ほそかわ・かずひこの BLOG

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女性宮家3~大原康男氏の指摘

2012-01-23 08:46:02 | 皇室
 皇室制度及び皇位継承の問題について、皇室の伝統を踏まえて的確な意見を述べてきたのが、国学院大学教授の大原康男氏である。
 大原氏は昨年12月16日の産経新聞のインタビュー記事で、女性宮家に関する見解を述べた。大原氏は、政府の女性宮家創設案について、「女系天皇導入を裏口から入って実現させようとするもので、実に巧妙な議論の立て方だ」と看破している。また、「本来は正面から、男系の維持を原則とした皇位継承か、わが国の歴史上いまだかつてない女系天皇という考えを導入するかの議論をまずすべきだ。今回のように皇位継承には触れず、女性宮家についてだけ論じるのは、問題の取り上げ方が本末転倒だと言わざるをえない」と、問題の核心を指摘している。
 大原氏は、平成17年5月31日第六回「皇室典範に関する有識者会議」で参考意見を述べた。その際に提出された資料は、皇室制度皇位継承の問題を考える際に有益なものである。大原氏の上記発言の記事とともに掲載する。

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●産経新聞 平成23年12月16日

http://sankei.jp.msn.com/life/news/111216/imp11121607240001-n3.htm
【金曜討論】
「女性宮家」
2011.12.16 07:18

≪大原康男氏≫

女系天皇につながる恐れ

--女性宮家構想をどうみる?
 「表向きは天皇陛下のご公務をお助けするため皇族の人数を確保する必要があり、そのためには適齢期の女性皇族に宮家の当主になっていただこう…とのことで国民の耳に入りやすい話だが、実際は女系天皇導入を裏口から入って実現させようとするもので、実に巧妙な議論の立て方だ」

皇位継承の議論が先

--女性宮家の創設には反対ということか
 「本来は正面から、男系の維持を原則とした皇位継承か、わが国の歴史上いまだかつてない女系天皇という考えを導入するかの議論をまずすべきだ。今回のように皇位継承には触れず、女性宮家についてだけ論じるのは、問題の取り上げ方が本末転倒だと言わざるをえない」

--これまで男系維持を主張されてきた
「昭和22年にGHQの経済的圧力によって皇籍離脱を余儀なくされた旧皇族の方々の子孫で適切な方に皇族の身分を取得し、宮家を設立していただければ安定した皇族の確保につながる。皇籍を取得された方がすぐ皇位につくわけでもなく、時間がたつにつれて見識や風格も培われることだろう」

--小泉政権下での有識者会議で、旧皇族の皇籍復帰は「60年近くたっており、国民の理解が得られにくい」と片づけられた
 「過去の例をみると、直系でなく傍系による皇位継承は全体の45%(56方)に及んでいる。皇籍を離脱された方が復帰して、さらに即位した例も2例ある。また、今の皇后陛下のように、民間から入られて永年、皇室になじまれ、敬愛の対象になっている方もおられる現実を考えるべきだ」

--女性宮家の問題点は?
 「民間出身の配偶者の地位や呼称はどうするのか。お子さまが生まれた場合、女系皇族ということになるが、皇位継承権はどうするのか。女系天皇を認める、というところまで突き進むことになる」

--女性宮家構想の背景に、未婚の女性皇族方が結婚適齢期を迎えられていることがある
 「それは何年も前に分かっていたことでこの間、適切な提言をしてこなかったのは宮内庁の怠慢。反省の弁があって当然だろう」

宮家の拡充は必要

--皇室典範改正の必要性は?
「このままでは悠仁親王の代には他に皇族がいなくなることも考えられる。宮家の拡充は必要だが、典範そのものの改正ではなく時限立法で対処するのが適切だ」

--その際に皇族方のご意見を反映させるべきか
 「現在も皇室会議という制度があり、皇族お二方が議員になっておられる。この皇室会議を通して皇族方のご意見も聞くべきだ」

