ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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トランプ大統領のパリ協定離脱に反発の動きが

2017-06-06 09:51:54 | 地球環境
 トランプ米大統領のパリ協定離脱表明に対して、米国内で協定離脱反対の運動が起こることが予想されたが、即刻、州レベル、市レベルの動きが出ている。

 大統領の発表当日、ワシントン州、ニューヨーク州、カリフォルニア州の知事が、パリ協定の目標を達成するために United States Climate Alliance を結成するという声明を発表。また温暖化対策を推進する米国各地の市長らで構成される Mayors National Climate Action Agenda(MNCAA) に加わる市長が急増しているとのこと。MNCAAは、トランプ氏の離脱表明を受けて「各市が(パリ協定の)目標を達成するよう努力し、一丸となって21世紀のクリーンエネルギー経済を作っていく」「大統領が同盟国との約束を破るのであれば、われわれが世界各地との関係を強化し、地球を壊滅的な環境問題から救う」などとした声明を発表した。ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、ヒューストン、フィラデルフィアなどの主要都市の市長も参加している。
http://www.climate-mayors.org/

 トランプ大統領は、離脱表明演説で「私はピッツバーグの市民を代表するために選ばれた。パリのためではない」と述べた。ラストベルト地帯の有権者の支持を得て、という意味で、気の利いたことを言ったつもりだったのだろうが、そのピッツバーグの市長もMNCAAに参加。「市はパリ協定を支持し、全面的に履行していく」とする行政命令を発しました。これは、トランプ氏への痛烈な反撃である。

 本件について、米国事情に詳しい東洋英和女学院大学客員教授の中岡望氏は、次のように述べている。
  「トランプ大統領の演説は、繰り返しが多く、極めて歯切れが悪いものであったが、それ以上の問題は、離脱の根拠が極めて希薄なことだ。トランプ大統領は『パリ協定で約束した温室効果ガス削減目標を実施に移せば、米国は大きな犠牲を強いられる』『2025年までに270万人の雇用が失われ、2040年までにGDP(国内総生産)3兆ドル、650万人の雇用が失われる』と語った。こうした数字は National Economic Research Associates(NERA) という民間のマーケティング会社の調査によるものだが、米国政府がパリ協定離脱を正当化する根拠にするには、極めて信頼性の低いものである。
 さらに大統領演説の際にホワイトハウスは、温室効果ガスの削減目標が達成されたとしても2100年までに温度を0.2%しか低下させることができないというMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究 ”How Much of a Difference Will the Paris Agreement Make?" に言及し、『パリ協定によって気温を下げる効果は無視できる程度のものだ』と説明している。だが、これに対してMITの研究者は、トランプ大統領は研究結果を間違って引用しているとし、『私たちはパリ協定からの離脱を支持できない。研究結果では、何の削減努力もしなければ温度は5度以上上昇することになる』と批判している。それ以外にも事実の誤認と歪曲は数多くあり、パリ協定離脱という重要な決定を行うにしては、あまりにもお粗末な論拠である」と。
http://toyokeizai.net/articles/-/174746

 米国内でのパリ協定離脱反対運動は今後、本格的に高まり、トランプ政権を揺るがすものとなっていくだろう。

 地球環境の問題は、政治的、経済的な利益で判断するのではなく、科学的な根拠に基づいて議論しなければならない。この点、温暖化の事実、自然的原因と人工的原因、温暖化対策の効果等について科学者の間でもいまだ見解が分かれており、この機会に再度徹底的に議論してほしいものである。