ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

中国は尖閣での武力衝突を回避し南シナ海に集中?

2015-10-29 10:08:02 | 時事
 中国人民解放軍の上将で、習近平国家主席の側近として知られる国防大学政治委員の劉亜州氏が最近、共産党機関紙、人民日報が運営する人民ネットなどで発表した日中関係に関する論文が注目を集めていると報じられている。
 劉氏は、「中国は武力衝突を極力避けるべきだ」と主張。尖閣諸島周辺の海域で中国が日本と武力衝突すれば、「中国は勝つ以外に選択肢はなく、退路はない」と強調し、「敗北すれば、国際問題が国内問題になる可能性がある」として、現在の共産党一党独裁体制を揺るがす事態に発展しかねないとの危機感を示している。劉氏は一方で、武力衝突で日本が負けても、尖閣諸島の実効支配の主導権を中国に渡すだけで実質的損失はほとんどないと見ているという。この論文について、二正面作戦を避け、南シナ海に集中したい習指導部の考えを反映している可能性もあるという見方も伝えられている。
 その記事には書いていないが、9月19日に成立した平和安全法制整備法の効果かもしれない。わが国が集団的自衛権の限定的行使を行えるようにし、日米同盟が強化されたことによって、こうした主張が出てきた可能性がある。
 習指導部が東シナ海・南シナ海の二正面作戦を避けて後者に集中したいという考えを持っているとすれば、その野望を挫き得るかどうかは、オバマ大統領が南シナ海で米軍を動かすかどうかにかかっている。
 こうしたなか、ようやく米海軍は10月27日、横須賀基地所属のイージス駆逐艦「ラッセン」を、南シナ海のスプラトリー諸島で中国が建設している人工島の12カイリ内に派遣した。12カイリ内への派遣は「航行の自由作戦」という。この作戦の実行は、人工島と周辺海域を中国の「領土、領海」とは認めないという米国の姿勢を示威行動で示し、強く牽制するものである。これが一回限りでなく継続的に行われ、さらにわが国、オーストラリア、フィリピン、ベトナム、シンガポール等による合同海洋パトロールが行われるようになれば、中国の覇権主義的な行動を一層効果的に抑止するものとなるだろう。
 以下は、関連する報道記事。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●産経新聞 平成27年10月22日

http://www.sankei.com/world/news/151022/wor1510220036-n1.html
2015.10.22 20:30更新
「中国は武力衝突避けるべき」習主席側近の論文が波紋 尖閣めぐり日中衝突すれば「中国に退路はない」

 【北京=矢板明夫】中国人民解放軍の上将で、習近平国家主席の側近として知られる国防大学政治委員の劉亜州氏が最近、共産党機関紙、人民日報が運営する人民ネットなどで発表した日中関係に関する論文で「中国は武力衝突を極力避けるべきだ」と主張し、中国国内で波紋を広げている。専門家の間では「習政権が従来の対日強硬策を改めた兆しかもしれない」との見方が浮上している。
 劉氏は論文の中で、近年の日中関係の悪化について「北東アジアだけの問題ではなく、米国が裏で糸を引いている」との認識を示した。その上で、安倍晋三首相を「日本の右翼勢力」と決めつけ、「中国との対立を深めることを通じ、憲法改正につなげようとしている」と推測した。
 尖閣諸島(沖縄県石垣市)の現状について、劉氏は「1980年代までのような、日本による単独支配の状況でなくなった」と主張。同海域で中国が日本と武力衝突すれば、「中国は勝つ以外に選択肢はなく、退路はない」と強調した。さらに「敗北すれば、国際問題が国内問題になる可能性がある」とし、現在の共産党一党独裁体制を揺るがす事態に発展しかねないとの危機感を示した。
 劉氏は一方で、武力衝突で日本が負けても、尖閣諸島の実効支配の主導権を中国に渡すだけで実質的損失はほとんどないとした。
 劉氏は日本と対抗するために「まず米国との関係を改善すべきで、韓国や台湾とも連携しなければならない」と主張する一方、日本国内の「平和勢力」と提携する必要性にも言及した。
 2012年に発足した習近平政権は当初、「領土問題で妥協することは絶対にない」と繰り返し強調し、尖閣諸島を念頭に「戦争の準備をせよ」との通達を全軍に出したこともあった。しかし、昨年から南シナ海で東南アジア諸国や米国との対立が先鋭化して以降、中国要人が尖閣問題に言及することが少なくなった。
 北京の共産党関係者は論文について「二正面作戦を避け、南シナ海に集中したい習指導部の考えを反映している可能性もある」と指摘した。

●産経新聞 平成27年10月21日

http://www.sankei.com/column/news/151021/clm1510210009-n1.html
2015.10.21 11:00更新
【湯浅博の世界読解】
「南シナ」で後れとれば米は失墜

