ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

教員免許更新制度廃止の動き2

2009-09-14 11:10:30 | 時事
 昨日、教員免許更新制度の廃止への動きについて書いたが、教員免許更新制度には、制度面、運用面、他の教育政策と合わせた総合的な効果という三つの面の課題があると思う。
 私は、教員免許更新制度は、制度の立案の段階で、不適格教員、及び教職員の組織的な政治活動への対処という重要課題において、内容が後退したことに不満を持っている。しかし、不十分ではあるもののまずは現行制度を運用しながら、改善を図っていくべきものと思う。当制度を廃止することには、反対する。ましてや日教組の政策が政権与党の政策となって廃止にいたるとすれば、日本の政治と教育を誤らせる。

 次期首相・鳩山由紀夫氏は、民主党の幹事長をしていた今年1月14日、日教組新春の集いに参加し、次のように語った。
 「選挙のときにご支援を下さっている皆さんの温かいお気持ちに、感謝申し上げたい。日教組とともにこの国を担う覚悟だ」と。
 さらにこの集会で、輿石東参議院議員は、次のように語った。
 「(日教組は)政権交代にも手を貸す。教育の政治的中立といわれても、そんなものはありえない。政治から教育を変えていく。私も日教組とともに戦う。私も永遠に日教組の組合員であるという自負を持っている」と。
 この発言は、国会議員でありながら、教育の政治的中立を目指す教育基本法や教育公務員特例法を否定し、日教組の組合員に違法な政治活動を促す問題発言である。
 それを容認し、「日教組とともにこの国を担う覚悟だ」と公言している鳩山氏も、国政を担う政治家としての基本姿勢が問われる。

 輿石氏が教員免許更新制度の廃止を謳うのは、上記発言に見る氏の政治姿勢、及び日教組と一体化した民主党の組織体質に基づくものであって、教員免許更新制度の存廃は、もはや教育の分野における論点にとどまらず、日本の政治全体に関わる問題になっていると思う。

 次に本件に関する新聞記事を、クリップする。

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●産経新聞 平成21年9月14日号

http://sankei.jp.msn.com/life/education/090914/edc0909140306000-n1.htm
【主張】免許更新制「廃止」 教育改革後退を憂慮する
2009.9.14 03:05

 民主党の輿石東(こしいし・あずま)参院議員会長兼代表代行が教員免許更新制の廃止に向け、改正案を来年の通常国会にも提出する考えを示した。
 更新制は、教育に最も重要な教師の指導力向上を目的として今春、導入されたばかりだ。これに水をさす輿石氏の発言は問題で、教育改革を後退させてはならない。
 更新制度では、10年ごとに指導法や最新の教育課題について30時間(5日間)以上の講習を受ける。そして模擬授業など実技を含めた試験により、5段階で評価される。60点未満だと不合格になり、2年以内の再講習で合格しないと免許が失効する。
 これに対し、日本教職員組合(日教組)などは「教員の負担が増える」と制度導入に反対してきた。日教組出身の輿石氏は、総選挙前から「政府は先生の身分にまで口を出す必要はない」などと繰り返していた。今回は、平成23年度から免許更新制を廃止することに「間に合えばそうする」と、さらに踏み込んだ発言をした。
 民主党はマニフェスト(政権公約)で、教員免許制度を「抜本的に見直す」としてきた。教員養成課程を6年制にするほか、教員の増員を強調している。教師の待遇や地位向上などを訴える日教組の主張に沿ったものだ。
 だが教員養成課程を6年制に延ばしても、教師の質が良くなるかどうか疑問である。実際、大学の教育学部、大学院の教育内容そのものが理論に偏り、実践的でないなど課題が多い。
 高倍率の試験を経て採用されても、保護者や子供とうまくコミュニケーションの取れない教師が目立つ。教育委員会によっては教師養成塾などをつくり、育成に苦心している。
 また教師は自分の授業を客観的に評価される機会が極めて少ない。ベテランがマンネリ化し、学級崩壊を招くケースも報告されている。指導法を見直す機会としても、更新制は意味が大きい。
 輿石氏は過去にも「教員の政治的中立はありえない」などと耳を疑う発言をした。だが政権が代わったからといって、教育の重要施策が特定団体の意向などでねじ曲げられることは許されない。
 家庭や地域の教育力低下が懸念される中、公教育再生のカギを握るのは教師だ。適切に評価し、鍛える更新制を機能させねばダメな教師が増えるばかりだ。
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教員免許更新制度廃止の動き1

