3.アイヌの現状
(1) アイヌの存在と人口
昭和30年(1965年)の時点で、知里真志保は、「民族としてのアイヌは既に滅びたといってよく、厳密にいうならば、彼らは、もはやアイヌではなく、せいぜいアイヌ系日本人とでも称すべきものである」と書いた。知里は、この年、次のようにも述べている。
「私達いわゆるアイヌといわれている者もやはり全部日本人なのです。日本語を使い、日本人の生活をし、似教(ママ)を奉じているのです。ですからいわゆるアイヌ系日本人なのです。所がなぜアイヌのみが日本人の中で異民族扱いを受けるのでしょう。これは去年行なわれた熊まつりに見られるように今(ママ)だに沢山の日本人がアイヌを見世物根性で見、特異なものとして見たがるところからきているのです。・・・また多くの人々は民族の文化の保存といいますが、現実にはアイヌ文化は明治時代以前に滅びてしまって、その後はいわゆるアイヌ系日本人によってその文化が多少とも保たれてきたわけです」(北海道大学新聞昭和30年(1955年)1月31日付)(註 文中の「似教」は仏教の誤植か)
昭和30年(1965年)当時でさえ、アイヌは知里が書いたような状態になっていた。されにそれから今日まで50年以上たっている。現在「アイヌ」を自称している人達の中に、アイヌ語を話す純粋な「アイヌ」は一人もいない。また、アイヌは、DNA検査では認定できず、長い間に日本人と混血してきているので日本人と区別できない状態と見られる。
国勢調査には、アイヌ人の項目はなく、国家機関での実態調査は行われていないに等しい。そのため、アイヌ人の正確な数は不明である。
平成18年(2006年)の北海道庁の調査によると、アイヌの人口は23,782人だった。相手がアイヌであることを否定している場合は調査の対象としていないという。ただし、アイヌだと答えた人たちが本当にアイヌなのかどうかは、検証されていない。後で詳しく述べるが、その点に大きな問題がある。
先の調査の11年後に行われた平成29年(2017年)の調査では、道内のアイヌの人口は約1万3千人だった。10年ちょっとの間に、54.7%ほどに減少している。5割近い減り方である。この減少には、調査に協力している北海道アイヌ協会の会員数が減少したこと、個人情報の保護への関心の高まりから調査に協力する人が減っていることなどが、理由にあるという。しかし、その点を考慮したとしても、減り方が非常に大きい。和人との混血や同化が進み、自称アイヌまたは自分はアイヌだという意識を持つ人たちが急速に減っているのだろう。
一方では、奇妙な現象が起こっている。東京では、アイヌが激増しているのである。昭和63年(1988年)の調査では、東京在住のアイヌの人口は、2,700人と推計された。ところが、平成31年(2019年)には、東京に約7万5千人のアイヌがいることになっているという。30年ほどの間に、27.8倍に急増したことになる。以前は北海道在住のアイヌの10分の1程度だったのが、今や5倍以上に増えたことになる。これは、後で述べるように、アイヌ協会が認めればアイヌと認定されるから、実際にはアイヌではない者がアイヌということになっているのだろう。
(2)分布
東京のアイヌの人口には大きな疑問符が付くので、それを除くと、アイヌが主に分布するのは、北海道である。北海道には、アイヌ居留地は存在しない。アイヌ系日本人は、日本人として、日本の社会に他の日本人とともに居住して生活している。
アイヌ系日本人は、支庁別では胆振、日高支庁に多い。日高地方の平取町二風谷には、多数が居住する。また、道南で苫小牧に近い白老、道北の阿寒には、観光名所としてコタンと呼ばれる集落が存在する。
4.アイヌ系団体に関する問題点
(1) アイヌの認定
●認定者
アイヌと認定するのは、国ではない。公益社団法人北海道アイヌ協会が認定している。アイヌ協会の理事長が承認すれば、アイヌと認められ、補助金等を受けられる。これがアイヌ問題で最大の問題である。
アイヌ問題研究家の的場光昭によると、平成20年(2008年)に的場が直接、北海道ウタリ協会(現・北海道アイヌ協会)に問い合わせたところ、同協会は次のように回答したという。
「アイヌの血を引くと確認された者、およびその家族・配偶者・子孫がアイヌである。また養子縁組などでアイヌの家族になった者も含まれるが、これは本人一代限りにおいてアイヌと認め同協会への入会が認められる」と。
「アイヌの血」を引くかどうかについては、家系図、戸籍、除籍謄本等を判断資料としているらしい。だが、これらの資料は、科学的に血の継承を証明するものではなく、制度上の家族関係を表すものに過ぎない。問題は、アイヌ協会は、「アイヌの血を引くと確認された者」のほか、その家族・配偶者・子孫、養子縁組による者にまでアイヌと認定していることである。これでは、同居者や連れ子もアイヌと認定され得る。
アイヌ系日本人である砂澤陣は、次のように述べている。「そもそも、現在アイヌと自称している人達の中に、自然と共生し、アイヌ語を話す純粋なアイヌは一人もいない。それどころか、協会が認めれば誰でもアイヌというのが現状である」と。
実際にはアイヌの血を引いていなくともアイヌと認定されれば、異常に手厚い社会保障の特権を受けることができる。先に東京在住のアイヌが激増していると書いたが、アイヌ協会が認定すれば、誰でもアイヌになれるから、補助金目当ての偽(にせ)アイヌが増えていると考えられる。
次回に続く。
************* 著書のご案内 *************
細川一彦著『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1
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(1) アイヌの存在と人口
