ほそかわ・かずひこの BLOG

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救国の経済学16~丹羽春喜氏

2011-06-12 08:33:23 | 経済
●共存共栄を否定する変動相場制擁護論

 フリードマンは、国際経済論ではロバート・マンデルのクラウディング・アウト論とマンデル・フレミング効果論などを取り入れている。財政政策の財源調達のために国債の市中消化が行なわれた場合、それによって民間資金が国庫に吸い上げられて金融市場が資金不足状況になり、国内金利の高騰や民間投資の減少が生じる。これを「クラウディング・アウト現象」という。クラウディング・アウト現象が生じると、国内金利の高騰が円高を生じさせ、それが輸出の減少と景気回復の挫折をもたらす。これを「マンデル=フレミング効果」と呼ぶ。マンデル・フレミング効果論は、開放経済で変動相場制の下では、金融政策は有効だが、財政政策は無効であるとする。これらは、ともにケインズ的な財政政策を否定する理論である。
 これに関連するのが、変動為替相場制の問題である。フリードマンは1950年秋ごろから変動為替相場制擁護論を唱えていた。1971年8月15日、アメリカのニクソン大統領は突然、ドルと金の交換停止を発表した。ドルの流出を防ぐためだった。その後、紆余曲折を経て1973年前後にわが国を含む先進各国は相次いで変動相場制(フロート制ともいう)に切り替えた。この変動相場制への移行は、「フリードマンなどによる『フロート制に移行すべし!』というきわめて声高な唱導に、当時の主要諸国の政策担当者たちが従うにいたったという面が多かった」と丹羽氏は言う。
 丹羽氏によると、為替レートには「ハンディキャップ供与作用」がある。「自由貿易が行なわれている世界では、国際通貨市場における市場メカニズムの働きで、各国の生産性水準の絶対的な較差に照応して各国の通貨の為替レートが決まってくる。すなわち、生産性が絶対的に低い国の通貨の対外為替レートは割安に、生産性が絶対的に高い国の通貨の対外為替レートは割高に決まるのである。したがって、生産性が絶対的に低い国の場合であっても、その国の通貨の対外為替レートが割安に決まるので、この割安な為替レートという『ハンディキャップ』が与えられている条件で換算されると、そのような生産性の低い国が産出した粗悪で実質的にはコスト高な商品であっても、世界市場では相対的に安価な商品ということになるので、それらを輸出することが可能になるわけである。すなわち、(略)為替レートという特殊な価格の働きは、いわば、ゴルフのコンペでお馴染みの『ハンディキャップ』のようなものなのである。このような為替レートの『ハンディキャップ供与作用』があるからこそ、絶対的に生産性の高い先進工業国と絶対的に生産性の低い後進発展途上国のあいだであってさえも、貿易が活発に行なわれ、国際分業が成立しうるのである。そして、まさに、このような為替レートの媒介があってこそ、リカード的な『比較優位の原理』に基づく国際分業の利益を、全世界の人類文明が共存共栄の形で享受しうるようになるのである」と丹羽氏は説いている。(「新古典派は市場原理否認:新古典派『反ケインズ主義』は市場原理を尊重していない」)
 丹羽氏によると、フリードマンの変動相場制擁護論は反ケインズ主義的であることによって、この共存共栄の可能性を否定するものとなっている。

 次回に続く。

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