ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

外国人参政権付与と地域主権4

2009-09-23 08:43:18 | 時事
●300の小集団に日本を分割

 わが国は明治維新において廃藩置県を断行し、それまで276あった藩を廃止し、中央政府の下に県を置く中央集権国家を建設した。それ以来、わが国は一貫して中央集権体制を誇ってきた。今日その中央集権が行き過ぎ、さまざまな弊害が出ている。そこで地方分権が必要となっているのだが、民主党は単なる行き過ぎの是正ではなく、根本から統治機構を変えようとしている。それが「地域主権国家」への変換である。基礎的自治体の数は300程度にするというのだから、幕藩体制のときの藩の数にほぼ等しい。廃藩置県を元に戻し「廃県置藩」(神保哲生氏)を行うとしていると見方もある。
 地域主権国家への改造の過程は、次のように構想されている。
 政権獲得後、3年程度の準備期間を経て、「第2次平成の合併」を行い、現在ようやく約1800程度になっている基礎的自治体を、700~800程度に減らす。さらに約10年かけて、全国で約300、人口30万人程度の基礎的自治体に集約する。
 基礎的自治体が担えない事業は、当面は広域自治体(都道府県)が担い、広域自治体が担えない事業は国が担う。これを「補完性の原理」と呼び、徹底するという。「補完性の原理」は、ヨーロッパでEUが採用している原理である。中央政府の権限と同時に、現在都道府県が持つ権限の多くも、財源とセットで徐々に基礎的自治体に委譲し、5~10年後には都道府県の役割は現在の半分から3分の1程度に縮小させる。さらに、将来的には都道府県をなくすという。こうして、わが国は「地域主権国家」と呼ばれる国家に改造されていく。

●「地域主権国家」は日本の分解・分裂の道

 私は、この構想には反対である。中央集権の行きすぎを是正し、地方分権を行うことは必要である。一定の権限と財源を移譲し、地方の活性化を図るべきである。しかし、地域主権を実現し、日本を地域主権国家に変えるという民主党の計画は、やりすぎである。
 民主党は地域的な組織に与える権限を、主権と呼ぶ。これは、従来の主権の概念とは、異なる。近代国際社会における国家の主権とは、一国の政府が他の国に対して持つ自立的な統治権である。これは国家の独立を保持するために、不可欠の権限である。また、近代国家内部における主権とは、領土・国民に対する最高の権限である。これは国家の統一を保持するために、不可欠の権限である。こうした主権を地方に移譲することは、主権の分散である。
 主権の分散の結果、政府と地方自治体は「対等・協力の関係」に改められる。だとすると、政府の権限と自治体の権限が、対等だということになる。しかし、そのような権限を主権と呼ぶことはおかしい。主権とは、国内においては領土・国民に対する最高の権限ゆえ、主権を持つものは他より上の権限を持つ。もし自治体の持つ権限こそが主権だとすれば、政府はその自治体に対して主権を持たない。300ある自治体がそれぞれ主権を持つとすれば、政府は各自治体に対して主権を持たない。政府は自治体に対して対等ではありえず、政府の権限は、その地域については、自治体の権限より下になる。そのような政府は、独立主権国家の政府ではない。それゆえ、地域主権の実現は、独立主権国家を否定することになる。
 一般には、一国の内部において、地方組織が中央政府に対して主権を主張するのは、独立を宣言したときである。独立運動は多くの場合、紛争となる。独立運動をする側は外国から支援を受けたり、外国が内紛に介入したりすることが多い。民主党による主権の分散は、地方組織が主権を求めて、独立しようとするのではない。中央政府が合法的に日本を小規模な自治体に分割して、それぞれが半独立の状態になるように強制するものである。これは日本の分解である。
 民主党の構想のままに、わが国が「地域主権国家」となったならば、日本は、権限を極度に縮小された政府と、強大化した自治体が、対等・協力の関係になっている。一国を統率する首相と、300の自治体の首長が、対等の立場でものを言うのだから、国家としての意思統一は困難になる。そうした自治体のいくつかが、国家全体の利益よりも自己の自治体の利益のために、他国の政府と連携する事態もありうる。他国が日本への介入ないし圧力に、地方自治体を利用する事態もありうる。こうした事態は、日本の分裂を招くだろう。

 次回に続く。