ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

戦略論46~潜水艦、航空母艦、化学兵器、生物兵器

2022-08-21 11:27:21 | 戦略論
●技術の発達と戦争の進歩(続き)

◆潜水艦

 水面下を潜航し行動できる軍艦を潜水艦という。潜水型の艦艇が初めて戦闘に使われたのは、アメリカ独立戦争でイギリス軍艦を攻撃した「タートル」である。1880年代から魚雷、水中航行の推進方式、潜望鏡等の技術の開発が促進された。第1次世界大戦の前に、実戦用の兵器として一応完成し、各国が導入した。その後の技術開発はドイツがリードした。第1次大戦では、ディーゼル機関を採用したUボートは、魚雷攻撃により通商を破壊するなどして多大の戦果を上げた。第2次大戦では、ドイツは国家の総力を挙げて潜水艦の大規模建造を行い、通商破壊戦で合国に多大の被害を与えた。また大戦後期には、半永久的な潜航が可能なシュノーケル装置を実現した。これに対し、連合国軍はレーダー、ソナーの開発や対潜水艦戦術の研究を進め、ドイツの潜水艦を制圧し、大戦を勝利に導いた。
 大戦後、潜水艦は電池の改良等により水中の航続性・高速性が向上した。またミサイルを搭載したものが登場し、艦船や陸上重要地攻撃に威力を増した。1955年に世界最初の原子力潜水艦「ノーチラス」が登場すると、原潜は航空母艦と並んで海戦の主力の地位を占めるに至った。今や核弾頭付き弾道ミサイルを搭載し海中から発射する原潜は、戦略核兵器体系の重要な柱となっている。

◆航空母艦

 航空母艦(空母)は、飛行機を発着艦させ,格納および補給整備などができるように建造された軍艦である。1910年に米国が巡洋艦の甲板上から飛行機を離艦させることに成功した。英国は第1次世界大戦中に、初の本格的空母「アーガス」を完成させた。第2次世界大戦前は、空母は戦艦部隊の支援・補助兵力とみなされていた。だが、日本の空母機動部隊が艦載機で真珠湾攻撃に成功して以来、戦艦に代わって海軍の主役となった。
 大戦後は搭載機がジェット機になり、それに応じてカタパルトの発進装置の開発、甲板の強度増加、発着・指揮等のための電子機器の完備等がされた。1960年、米国は最初の原子力空母「エンタープライズ」を就役させた。
 空母は現在のあらゆる軍艦のなかで最も大型で、弾道ミサイル搭載の原子力潜水艦に次ぐ威力を持つ。空母を保有するかどうかで、その国の戦力の程度が測られる。特に原子力空母を中心とした空母機動部隊は、強力な攻撃力・防御力を併せ持ち、艦船及び陸上の攻撃目標に対して核・非核両攻撃が可能であり、一国の戦力に匹敵するほどである。

◆化学兵器

 化学兵器は、狭義には毒ガスをさす。広義には化学反応を利用する兵器で、発煙剤、焼夷剤等を含む。狭義の化学兵器は、ABC兵器のうち核兵器(A:atomic weapon)、生物兵器(B:biological weapon)に対し、C(chemical weapon)と呼ばれる。これらは大量殺戮兵器として、通常兵器と区別されている。
 第1次世界大戦で、1914年にフランスが催涙物質を使用したのに対し、翌年ドイツが塩素ガスを使用し、大量の死傷者を出した。以後、ホスゲン、青酸、マスタードガス等の毒ガスが開発された。これらの効果の残虐性から、1925年に毒ガスの使用を禁止するジュネーブ議定書が締結された。ただし、使用を禁止しただけで、開発・製造は放置していた。1936年にはドイツで神経ガスのサリンが製造され、54年にはイギリスで同じくVXが合成された。
 1991年湾岸戦争の後、イラクが化学兵器を生産していることが判明し、化学兵器の拡散が新たな脅威になった。翌年ジュネーブ軍縮会議で、化学兵器の開発・製造・取得・貯蔵・使用のすべてを禁止する化学兵器禁止条約が採択され、97年4月に65か国の批准を得て発効した。しかし、2017年にシリアのサダト大統領がサリンを使って住民多数を殺害した疑いがある。また同年、北朝鮮は金正恩の異母兄・金正男の暗殺にVXガスを使った。

◆生物兵器

 生物兵器は、人間・動植物に有害な細菌・ウイルス等を使用して作られる兵器である。使用の方法には、砲弾、爆弾、ミサイルなどに装入、航空機から散布、飲食物に混入、郵便物に付着させて配布等がある。
 第1次世界大戦で毒ガスが実戦に用いられて悲惨な結果をもたらした経験から、1925年にジュネーブ議定書が作成された際、大量殺人兵器として禁止の対象となった。しかし、米国、英国をはじめとする各国は1945年前後から生物兵器の研究を進めた。その後、国連の主導で生物毒素兵器禁止条約が1972年に調印され、73年に発効した。
 2001年アメリカ同時多発テロ事件の直後に炭疽菌を使った事件が起こり、生物兵器によるテロ(バイオテロ)の可能性が指摘された。2019年から世界的に感染が広がった新型コロナウイルスは、共産中国で生物兵器として開発されたものではないかという疑いがある。また、他に生物兵器テロに使われる可能性が高いものとして、ボツリヌス菌、ペスト菌、チフス菌、天然痘等がある。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1
 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『細川一彦著作集(CD)』(細川一彦事務所)

************************************