2009-09-13 14:16:38 | 時事
 今回の衆議院議員総選挙で、わが国の国民の多数は、失政・失策の続く自公連立政権に厳しい評価を下し、民主党への政権交代を求めた。民主党は「国民の生活が第一」というスローガンを掲げ、官僚主導の政治から政治家主導への転換を国民に訴えた。
 政治が官僚依存体質から脱却することは、急務である。政治家と官僚の癒着、不透明な特別会計、税金の無駄遣い、天下り・渡りの横行等は、ぜひ改めてもらいたい。ただし、民主党が厳しく批判するのは、霞ヶ関の中央官僚が対象であって、地方公務員には甘い。中央官僚だけでなく地方官僚も含めて、大胆な改革をするのでなければ、真の公務員制度改革とはいえないと私は思う。

 民主党の支持団体には、労働組合が多い。労働組合出身の政治家も、民主党には多い。政府が労働組合の主張・要望に左右されるならば、民主党の政治は、官僚政治から組合政治への転換にすぎないものとなるだろう。
 特に問題なのは、教育公務員である。民主党の支持団体に、日教組がある。民主党は、日教組の教育政策を、ほとんど受け入れて、党の政策としている。その政策の一つが、教員免許更新制度の廃止である。教員免許更新制度は、指導力不足の教員が増えているので、教員の質的向上を図るために導入された制度である。今年の4月に施行されたばかりだが、日教組は強く反発している。教員免許という教職員にとって、最大の既得権益が侵されるからである。
 民主党の輿石東(こしいし・あずま)参議院議員は、先ごろ教員免許更新制度を廃止に向け、国会に教育職員免許法改正案を提出する考えを明らかにしたという。輿石氏は、日教組出身の政治家である。民主党の参議院議員会長であり、党の代表代行である。そういう立場にいる政治家が、教育公務員の利益を代表して政治に反映させようとしているところに、民主党の大きな問題の一つがある。

 教育は「国家百年の計」という。国家を担う次世代を育成することは、政府の大切な役割である。これを怠った国は、必ず衰退する。そういう重要な教育に関する政策を、民主党は、日教組の政策をもって、党の政策としている。これは、政権政党として失格である。政治家主導と国民に約束しながら、実際は地方公務員である教職員の意思に従っているようでは、本末転倒である。公務員制度改革を謳うのであれば、霞ヶ関の中央官僚だけではなく、教育公務員に対しても、厳しく改革を進めなければならない。

 以下は、関連記事のクリップ。

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●産経新聞 平成21年9月13日号

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090912/stt0909122355017-n1.htm
教員免許の更新制度廃止へ 民主・輿石氏が明言
2009.9.12 23:51

 民主党の輿石東(こしいし・あずま)参院議員会長兼代表代行は12日、甲府市内で記者会見し、今年4月に導入された教員免許更新制度の廃止に向け、来年の通常国会にも教育職員免許法改正案を提出する考えを示した。教員免許更新制度は安倍晋三内閣が教育再生の目玉として導入を決めたが、民主党の有力支援団体である日本教職員組合(日教組)が強く廃止を求めてきた。政権交代により教育改革路線は一気に後退する公算が大きい。
 輿石氏は元山梨県教組委員長で、日教組の政治団体「日本民主教育政治連盟」会長を務める。小沢一郎代表代行と太いパイプを持ち、「参院民主党のドン」といわれる。
 輿石氏は「教員免許更新制は変えなければならない。できるだけ早くやる方向になる」と明言、来年の通常国会での改正案提出についても「当然あり得る」と述べた。平成23年度から免許更新制を廃止することにも「間に合えばそうする」と前向きな考えを示した。
 指導力不足の教員排除を可能とする改正教育職員免許法は19年6月に成立。教員は10年ごとに計30時間以上の講習を受け、認定試験で不合格となれば、2年以内に再試験で合格しない限り、教員免許が失効する。
 民主党は衆院選マニフェストに「教員の資質向上のため、教員免許制度を抜本的に見直す」と明記。社民党も「免許更新制を廃止」を掲げてきた。(略)
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トッドの人口学・国際論9