昭和30年(1965年)の時点で、知里真志保は、「民族としてのアイヌは既に滅びたといってよく、厳密にいうならば、彼らは、もはやアイヌではなく、せいぜいアイヌ系日本人とでも称すべきものである」と書いた。知里は、この年、次のようにも述べている。
「私達いわゆるアイヌといわれている者もやはり全部日本人なのです。日本語を使い、日本人の生活をし、似教(ママ)を奉じているのです。ですからいわゆるアイヌ系日本人なのです。所がなぜアイヌのみが日本人の中で異民族扱いを受けるのでしょう。これは去年行なわれた熊まつりに見られるように今(ママ)だに沢山の日本人がアイヌを見世物根性で見、特異なものとして見たがるところからきているのです。・・・また多くの人々は民族の文化の保存といいますが、現実にはアイヌ文化は明治時代以前に滅びてしまって、その後はいわゆるアイヌ系日本人によってその文化が多少とも保たれてきたわけです」(北海道大学新聞昭和30年(1955年)1月31日付)(註 文中の「似教」は仏教の誤植か)
昭和30年(1965年)当時でさえ、アイヌは知里が書いたような状態になっていた。されにそれから今日まで50年以上たっている。現在「アイヌ」を自称している人達の中に、アイヌ語を話す純粋な「アイヌ」は一人もいない。また、アイヌは、DNA検査では認定できず、長い間に日本人と混血してきているので日本人と区別できない状態と見られる。
国勢調査には、アイヌ人の項目はなく、国家機関での実態調査は行われていないに等しい。そのため、アイヌ人の正確な数は不明である。
平成18年(2006年)の北海道庁の調査によると、アイヌの人口は23,782人だった。相手がアイヌであることを否定している場合は調査の対象としていないという。ただし、アイヌだと答えた人たちが本当にアイヌなのかどうかは、検証されていない。後で詳しく述べるが、その点に大きな問題がある。
先の調査の11年後に行われた平成29年(2017年)の調査では、道内のアイヌの人口は約1万3千人だった。10年ちょっとの間に、54.7%ほどに減少している。5割近い減り方である。この減少には、調査に協力している北海道アイヌ協会の会員数が減少したこと、個人情報の保護への関心の高まりから調査に協力する人が減っていることなどが、理由にあるという。しかし、その点を考慮したとしても、減り方が非常に大きい。和人との混血や同化が進み、自称アイヌまたは自分はアイヌだという意識を持つ人たちが急速に減っているのだろう。
一方では、奇妙な現象が起こっている。東京では、アイヌが激増しているのである。昭和63年(1988年)の調査では、東京在住のアイヌの人口は、2,700人と推計された。ところが、平成31年(2019年)には、東京に約7万5千人のアイヌがいることになっているという。30年ほどの間に、27.8倍に急増したことになる。以前は北海道在住のアイヌの10分の1程度だったのが、今や5倍以上に増えたことになる。これは、後で述べるように、アイヌ協会が認めればアイヌと認定されるから、実際にはアイヌではない者がアイヌということになっているのだろう。
(2)分布
東京のアイヌの人口には大きな疑問符が付くので、それを除くと、アイヌが主に分布するのは、北海道である。北海道には、アイヌ居留地は存在しない。アイヌ系日本人は、日本人として、日本の社会に他の日本人とともに居住して生活している。
アイヌ系日本人は、支庁別では胆振、日高支庁に多い。日高地方の平取町二風谷には、多数が居住する。また、道南で苫小牧に近い白老、道北の阿寒には、観光名所としてコタンと呼ばれる集落が存在する。
4.アイヌ系団体に関する問題点
(1) アイヌの認定
●認定者
アイヌと認定するのは、国ではない。公益社団法人北海道アイヌ協会が認定している。アイヌ協会の理事長が承認すれば、アイヌと認められ、補助金等を受けられる。これがアイヌ問題で最大の問題である。
アイヌ問題研究家の的場光昭によると、平成20年(2008年)に的場が直接、北海道ウタリ協会(現・北海道アイヌ協会)に問い合わせたところ、同協会は次のように回答したという。
「アイヌの血を引くと確認された者、およびその家族・配偶者・子孫がアイヌである。また養子縁組などでアイヌの家族になった者も含まれるが、これは本人一代限りにおいてアイヌと認め同協会への入会が認められる」と。
「アイヌの血」を引くかどうかについては、家系図、戸籍、除籍謄本等を判断資料としているらしい。だが、これらの資料は、科学的に血の継承を証明するものではなく、制度上の家族関係を表すものに過ぎない。問題は、アイヌ協会は、「アイヌの血を引くと確認された者」のほか、その家族・配偶者・子孫、養子縁組による者にまでアイヌと認定していることである。これでは、同居者や連れ子もアイヌと認定され得る。
アイヌ系日本人である砂澤陣は、次のように述べている。「そもそも、現在アイヌと自称している人達の中に、自然と共生し、アイヌ語を話す純粋なアイヌは一人もいない。それどころか、協会が認めれば誰でもアイヌというのが現状である」と。
実際にはアイヌの血を引いていなくともアイヌと認定されれば、異常に手厚い社会保障の特権を受けることができる。先に東京在住のアイヌが激増していると書いたが、アイヌ協会が認定すれば、誰でもアイヌになれるから、補助金目当ての偽(にせ)アイヌが増えていると考えられる。
次回に続く。
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細川一彦著『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1
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