ほそかわ・かずひこの BLOG

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キリスト教204~夫婦別姓論とキリスト教(続き)

2019-05-28 09:34:03 | 心と宗教
●夫婦別姓論とキリスト教(続き)

 夫婦別姓が導入されたら、わが国の伝統的な家族主義の最も重要な部分が危うくなる。すなわち、家の墓を守ったり、先祖の供養を行うことがおろそかになるおそれがある。  
 別姓論者は、結婚によって相手の親族との姻族関係の発生をさけたいという考えを持っており、別姓の家庭の多くでは、配偶者の老親介護は考慮されなくなるだろう。
 各種世論調査によると、「老人介護は社会全体で考えるべき問題」と考える人がおよそ3分の2、「老人介護は家族で考えるべき問題」と考える人が3分の1となっている。かつての日本では、老親の世話は家族の役目と考えられていたが、今や3人に2人は社会の問題、つまり国家が面倒を見るべきだと考えているわけである。
 配偶者の老親介護を国家の問題とする考え方では、配偶者の祖先の祭祀は、行われなくなるだろう。生きているときに世話をせずして、どうして死後、祖先を敬う心が出るだろうか。共通の祖先を持ち、儀式を共にすることが、家族や親戚の結びつきを暖かいものにしてきたが、祖先祭祀が行われなくなるとき、人々の心のつながりは一層薄弱なものとなるだろう。
 この点からも、夫婦別姓の導入は、家庭を破壊し、人々の心を傷つけ、社会を混乱に導く危険性が高い。
 2015年(平成27年)12月16日、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は、民法で定めた「夫婦別姓を認めない」とする規定の違憲性が争われた訴訟で、民法の夫婦別姓を認めないとする「規定は合憲」とする初めての判断を示し、原告側の上告を棄却した。
 判決は、憲法第13条の「個人の尊重」は「氏(姓)の変更を強制されない自由」まで保障したものではなく、また第24条の「婚姻の自由」は夫婦別姓の権利まで保障したものではないとして、原告らの主張を退けた。憲法第14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めているが、この「法の下の平等」との関係についても、民法750条は夫婦がいずれの姓を称するかはその「協議」に委ねており、「文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではない」ことを理由に、夫婦同姓制は違憲ではないとした。
 これに加えて、判決は夫婦同姓の意義や合理性について積極的に言及した。判決によれば、氏(姓)には、「家族の呼称としての意義」があり、その呼称を「一つに定めることには合理性がある」。また、「家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位」であって、全員が「同一の氏(姓)を称することにより家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見いだす考え方も理解できる」。さらに、夫婦同姓であれば、その子も両親と「氏を同じくすることによる利益を享受しやすい」として、夫婦同姓の利点を評価した。 また、夫婦別姓論者の不利益は「氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得る」と指摘した。この最高裁の判断は、通称使用の広がりを踏まえたものであり、大法廷の多数意見は「通称使用が広がることにより、不利益は緩和され得る」とした。
 このように、最高裁は夫婦別姓論者の主張をことごとく退けたうえに、夫婦同姓制の意義や合理性にまで積極的に言及した。また、最高裁によって家族は国や社会の基盤であることが改めて位置づけられた意義も大きい。
 しかし、その後も選択的夫婦別姓を実現しようとする左翼人権主義者やキリスト教左派の動きは、決して消滅していない。彼らの動きの根本には、日本国憲法に依拠して個人主義を推し進め、家族をアトム的な個人の集合に変えるとともに、国民と非国民の区別をなくし、単なる住民の集合に変えようとする思想があるので、執拗に別姓の実現を目指しているのである。
 日本のキリスト教左派の代表的な団体として、キリスト者政治連盟がある。1975年に発足し、活動を続けている。この団体は、結成宣言に「我われは、現実の中でキリスト者として、愛と平和、正義と自由が地上に樹立されん事を祈りつつ、信仰の証しとして自由にして責任ある発言と行動を積極的に行なうべき使命を負わされている」と記している。「平和・人権・教育・戦後補償・天皇制問題など」を「直面する問題」とし、現行憲法には護憲の立場を取っている。「韓国教会や共和国の朝鮮基督教徒連盟とも連携し朝鮮半島の和解と統一のためにも祈りを強めます」と表明している。
 キリスト者政治連盟は、日本キリスト教協議会(NCC)を母体とする。NCCの加盟教会・教団には、日本基督教団、日本聖公会、日本福音ルーテル教会、日本バプテスト連盟、日本バプテスト同盟、在日大韓基督教会があり、これら以外の教派も準加盟団体となっている。

 次回に続く。

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