2009-09-12 08:42:04 | 文明
●文明は「衝突」しない。「接近」する

 エマニュエル・トッドの主張のうち、私が最も関心のあるのは、世界人口は均衡に向かうという主張である。イスラムの信者数は11億人といわれ、世界人口の約6分の1を占める。イスラム教徒(ムスリム)は、人口増加の著しいアジア、アフリカに多く存在する。イスラム諸国における人口動態は、世界人口の動向を大きく左右する。それゆえ、トッドの人口論を見るうえで、イスラム論は重要である。

 トッドは、世界的なベストセラー「帝国以後」の5年後、イスラム圏の人口動態の研究者ユセフ・クルバージュとともに、「文明の接近――『イスラームVS西洋』の虚構」を出版した。本書の題名「文明の接近(ランデブー)」は、明らかにハンチントンの「文明の衝突」への反論である。題名にある「接近」という言葉は、「ランデブー(rendez-vous)」の訳語である。ランデブーは、「会う約束」や「約束による会合」を意味する。単なる近づきや出会いではなく、双方に集合する意思があり、会って対話したり、共同の行為をするのが、ランデブーである。
 本書は、「イスラームVS西洋の虚構」という副題の通り、「帝国以後」における主張を、イスラム諸国と西洋諸国の関係を中心に展開したものである。イスラム論が主だが、それをもとに、世界人類の将来についても見解を明らかにしている。
 基本的な主張は、「帝国以後」と同じである。イスラムは「近代化をはねつける宗教」ではなく、イスラム原理主義は「本質的な敵対性の表現」ではない。「『文明の衝突』は起こらないだろう。それどころか、社会と歴史の底流を示す指標を検討するなら、『文明の接近』の観念が浮かび上がってくるのである」と、トッドは言う。
 トッドは、本書で「近代性とは西洋固有の事柄であるとする一種西洋主義的イデオロギーともいうべきもの」と闘う姿勢を明らかにし、「イスラム諸国とキリスト教系の諸国との間に存在する差異は、本質的な、本性上の違いではなく、時間的ずれに由来する差異である」ことを示そうと努めている。そして、「イスラム圏は現在、人口学的・文化的・心性的革命に突入しているが、その革命こそ、かつて今日の最先端地域の発展を可能にしたものに他ならない。イスラム圏もそれなりに、世界史の集合点に向かって歩みを続けている」と言う。
 この「世界史の集合点」に向かって歩むことが、文明の「ランデブー」、接近ということだろう。

●イスラム諸国も近代化で安定した社会になる

 トッドは、文化や宗教の違いよりも、人類の普遍性に重点を置く。文化や宗教に関わらず、どの社会も近代化する。キリスト教が近代化を妨げなかったように、イスラムも近代化を妨げるものではないことを、トッドは本書で論述する。トッドによると、トッドは、イスラム文明と西洋文明は、本質的に対立関係にあるのではなく、イスラム諸国において現在起こっていることは、かつてヨーロッパ諸国で起こった近代化の過程における危機と同じ現象である。すなわち、17世紀のイギリス、18世紀のフランス、20世紀のロシアなどと同じようなパターンが、今日イスラム諸国で繰り返されていると見るのである。
 イングランド、フランス、ロシアについては、トッドは、具体的に次のように書いている。
 「1649年、イングランドのピューリタン革命は、クロムウエルの軍事独裁の下で国王を斬首するに至る。フランス革命に先立つこと1世紀のことである。識字化と革命の進行過程を結合させることを発見した歴史家、ローレンス・ストーンが指摘しているように、当時イングランドは、過半数の識字化のハードルを越えたばかりであった。
 1730年頃、パリ盆地では、20歳から24歳の男性の過半数は読み書きが出来た。1770年頃、フランス北部小都市で出生率が下がり始める。そして1789年に、イデオロギー的・政治的危機が開始し、それは(1891年に)第3共和国として安定化するまで継続する。
 ロシアも、識字化と避妊が組み合わさる類似的進行過程を見せている。男性の半数の識字化のハードルは、1900年頃に越えられ、ツアーリ政体(帝政ロシア)の崩壊は、1917年に生起する。女性の過半数の識字化は、1920年頃始まる出生率の低下に道を開くが、それだけでなく、スターリニズムという革命の再躍進への道も開くのである。これは10月革命とそれに続いて起こった内戦よりもはるかに多くの死者を出すことになる。集団化、強制労働と強制収容所の全般化は、ロシアにとって、新たな革命の試練に他ならなかったのである」

