ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

中国はどういうシナリオで台湾・尖閣を攻めるか4

2021-07-01 10:17:10 | 国際関係
●岩田元陸将、武居元海将、尾上元空将らによるシナリオ(続き)

◆台湾は日本防衛の最前線

 兼原「私が懸念しているのは、日本の西南方面でサイバー攻撃、EMP攻撃(電磁パルス攻撃)などを使って通信網や電力網が無力化され、自衛隊の継戦能力がなくなってしまうことです。また、経済面も心配です。中国が本気で日本と戦うとなったら、海上封鎖をするかも知れない。その場合、エネルギーと食糧と鉱物資源の輸入が途切れます。中国に深く根を張っている日本の製造業のサプライチェーンも対日制裁によって断絶されるでしょう。これに日本は耐えられるのか」
 岩田「台湾は日本防衛の最前線である、という意識を持つ必要があります。台湾は中国にとっては核心中の核心ですが、日本にとっても守るべき第一列島線のすぐ西にある戦略上の要衝です。もし台湾が中国の専制体制に組み込まれてしまったら、台湾から与那国島までは110キロしかありませんから、ロケット・ミサイルを簡単に打ち込める。第一列島線の防衛ラインに穴が空いてしまいます」
 「中台紛争に連接して、日本に潜入した工作員によって与那国島が占拠され、石垣島、宮古島の重要施設も破壊されるという事態は十分にありえます。日本の人工衛星の破壊、サイバー・電磁波攻撃、通信や電力などの重要インフラ施設の破壊、自治体首長の転覆工作、フェイクニュースの伝播などによってこれら先島諸島全体に騒擾・混乱状態を作り出すことは可能です。先島諸島の空港・港湾やレーダー・通信施設等は自衛隊・米軍の作戦において極めて重要ですが、この工作活動により機能が停止してしまう危険性があります。
 中国にしてみれば、米国の来援を阻止するためには、台湾から100~300キロに位置する先島諸島を無力化しておきたいし、占有できればベストです。もちろん、中国が先島諸島に直接武力攻撃を仕掛ければ、直ちに日米同盟を発動させることになり、台湾正面以外にも戦火を広げることになる。こういった二正面作戦は、戦略的には避けるべきものです。従って中国は、非軍事的手段と軍事的手段の併用、すなわち『ハイブリッド作戦』によって先島諸島の自衛隊施設、空港、港湾を無力化する方法を採るものと思います」 
 「もし台湾有事になったときには在住同胞2万人、旅行者2万人、合わせて4万人の日本人を我々は救わなければならない」
 「グレーゾーンの段階で尖閣周辺に武装漁民を送り込むとか、海警の船舶を海上保安庁と対峙させることにより日本政府の関心や機能を台湾正面から削ぐような作戦を当然やってくると思います。また朝鮮半島も連動させてくると思います。アメリカの戦力を分散させるため、中国が北朝鮮に半島の緊張状態を高める行動をとるよう促すことは躊躇しないと見るべきでしょう」

 私見をはさむと、有事とは戦争や紛争など非常の事態が起こることをいう。反対語は平時である。台湾有事とは、共産中国による台湾進攻であり、中台間の戦争・紛争のことである。ただし、超限戦の戦略思想に基づくハイブリッド戦・全領域戦では、戦時と平時、軍事と非軍事、正規と非正規等のあらゆる制約や境界を超越し、あらゆる手段が駆使される。台湾有事についても、平時との区別は画然としたものではない。

◆通常兵力と「核の傘」

 兼原「通常兵力で見れば中国軍の方が、域内の米兵力及び同盟軍の兵力よりも、ずっと大きくなってしまっているということを抑えておく必要がある。通常兵力による大規模奇襲攻撃で、米国の同盟国は、米本土からの米軍来援前に一気に潰されてしまう可能性もあります」
 「米中は、核の傘はどうするのか。今、北東アジアで最も危険なのは台湾有事です。米中は、核の全面戦争は必ず避ける。とすれば、米国の台湾への核の傘だけが、最後の戦争のストッパーになるはずです。しかし、米国は核の傘が台湾に及ぶと言ったことはないし、米台の間で話し合いがなされているのかも疑問です。
 米国は、米中国交正常化以降、台湾防衛のコミットメントを意図的に曖昧にして来ましたが、明確にした方が良い。核の傘も明確にかけた方が良い。中国の軍事的台頭がこれほど急激になってくると、曖昧戦略はかえって中国の猜疑心を強め、冒険主義を助長する危険がある。透明性のある抑止力の方が効果的だし、米中の間に最低限の信頼も生まれます」

 次回に続く。

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