●平成17年5月31日第六回「皇室典範に関する有識者会議」に提出された大原康男氏の資料

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/dai6/6gijisidai.html
皇室典範の改正について〈メモ〉 大原康男

【一】わが国における皇位継承の歴史
一、男系主義で一貫しており、そのことが国民統合の権威の源泉となっているという認識が広く共有されてきたこと。
二、直系─嫡系が理想だが、それが困難になった場合には傍系・庶系によって補ったこと。そのために、いわゆる猶子制度が活用されたり、世襲親王家が創建されたり、傍系から継承された天皇に直系の皇女を配されたりするなど、さまざまな工夫がなされたこと。
三、過去に十代八方おられた女帝は例外的な存在で、すべて男系。ご在位中は独身で、外国に見られる「皇配殿下」のような存在は皆無であったこと。
四、譲位(生前退位)が頻繁に行なわれたことで、摂関政治や院政といった変則的な政体が生まれたり、政争による廃位すらなされ、皇位継承の不安定にもつながったこと。
五、総じていえば、何回かあった皇統の危機に際しては当時の人々が叡智を出し合ってその都度事態を克服したこと。

【二】明治皇室典範の制定
一、成文による皇位継承のルールが確立していなかったため、皇位継承に混乱・対立・不安定が生ずる要因が内在し、時にはそのための流血の悲史が彩られたことに鑑み、確固とした皇位継承法を初めて明文で制定。
二、井上毅(法案起草の中心)の三原則
①わが国の歴史・伝統を踏まえたものであること。
②当時の国情や人情に照らして妥当なものであること。
③当時のヨー口ッパ先進諸国にも通じる普遍性を有するものであること。
三、主たる内容
①男系の男子に限定(第一条)
②直系・長系・嫡系・近親優先(第二~第八条)
③退位の禁止(第十条)
④皇族の養子の禁止(第四十二条)
⑤天皇・皇族以外の者と結婚した皇族女子の皇籍離脱(第四十四条)
⑥皇籍離脱した者の皇籍復帰の禁止(明治四十年皇室典範増補 第六条)
四、現典範も②の庶系による皇位継承の容認、④に天皇の養子の禁止が加えられたこと以外は旧典範をほぼ踏襲。

【三】皇位継承規定の改正について
一、男系主義の歴史的重みを十分に認識し、女帝(女系容認型)に関する議論に入る前に男系維持のための方策を講ずること。
①旧皇族の皇籍復帰の可能性を検討すること。
②皇族の養子制度を検討すること。
二、わが国にとって未曾有の女帝(女系容認型)導入がもたらす重大な意味を正しく理解するとともに、女帝支持の世論の動向と一部の女系容認論の背景にある危険性を慎重に見極めること。
三、喫緊の課題である宮家存続の対策を講ずること。それは一で述べた男系維持の観点からのものであること。

【四】皇室典範の改正規定の問題性

一、旧典範の改正 憲法と対等の法として議会は関与せず、皇族会議と枢密顧問の諮詢による。
二、現典範の改正 一法律に過ぎず、国会の単純な議決による。皇室のご意向を反映させる回路がない。

(参 考)

一、皇位継承の系統別一覧表
    嫡 系      庶 系  計
直系 四一方      二七方  六八方( 五五%)
傍系 二八方      二八方  五六方( 四五%)
 計 六九方(五六%) 五五方(四四%) 一二四方(一〇〇%)
(帝国学士院編『帝室制度史』第三巻)

*嫡系の中には皇后(中宮)所出でなくても、皇后(中宮)の実子とされた方も含まれる。

二、傍系による皇位継承で直系の皇女を皇后に迎えた例
・継体天皇(第二十六代)の皇后は仁賢天皇(第二十四代)の皇女・手白香皇女(たしちかのひめみこ)。
・光格天皇(第百十九代)の中宮は後桃園天皇(第百十八代)の皇女・欣子内親王。

