ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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集団的自衛権は行使すべし17

2008-01-29 19:42:57 | 憲法
●被保護的な旧安保と集団的自衛権への制限

 日米安保条約は、昭和26年(1951)9月8日に締結された。その交渉の過程で、集団的自衛権に関する議論がされた。
 昭和26年7月、アメリカ側は、「極東における国際の平和と安全の維持」のために駐留米軍が日本の基地を使用できる旨を、安保条約の第1条に挿入するように求めてきた。交渉の結果、条文は、次のように決まった。

 「平和条約(註 講和条約と同じ)及びこの条約の効力発生と同時に、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起こされた日本国における大規模の内乱及び騒擾を鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。」

 ここに「極東における国際の平和と安全の維持に寄与」とある。これが、今日にまでいたる極東条項の起源である。日本国内の基地を使用する米軍は、日本国内およびその付近における武力攻撃の発生に対応するだけでなく、「極東における国際の平和と安全の維持」というより広い地理的範囲において行動することが前提となっている。わが国の側からすれば、必ずしもわが国の防衛には関係しない事態においても、米軍が基地を使用することを認めさせられたということになる。その点で、この条項は、アメリカから押し付けられた条項ということができる。
 また、より大きな問題は、「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起こされた日本国における大規模の内乱及び騒擾を鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助」という部分にある。これは、わが国の治安維持を究極的にはアメリカに委ねるという軍事的な保護―被保護の関係を定めたものである。
 そして最大の問題は、この条約は、わが国には基地を提供する義務はあるが、アメリカには日本を防衛する義務があると明記されていないことである。

 当時のわが国の指導者は、日米安保条約は、旧敵国である戦勝国・占領国との間で、わが国が不利な条件で結ばざるを得なかった不平等条約であることを理解していた。だから、この条約を改正することに心血を注いだ。
 昭和30年(1955)8月、鳩山政権の重光葵(まもる)外相が訪米し、ジョン・フォスター・ダレス国務長官と会談した。訪米の最大の目的は、不平等条約としての安保条約の改定を要請することだった。重光は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛条約(試案)」という安保改定案を準備して、会談に臨んだ。ダレスは、相互防衛条約への改定を求める重光に対し、「憲法がこれを許さなければ意味がない」「自衛力が完備し憲法が改正されて、初めて新事態といえる」と答えた。ダレスは、安保改定の要請を受け入れるには、その前提として、まず日本が憲法を改正し、対等な立場で集団的自衛権を行使できるようにならなければならないと強調したのである。

 昭和32年(1957)年3月、日米安保条約に改定案作成に、当時の外務省条約局長・高橋通敏が携わっていた。高橋らによる改定案は、集団的自衛権について、次のように記していた。
 「憲法9条の解釈上、日本に自衛権があり、その自衛権には国連憲章上、個別的のそれと集団的のそれとがありうるとしても、日本の持ちうる集団的自衛権は、自国の防衛のため他国の助けを借りうるという消極面に限られていると解すべきで、集団的自衛権があるからといって、他国と本格的な相互防衛条約を結んで他国の領域までも防衛するとなすことは(中略)、憲法9条の趣旨をあまりに逸脱した解釈であると考えられる」と。
 この記述は、現行憲法の下で集団的自衛権の行使は可能であるが、行使の範囲は第9条によって制限されるという見解である。また第9条の規定内でわが国の持ちうる集団的自衛権は、「自国の防衛のため他国の助けを借りうるという消極面に限られており、他国と本格的な相互防衛条約を結んで他国の領域までも防衛するという積極的な形での行使はできないとするものである。言い換えれば、わが国は、他から助けを受けるのみで、他を助けることはできないという被保護的な立場にあるということを示すものである。

 私は、ダレスが言ったことは重要だと思う。ただし、彼は、勝者・占領者・保護者の側から課題を指摘している。この課題をを日本人の立場から言えば、わが国が独立主権国家として主権を十全に回復するには、憲法を改正しなければならない。改正によって、国防を整備し、その一環として集団的自衛権の行使が可能であることを明確にする。そのうえで改めて自らの主体的な意思で、外国と相互防衛条約を結ぶ。これが日本の再建と自立の道である。集団的自衛権の問題は、単にその問題だけでなく、わが国の国家主権の問題の一部として重大なのである。この根本課題の実行を避けて、集団的自衛権の行使のみを追及する姑息な仕方は、かえってアメリカへの従属構造を一層深め、固定するおそれがある。この問題状況は、鳩山・重光の時代から、50年以上変わっていない。なぜなら、わが国は、旧敵国アメリカに押し付けられた憲法を一字一句改正せずに、今日に至っているからである。

 次回に続く。


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