 トッドは、こうした諸国において見られる移行期の危機のパターンが、今日イスラム諸国で繰り返されていると見る。これに対し、たとえばイラン革命について、欧米人の多くは、異教徒による前近代的な宗教的熱狂であって、欧米における革命とは違うものと見る。
 しかし、トッドは、次のように言う。「1640年のイングランド革命は、プロテスタント宗教改革から生まれたものであって、神の名において君主制の打倒に至った点は、イランと同じだからである。イラン革命は一方では、その平等主義的側面からして、フランス革命およびロシア革命のいとこにあたる。イングランド革命の方は、平等の観念を撥ね付けた。救済の可能性の平等を信じないプロテスタントは、普遍的人間の観念を基本的前提とすることはなかったのである」と。
 トッドは、イスラム諸国は、現在その最中にある人口学的な危機を乗り越えれば、近代的社会になっていくとし、詳細にデータを上げて論証している。そして、近代化の進行によって、個人の意識やデモクラシーが発達し、やがて安定した社会になると予想する。

 次回に続く。


天皇陛下のDVDが全国学校へ

2009-09-11 17:06:35 | 皇室
 天皇陛下御即位二十年奉祝事業として、「天皇陛下 御即位から二十年」と題するDVDが刊行された。早速拝見したが、御即位から本年までの天皇・皇后両陛下のあゆみが映像でまとめられており、素晴らしい内容である。
 このDVDは、内閣府が制作し、文部科学省が各県市町村の教育委員会に、所管する学校の数の本数を送っているという。全国の学校でこのDVDが映写され、多くの小学生・中学生・高校生が視聴できるよう、国民の一人として希望する。

 平成18年に教育基本法が改正され、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」と定められた。これに従って、小中学校の新学習指導要領には、総則に「国と郷土を愛する日本人を育成する」という文言が盛り込まれた。
 本年の天皇陛下御即位二十年に際し、内閣府が制作したDVDを学校で青少年に見せることは、こうした法規と教育指針にかなったことであり、教育関係者には、積極的に実行していただきたいと思う。

 なお、DVD「天皇陛下 御即位から二十年」は、政府インターネットテレビのサイトで公開されており、誰でも視聴することができる。一人でも多くの人に見ていただき、周囲の人に広めるとともに、教育委員会や学校に対して、映写の実施を要望していただくと良いと思う。
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg2682.html
 また、内閣府のホームページには、天皇陛下御在位20年慶祝行事の案内が載っており、「皇室チャンネル」の映像も案内されているので、併せてご紹介する。
http://www.kantei.go.jp/jp/gozaii20/index.html

新政権に関する世論調査

2009-09-09 09:26:18 | 時事
 衆議院議員総選挙後、10日目となった。政権交代が現実のものとなり、民主党を中心とした新政権の発足準備が進められている。

 今回の選挙で、国民はどう考え、日本の政治に何を求めているのか。
 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が実施した合同世論調査の結果が、8日の産経の紙面に載った。興味深い内容なので、クリップしておく。同日の社説「主張」も関連した記事なので、併せて転載する。
  
 NHKは、総合テレビで、10月3日(土)20:00から「日本の、これから 新政権に問う」という番組を行うという。アンケートの協力依頼が来たので、回答を送ってみた。時宜を得た企画だと思う。
http://www.nhk.or.jp/korekara/

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●産経新聞 平成21年9月7日号 

http://sankei.jp.msn.com/politics/election/090907/elc0909071135003-n1.htm
【産経FNN世論調査】鳩山次期首相に「期待」63・8%、勝因は「自公への批判」5割超
2009.9.7 11:35

