ほそかわ・かずひこの BLOG

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インド63~シャクティ派、タントリズム

2020-03-24 09:26:58 | 心と宗教
●シャクティ派

 シヴァ宗における神妃パールヴァティー、ドゥルガー、カーリー等は、シャクティとも呼ばれる。シャクティは、サンスクリット語で、「能力」や「創造力」を意味する。この語は、ヒンドゥー教では、世界を維持する最高神の活動力を意味し、同時に女性的な力、性力、特に生殖力を意味する。シヴァ神妃の信仰は次第に盛んになり、独立した地位を得るようになり、シヴァ宗から独立して、7世紀までにシャクティ派が成立した。シャークタともいう。わが国では、しばしば性力派と訳す。
 シャクティ派は、最高神である男性神シヴァよりもその神妃を重んじ、それを至高の存在として崇める。彼らは、女性の持つ産む力を神格化し、それを擬人化して崇拝する。特にドゥルガーとカーリーを崇拝する。ドゥルガーとカーリーは、女神シャクティとも呼ばれる。
 シャクティ派において、シヴァはブラフマンと同一であり、瞑想するのみで全く活動せず、活動するのは神妃であるとする。すべての活動力であるシャクティは女性原理であり、かつ原動力である。その女性的な原理・原動力によって、一切万有が生み出されている。世界はこの力の展開に過ぎないとされる。
 非活動的なシヴァと活動的なシャクティという対の観念には、サーンキヤ学派における精神原理プルシャと物質原理プラクリティの思想の影響が顕著である。瞑想中で何も活動しないシヴァはプルシャ、活動的で生産的なシャクティはプラクリティに相当する。
 シャクティ派は、『ウパニシャッド』や初期仏教のように欲望を否定することなく、現世を肯定する。また、カースト制を否定し、女性やすべての階級の者に、誰もが解脱できるという可能性を示した。
 シャクティ派は、中世のインド(8世紀から19世紀)で、ヴィシュヌ宗・シヴァ宗に対しても、また仏教に対しても影響を与えた。シャクティ派では、宇宙と人間には大宇宙と小宇宙という対応関係があると考える。修行者は、生前解脱を目指して大宇宙との一体化を図り、また神通力を得るために特殊な行法を行った。行法は秘儀とされ、複雑なマントラや性的な象徴性のあるマンダラが発達した。
 仏教の密教化には、シャクティ派の影響が認められる。仏が妃を持つようになったのは、その影響の一つである。密教では三密行を実践することで、自己と大日如来が一体化する境地を目指す。また、真言や曼荼羅が発達した。これらは、密教とシャクティ派との類似点である。
 シャクティ派が7世紀までに形成されとき、タントラと呼ばれる経典群が成立していた。タントラは、「枠組み」「教義」を意味する言葉である。その名称を以って、シャクティ派は、しばしばタントリズムとも呼ばれる。

●タントリズム

 タントラ経典を奉じるインドの宗教諸集団を、欧米人はタントリズムと総称した。タントラ経典の思想は、基本的には梵我一如、神人合一である。その点では、『ウパニシャッド』やヴェーダーンタ哲学と共通する。それらと区別してタントリズムと称されるのは、それらの諸集団が呪術的・神秘主義的な傾向を強く示し、また、現世の快楽や性愛を積極的に肯定することによる。
 タントリズムは、7~8世紀以降に南インドで広がりはじめ、9~12世紀には、ヴィシュヌ宗、シヴァ宗に大きな影響を与えた。タントリズムは、主にシャクティ派を指すが、ヴィシュヌ宗、シヴァ宗にもタントリズムとみなされる集団がある。わが国ではタントリズムをタントラ教と訳すことがあるが、特定の宗教・宗派を指すものではない。
タントリズムは、仏教にも影響を与えた。インドの密教やチベット仏教もタントラ思想を取り入れている。仏教への影響については、後期密教の項目に書いた。
 また、ハタ・ヨーガにも影響を与えている。ハタ・ヨーガでは、人間に内在する根源的な生命エネルギーをクンダリニーと呼ぶ。詳しくはハタ・ヨーガの項目に書いたが、クンダリニーはシャクティとも呼ばれ、シャクティはシヴァ妃である女神の名前ともなっている。ハタ・ヨーガは、人体において、男神シヴァと女神シャクティの合体を目指す行法である。ここには、シャクティ派とタントリズムの影響が認められる。呪術的・神秘主義的性格が強く、また現世の快楽や性愛を積極的に肯定する。

 次回に続く。

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