 米海軍の艦船と航空機はいつ、中国がつくる南シナ海の人工島周辺12カイリ以内に入るのか。今月9日付の英紙フィナンシャル・タイムズが、米艦船は中国が領有権を主張している海域に「2週間以内に入る」と報じて以来、沿岸国の緊張が続いている。
 ちょうど先週末からは、インド洋で日米印の3カ国海軍が軍事演習を展開した。3カ国は19日まで、艦艇や航空機を使って敵の潜水艦を追跡する訓練を行った。3カ国の海軍幹部は記者団に、特定の国名を避けながら「世界中で『航行の自由』を確保するのが狙いだ」と説明した。
 米国による南シナ海への兵力投入は、文字通り「航行の自由」作戦と呼ばれ、幹部らの発言は中国が念頭にあることを示す。中国は南シナ海でいくつもの岩礁を埋め立て、3千メートル級の滑走路を持つ人工島を出現させている。
 南シナ海は資源が豊富な上に、世界の海上貿易の半分が通過する。習近平国家主席は中国が南シナ海を一度も支配したことがないのに、先の米中首脳会談で「南シナ海の島々は古代から中国の領土だった」と他国の関与を退けた。
 中国は南シナ海から中東湾岸へ抜けるインド洋でも、脅威を振りまく。インドのモディ政権は、中国が沿岸国に「一帯一路」を名目に、経済援助で近隣国に影響力を増していることに不満を抱く。中国からの投資は歓迎でも、ユーラシア地域で彼らが突出することは望まない。
 フィナンシャル・タイムズ紙は、「インドにとって、中国の欧州に向けたシルクロード再開や、インド洋への進出はインド包囲網に感じられる」のだと指摘する。
 すでに中印は1962年に軍事衝突しており、昨年はヒマラヤの国境付近で2千人の陸軍兵力が対峙(たいじ)した。にらみ合いは、習近平主席の訪印とほぼ同時に発生している。モディ首相が昨年、日本を訪れた際に、暗に中国を指して「拡張主義的な志向」を非難したのもうなずける。
 中国の地域的な野望が、モディ政権をして「インド太平洋戦略」へと押しやり「対米軸足移動」につながっているという。さらに、非同盟国家だったインドは、日豪やベトナム、フィリピン、インドネシアなどとの新たな関係強化も模索している。
 オバマ米大統領は米中衝突を過度に恐れるあまり、口で「アジア回帰」を語りながら、沿岸国の期待に応えてこなかった。中国にためらうあまり、常態の航行であるべき「航行の自由」を議論の的にしてしまった。米国内には、日本とオーストラリア、フィリピン、ベトナム、シンガポールからなる合同海洋パトロールをすべきだとの声があがる。これにインドが参加する可能性もでてきた。
 しかし、オバマ政権はそれを待つことなく現状の決定を実行すべきであろう。とかく弱腰を非難される同政権は、ウクライナやシリアへの対処でも後れをとった。習主席訪米前に「サイバー乱用で中国に制裁する」と言ったがやらず、相互に企業秘密を搾取しないとの合意にとどまった。
 南シナ海で「航行の自由」作戦が不発に終われば、中国やロシアが一挙に拡張主義を加速させ、逆にアジア沿岸国の失望が重なる。米国の失墜は世界に拡散して、世界は指導国のない「Gゼロ」のまま新しい冷戦を迎えよう。(東京特派員)

●産経新聞 平成27年10月27日

http://www.sankei.com/world/news/151027/wor1510270031-n1.html
2015.10.27 12:45更新
米海軍、イージス艦「ラッセン」を南シナ海・人工島12カイリ内に派遣 中国は猛反発「軽挙妄動すべきでない」

 【ワシントン=青木伸行】米国防当局者は26日(米東部時間)、米海軍が横須賀基地所属のイージス駆逐艦「ラッセン」を、南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で中国が建設している人工島の12カイリ(約22キロ)内に26日夜(日本時間27日午前)、派遣したことを明らかにした。複数の米メディアなどが報じた。中国は強く反発しており、緊張が高まることは必至だ。
 12カイリ内への派遣は「航行の自由作戦」と名付けられ、米CNNテレビによると、当局者は作戦が完了したとしている。ラッセンの哨戒行動は、日米関係筋も確認した。
 ロイター通信は、哨戒機P8AとP3が同行した可能性にも言及しており、そうであれば12カイリ内の上空での飛行活動も実施されたことになる。
 ラッセンなどの派遣先は、滑走路の建設が進むスービ(渚碧)礁とミスチーフ(美済)礁としている。
 国防総省によると、中国が実効支配する岩礁の12カイリ内における米軍の活動は、2012年以来。人工島の造成後は初めてで、12カイリ内での航行は、人工島と周辺海域を中国の「領土、領海」とは認めないという米国の姿勢を示威行動で示し、強く牽制(けんせい)するものだ。
 これに先立ち国防総省のデービス報道部長は26日の記者会見で、「海洋権益を過度に主張する国(中国)に対抗する」と強調し、スプラトリー諸島周辺海域での米軍の活動について、中国へ通告する義務はないとの認識を示していた。
 カーター国防長官もこれまでに「米軍は航行の自由を確保するため、世界のあらゆる場所で活動し、南シナ海も例外ではない」と、派遣をためらわない考えを示していた。
 国防総省は5月ごろから12カイリ内での航行を検討しオバマ大統領に進言。オバマ氏は自制してきたが、今月に入り承認し、中国を除く関係各国に派遣方針を伝達していた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

最新の画像もっと見る

コメントを投稿