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が5、6両日に実施した合同世論調査で、次期首相となる見込みの鳩山由紀夫民主党代表に「期待する」は63・8%で、「期待しない」の31・6%を大きく上回った。ただ、民主党の勝因を「自民、公明両党の政策や政治姿勢への批判」とした人が52・8%と過半数に達し、「民主党の政権公約への期待」(29・2%)を大きく上回った。民主党への評価が定まっていないことを浮き彫りにした。
 今回の衆院選の結果に「満足している」のは60・0%と過半数を占める一方で、「民主党の議席は多すぎる」も66・0%。鳩山氏と幹事長就任予定の小沢一郎代表代行が政治献金問題で説明責任を果たしていないと考える人は76・3%に上った。民主党と社民、国民新両党との連立政権協議にも「期待できない」との声が47・8%に達した。
 新政権に期待する政策では、「財政のムダづかい見直し」が30・6%で最多だった。これに「医療・年金など社会保障」(22・6%)、「景気対策」(20・8%)が続いた。
 実現すべき政策は「政治と官僚の関係の見直し」と「予算の編成や執行の見直し」がともに87%台と高率で、注目の「子ども手当の給付」は58・0%を上回った。逆に「インド洋の海上自衛隊の撤収」(36・4%)と「高速道路の原則無料化」(26・1%)はいずれも低く、慎重論の方が多かった。
 自民党については、敗因を「麻生首相の判断や言動」(29・5%)と「党の実績への評価」(28・9%)とした回答が多かった。また「国会の首相指名の前に新総裁を決めるべきだ」が55・1%、「世代交代を進めるべきだ」が85・1%。ただ、自民党が「いずれ与党に復帰すると思う」と答えた人も68・1%に達した。
 政党支持率は民主党が3・7ポイント増の39・7%。自民党は7・6ポイント減の18・5%。「与野党の政治家のうち首相に一番ふさわしいのは」との質問では、鳩山氏が22・6%で首位。舛添要一厚生労働相が13・1%で続いた。

【産経FNN世論調査】「政権交代の声、きちんと受け止める」河村官房長官
2009.9.7 11:57

 河村建夫官房長官は7日午前の記者会見で、産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が週末に実施した世論調査で、民主党政権への期待が大きいことについて「『一度政権交代を』という国民の気持ちを謙虚に受け止めなければならない」と述べた。
 河村氏は「(自民党に対しては)野党としてのチェック機能をしっかり果たせという声もある。健全野党としてきちんと注視していきたい」とも語った。

●産経新聞 平成21年9月8日号 

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090908/plc0909080254000-n1.htm
【主張】新政権人事 国づくり提示こそ先決だ
2009.9.8 02:53

 民主党の鳩山由紀夫代表は国家戦略局の担当相に菅直人代表代行を起用し、外相に岡田克也幹事長をあてるなど「鳩山内閣」の骨格を固めた。
 首相直属の組織として新設する国家戦略局は、官僚主導から政治家主導への移行を訴える民主党の公約の目玉だ。外交戦略や予算の基本方針の策定など政権の頭脳となる組織で、国家統治の新たな試みとして注目される。
 だが、新政権がこの組織でどんな国づくりを目指すのか、肝心の中身がいまだに示されていない。新組織の始動にあたり、首相となる鳩山氏が自らの国家ビジョンを提示することが先決だ。
 民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)は、政権交代の必要性や官僚依存政治からの脱却の重要性を強調するとともに、子ども手当など内政上の個別政策を多数盛り込んだ。だが、この国がとるべき針路についての記述らしいものはほとんどなかった。党としてどんな国づくりを目指すのか、政権発足までに確立すべきだ。
 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査によると、衆院選での民主党の勝因について「与党の政策や政治姿勢への批判」を挙げた人が5割を超え、「民主党の政権公約への期待」(29・2%)や「鳩山代表への期待」(6・3%)を大きく上回った。全体として民主党政権への期待は大きいが、政策面の評価は定まっていないことを鳩山氏らは認識すべきだろう。
 党幹事長に小沢一郎代表代行を起用したのに続き、政府側の核となる戦略局の責任者に、厚相や党代表などの経験を重ねた菅氏をあて、重鎮2人の手腕に期待する形となる。鳩山氏が両氏を指揮し、政権運営に全責任を負う形をはっきりさせることが重要だ。
 外相に起用される岡田氏は、日米同盟の重要性を認める一方、同盟の範囲を限定的にとらえる考え方で、国際社会の平和と安定に日米が協力することには否定的だ。日本と南北朝鮮を完全非核地帯化し、米国に核先制不使用宣言を求める考えも提起してきた。北朝鮮の核・ミサイルの現実の脅威にこれで対応できるのか。
 鳩山氏は先のオバマ米大統領との電話会談で、日米安保体制の堅持で一致した。岡田氏はこの方針に沿って、同盟の維持・強化に努める責務がある。国益を阻害しかねない持論は封印すべきだ。
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悠仁様のお誕生日に皇室を思う

