イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「文豪たちの憂鬱語録 」読了

2020年12月15日 | 2020読書
豊岡 昭彦、高見澤 秀/編集 「文豪たちの憂鬱語録 」読了

この本は、前向きにさせてくれる力強い名言とは真逆の、『文豪たちのいわば、「本音」ともいえる「憂鬱」、「絶望」。「悲哀」、「慟哭」などに満ちた言葉をすくい取ったもの』である。
『どんなにがんばってm、人生には失敗や挫折、災難はつきものだ。そんなときに「もっとがんばれ」とか「あきらめなければ道は開ける」とか言われても本人にとってはつらいだけということも多いだろう。がんばったからといって、解決できない問題があるのも人生なのだから。そんな残念な人生に必要なのは、じっと黙って傷ついた心に寄り添ってくれる言葉』なのである。

最初から太宰治のこんな文章が出てくる。
『生きてゆくから、叱らないでください。』
確かに苦悩と悲哀に満ちている。もう、そのあとにかけてあげる言葉が見つからないほどだ。
そのほか、芥川龍之介、石川啄木、島崎藤村、坂口安吾などの作品からネガティブな文章をピックアップしているのだが、一連の文章の中からそこだけ取り出してみても実際それがどんな意味で書かれたかということがわからない。そこが残念である。もっとそれそれの言葉を深く掘り下げて読み解いてほしかった。
宮沢賢治でさえ闇の部分があったのだということで童話の中から集められた言葉が並べられているが、これもやっぱり前後のつながりで違った意味を持っていたりもするのじゃないかと思うのである。

掲載されている大半の作家は若くして自殺したり薬に溺れたりはたまた女性で失敗したりした人たちだ。心の闇の中に闇を抱えていたの確かだろうがここまで破天荒に生きることができればそれはそれ本望であったのではないだろうか。
いっそそうしてやろうかと思ってもそこまで踏み込めない。当時とは生きてゆくのに必要な固定費が違いすぎる。ぼくの家なんか、携帯電話とインターネットのプロバイダに払うお金だけで毎月2万円近く払っている。破滅するにも先立つものがいるということだ。作家という仕事はそれなりに金回りがいいのだろうからそんなに家族に迷惑をかけなくてもひとり破滅できたのかもしれない。

それさえもできないそんな境遇が悲しい・・・。

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