三、女帝即位の事由
①外戚の権勢によるもの
 推古天皇(第三十三代)、
 孝謙・称徳天皇(第四十六・四十八代)。
②皇嗣の成長を待つための一時的な攝位
 皇極・齊明天皇(第三十五・三十七代)、
 元明天皇(第四十三代)、
 元正天皇(第四十四代)、
 明正天皇(第百九代)、
 後桜町天皇(第百十七代)。
③皇位継承の紛争を避けるため
 持統天皇(第四十一代)
(国立国会図書館蔵「佐藤達夫関係文書」)

四、譲位による皇位継承
百二十四代のうち五十四代。その中には廃帝など異例な譲位が四例ある(前掲『帝室制度史』第三巻)。

五、戦後の皇籍離脱(昭和二十二年十一宮家、五十一方)
①連合国軍による軍事占領下という異常な時代状況下にあって、皇室財産の国庫編入、高額の財産税課税、宮内省機構の大幅縮小というGHQの占領政策による異例の措置。
②竹田宮・北白川宮・朝春宮・東久邇宮の四宮家
・竹田宮恒久王(初代)の妃は明治天皇の第六皇女・昌子内親王。
・北白川宮成久王(四代)の妃は明治天皇の第七皇女・房子内親王。
・朝香宮鳩彦王(初代)の妃は明治天皇の第八皇女・允子(のぶこ)内親王。
・東久遷宮稔彦王(初代)の妃は明治天皇の第九皇女・聡子(としこ)内親王。盛厚王(二代)の妃は昭和天皇の第一皇女・成子内親王。
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6 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-03-01 06:18:04
女宮様方の結婚を利用して、夫君を男妃として皇統譜に記載してしまえば、どうにでもなるという考えなのではないでしょうか。お子については、一般の戸籍を作成する法的根拠がないとか言って、また皇統譜に記載してしまう。子息なら皇統譜上に新たな男系が出現。皇統に属する、とは皇統譜に記載されているということだと、従来の実務をたてに、末尾の継承順位を付与など、ごり押しは考えているのかもしれないと思います。
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>Unknownさん (ほそかわ)
2012-03-01 12:54:08
女系継承容認論者は、いろいろな仕方を考えているでしょうね。
ご意見のうち、

>子息なら皇統譜上に新たな男系が出現。<

という部分についてですが、皇族女子が民間人男子と結婚された場合、生まれたお子様は男女とも女系です。男系ではありません。母親を通じてしか歴代天皇の系譜につながらない子だからです。
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Unknown (Unknown)
2012-03-01 21:07:57
ご指摘の通りの解釈でなければなりませんし。他に解釈の仕様はありません。

私が危惧して記させて頂いたのは、男妃、息子、息子の息子
という「皇族」の男系系譜が皇統譜に記載されるという状況を作るつもりでいるという事です。
皇室典範第一条の
皇統に属する男系の男子を
皇統譜に記載された、(男妃の)男系の男子
だから継承権があると読めたとやるくらい平気な連中だと思った方がよいのではないかと思います。

女宮様方は男妃を皇統譜に記載する為の手段に過ぎず、男系だけではなく、女系の断絶も想定していると思った方がよいと思います。そういう連中ですから。

妃の死別離婚再婚にともなう皇族身分からの離脱は皇室典範第十二条第十四条です。再婚にともなう離脱は十二条で、女性宮家とは、この規定を廃する事です。
上手くゆけば妃や男妃の再婚相手を皇族とする事を可能にするようにしてしまう事も考えているような相手だと思った方がよいと思います。
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>Unknownさん (ほそかわ)
2012-03-02 10:48:48
「男妃」とは初めて見る言葉です。字義から見て侮辱語と感じます。誰か専門家か有識者で使っている人がいますか。
 欧州の王家の場合、女性王族の配偶者には王配または王婿を使います。わが国で、仮に男系女子の天皇を可能にし且つ一般人との婚姻を認めるとか、皇族女子が一般人と結婚後も皇籍にとどまることを可能にするというような改正をする場合(私はともに反対ですが)、配偶者の呼称が問題になります。皇配・皇婿、王配・王婿という用語が考えられるでしょう。