2009-09-06 11:05:11 | 皇室
 本日は、悠仁親王殿下のお誕生日である。悠仁様はこのたび3歳になられた。国民の一人としてお祝い申し上げるとともに、健やかなご成長をお祈りしたい。
 平成18年9月6日に、悠仁様は誕生された。皇室に男子が生まれたのは、41年ぶりのことだった。この年のはじめ、愛子様を天皇にという女性天皇・女系天皇容認論が広がり、小泉政権は皇室典範の改正を行おうとしていた。しかし、秋篠宮紀子様がご懐妊されたことにより、その動きは抑えられた。そして、男子が誕生されたことにより、女帝・女系容認論はひとまず収まった。

●皇室の伝統は男系男子による皇位継承

 わが国の国柄は、皇室を国家の中心に戴くことを特徴とする。現行憲法は、第1章第1条に、天皇を「日本国の象徴」「日本国民統合の象徴」と規定している。皇室の伝統は、皇位を男系で継承することである。基本は男系の男子による継承である。男系女子が皇位についた事例は、歴史上にある。それは、男系男子による皇位継承を維持するための方策であった。
 しかし、もし今日、皇室典範を改正し、女性の天皇を可能とした場合、男系男子の継承が準備されていなければ、重大な問題に直面する。もし女性天皇の結婚を許可し、女性天皇が子供を生み、その子供が天皇になるならば、その子供は女系の天皇となる。
 女系の天皇は、従来の皇統とは別の存在となる。一般には女系と呼ぶものの、正確に言えば、父方の系統の天皇となるからである。これは、王朝の交代を意味する。父方が佐藤家であれば佐藤王朝、鈴木家であれば鈴木王朝に移ることになる。王朝の交代は、皇統の断絶である。それゆえ、女系継承は、皇室の伝統を断ちきり、わが国の国柄を改変するものとなる。皇室の存続のためには女帝・女系継承やむなしという議論に、まどわされてはならない。

●将来を見越した制度の整備を

 悠仁様のお誕生は、こうした危険な道にわが国が進む動きを制した。悠仁様のお誕生により、皇太子殿下・秋篠宮殿下に続く世代の男系男子がお一人いらっしゃることになった。今後、皇太子殿下・同妃殿下に男子が誕生されなければ、やがて悠仁様が皇位を継承することになるだろう。それは30~40年後のことだろう。
 悠仁様のお誕生によって得られた時間を、日本の伝統の保守のために、生かさねばならない。皇太子殿下に男子が誕生される可能性は残されているが、今のままであれば、やがて悠仁様が天皇の御位に就く時が来るだろう。おそらく30~40年先ではないか。
 その時、いわゆる天皇家以外の宮家はほとんど消滅し、皇族の数もごく少なくなっている可能性が高い。だから、悠仁様が天皇になられたとしても、いずれ皇統の維持は困難になる。それゆえ、将来を見越して、皇室が繁栄し、皇位が男系男子によって安定的に継承されるように、いまから制度を整えなければならない。これは国家根幹に関る重大な課題である。
 具体的には、戦後GHQの指令により臣籍降下した旧宮家に皇族に復帰していただく、絶家となる宮家が養子を取ることを可能にする、あるいは、そうした宮家は祭祀のみを継承する等の方法が提案されている。今後、国民の英知を集めて、皇室の維持・繁栄を確かなものにする必要がある。

●天皇陛下御即位20年を好機として

 もしわが国が万が一、皇室を失うことになれば、日本人に受け継がれてきた日本精神はますます消失し、日本は本来の日本でなくなってしまうだろう。
 本年は、天皇陛下御即位20年の年である。全国各地で、御即位20年を奉祝する活動が行われている。その奉祝活動の頂点として、11月12日に、皇居前広場で、国民祭典が行われる。当日は、インターネットで全国に式典の模様が実況配信される予定だという。
 わが国の国柄と伝統に対する国民の関心を高め、理解を深める好機である。御即位20年という意義ある本年を機に、男系男子による皇位の安定的な継承を確実なものとするため、具体的な方法の策定・実現を推し進めていくべきだと思う。

