりがい”というものは最後まで見つけられないのだろうか・・。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「三体Ⅱ 黒暗森林(上)」読了 | トップ | 船底塗装 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

2020読書」カテゴリの最新記事