>妃の死別離婚再婚にともなう皇族身分からの離脱は皇室典範第十二条第十四条です。再婚にともなう離脱は十二条で、女性宮家とは、この規定を廃する事です。<

 第十二条・第十四条は下記の条文です。御説の通りには解釈できません。

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第十二条  皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。
第十四条  皇族以外の女子で親王妃又は王妃となつた者が、その夫を失つたときは、その意思により、皇族の身分を離れることができる。
○2  前項の者が、その夫を失つたときは、同項による場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
○3  第一項の者は、離婚したときは、皇族の身分を離れる。
○4  第一項及び前項の規定は、前条の他の皇族と婚姻した女子に、これを準用する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
返信する
Unknown (Unknown)
2012-03-03 01:48:45
ご指摘有難うございます。
いないと思いますが、私はその事が逆に不思議です。ご存知のように皇族とは皇胤のうちで、親王、内親王、王、女王である皇親と、男性である天皇、親王、王の、女性である后妃を明治皇室典範で併せたものです。皇親后妃制度が根底にあり、これは継承資格が父系出自によるものであって、男子相続人である事によるものでは無い事を端的に示します。
これに従えば、皇親ではない女宮様の夫君を皇族として考える際、后妃に類するものとなります。必然的に男性妃、あるいは男妃と呼称する事になります。ご指摘のような語感はあるかもしれませんが。皇族とするには、そもそも不自然である事に由来するものとお考え下さい。

〉欧州の王家の場合、女性王族の配偶者には王配または王婿を使います。

使いません。

〉わが国で、仮に男系女子の天皇を可能にし且つ一般人との婚姻を認めるとか、皇族女子が一般人と結婚後も皇籍にとどまることを可能にするというような改正をする場合(私はともに反対ですが)、配偶者の呼称が問題になります。皇配・皇婿、王配・王婿という用語が考えられるでしょう。

いずれも子を皇子皇女王子王女とし皇位王位の相続人とする事を前提にした呼称で、敵の術中です。女宮様の臣下との婚姻後の称号の保持は明治皇室典範にも第四十四条があります。夫君を皇族とする理由は御結婚を利用して、そうしたい。それだけでしょう。

>妃の死別離婚再婚にともなう皇族身分からの離脱は皇室典範第十二条第十四条です。再婚にともなう離脱は十二条で、女性宮家とは、この規定を廃する事です。<
 第十二条・第十四条は下記の条文です。御説の通りには解釈できません。

第十二条  皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。
第十四条  皇族以外の女子で親王妃又は王妃となつた者が、その夫を失つたときは、その意思により、皇族の身分を離れることができる。
○2  前項の者が、その夫を失つたときは、同項による場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
○3  第一項の者は、離婚したときは、皇族の身分を離れる。
○4  第一項及び前項の規定は、前条の他の皇族と婚姻した女子に、これを準用する。

夫を亡くした皇族女子である妃が民間と結婚して皇族の身分を離れる明文は第十二条で十四条二、三はあてにはならないと思います。
返信する
>Unknownさん (ほそかわ)
2012-03-03 17:32:17
>〉欧州の王家の場合、女性王族の配偶者には王配または王婿を使います。

使いません。<
 やや正確さを欠く表現でした。欧州王族では女王陛下の場合、配偶者を王配殿下と称するとのみ書くべきでした。

>夫を亡くした皇族女子である妃が民間と結婚して皇族の身分を離れる明文は第十二条で十四条二、三はあてにはならないと思います。<
 第十二条は婚姻、第十四条1項2項は死別、同条3項は離婚と明確に区別できます。第十二条は、婚姻一般ゆえ再婚を含むと解せます。その場合、皇籍離脱が先か再婚が先か、ということが出てきます。法的な意味での婚姻は結婚を公認することですから、再婚を前提として当事者の意思で皇籍離脱することが先になると思います。現皇室典範の下での前例がないので、事例が発生した時点での解釈仕方になると思います。 

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