・関連掲示
拙稿「皇位継承問題~男系継承への努力を」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion05b.htm

トッドの人口学・国際論8

2009-09-05 08:45:56 | 文明
●イスラムの暴力は鎮静化する

 ハンチントンに対して、トッドは、前記のような誤解に立ちながらも、強く批判的である。トッドは、イスラム・アラブ諸国の闘争性やイスラム・テロリストの暴力性は、イスラムの教えによるのではなく、イスラム諸国が近代化の過程における「移行期の危機」にあるからだと言う。今日、それらの諸国は、イギリス革命、フランス革命、日本の明治維新、ロシア革命の時期と同じような人口学的危機に達しつつあるとトッドは指摘する。そして、トッドは、イスラム原理主義を「移行期の危機」におけるイデオロギーと解釈する。そして、次のように言う。「アラーの名において行なわれるジハード(註 聖戦)は、移行期の危機を体現しているのである。暴力、宗教的熱狂は、一時的なものにすぎない」。

 トッドは、識字化と出生調節の普及という二つの要素から、イスラム諸国では近代化が進みつつあるととらえる。
 識字化について、トッドは、次のように言う。「多くのイスラム国が大規模な移行を敢行しつつあるのだ。読み書きを知らない世界の平穏な心性的慣習生活から抜け出して、全世界的な識字化によって定義されるもう一つの安定した世界の方へと歩んでいるのである」と言う。
 「全世界的な識字化」とは、識字率の上昇が全世界的に進んでいるということであり、その構図の中で、イスラム諸国での識字化をとらえるものである。教育の発達が、識字率を上昇させる。それによって個人としての自覚が生まれ、政治的社会的運動が起こる。
 出生調節については、次のように言う。「識字化によって個人としての自覚に至った女性は出生調節を行なうようになる。その結果、イスラム圏でも出生率の低下が進行し、それはアラブ的大家族を実質的に掘り崩す」「今日アラブ・イスラム圏は最後の足掻きのように西欧との差異を劇的に強調してみせる。特に女性の地位について強調するが、現実にはイランやアラブ圏の女性は出生調節によって解放されつつあるのだ」と。
 アラブ的大家族は、内婚制共同体家族という家族型である。この家族型は、共同体家族の類型だが、親の権威は形式的である。また外婚制ではいとこ婚が禁止されるが、内婚制では父方平行いとこ(兄と弟の子供同士)の結婚が優先される。女性の識字化と出生率の低下は、そうした伝統的な家族構造に変化を起こしつつある。

 トッドは、イスラム諸国のうち、特にイランに注目する。イランは、イスラム原理主義が高揚した地であり、1979年(昭和54年)のイラン革命によって反米化した。現在も、世界的な反米運動を唱導する国の一つとなっている。
 イランの識字率は、革命後の1980年に51%だったが、2000年には77%に上昇した。トッドは言う。「当初においてイランの大衆を運動に駆り立てたのは、すでに高い水準に達していた識字率なのであり、それが第2段階に入ると国全体を一般的な心性の近代化に引き込んだのである。出生率の低下は、アヤトラ・ホメイニの政権奪取の直後に起こっている」
 トッドは、イランは近代化しつつあるのだと見る。あるインタビューでは「イランはかつてのアメリカ合衆国と同様に、宗教的母胎から生まれる民主制の誕生を経験することになるだろう。イスラムの一派であるシーア主義は、反抗と論争という価値観を持っているが、それがアメリカのデモクラシーの源泉となったプロテスタンティズムと同じ役回りを果たすことになるだろう」と語っている。

 トッドは、こうしてイスラム諸国は現在、「移行期の危機」にあるのであり、この局面が終わると、危機は鎮静化すると見ているのである。
 「帝国以後」は、副題が「アメリカ・システムの崩壊」となっており、アメリカ論を中心としている。イスラムについての記述は少ない。しかし、今日及び将来の世界を論じる上で、イスラム文明の考察は重要である。トッドは、「帝国以後」の5年後、イスラム諸国に焦点を合わせた続編を出版した。次にその書「文明の接近――『イスラームVS西洋』の虚構」(藤原書店)をもとに、イスラム論を中心としたのトッドの人類文明論を見ていこう。

 次回に続く。